リーマン灰が生み出す錬金術、ウォール街規制阻止思いのまま

(8段落目以降に学識経験者のコメントなどを追加して更新しま す)

【記者:Christine Harper】

12月28日(ブルームバーグ):ウォール街(米金融街)の最 大手の金融機関は2年前の世界的な金融危機とリセッションの引 き金となる過ちを犯したが、政治家や監督当局の反応に対抗しなけ ればならなくなると、今度ははるかに機敏に行動した。

金融システムをより安全なものにすると約束していた米政府 は金融業界からの数多くの抵抗の前に屈した。議会でも、預金業務 とリスクの高いトレーディング業務を分離する改革ばかりか、金融 機関の規模の制限およびデリバティブ(金融派生商品)の禁止が見 送られた。世界の金融監督当局が合意した銀行の自己資本・流動性 規制も景気回復への配慮を優先し、導入が何年も先送りされた。

シティグループのジョン・リード元共同最高経営責任者(CE O、71)は、必要な改革のうち、法制化されたのは全体のわずか 25%にすぎないと見積もっている。リード氏は「その判断の誤り が問題の中心だった人々の主張に、われわれは引き続き耳を傾けて いる。銀行の経営上の過ちが米経済を失墜させたと言えるのだから、 がくぜんとさせられる」と話す。

ブルームバーグのデータによれば、バンク・オブ・アメリカ(B OA)とJPモルガン・チェース、シティ、ゴールドマン・サック ス・グループ、モルガン・スタンレーを合わせた投資銀行・トレー ディング部門の過去2年の収入は過去最高に上った。

成功の鍵

一方、ゴールドマンが2007年に投資家を欺いたとして米証券 取引委員会(SEC)が起こした民事訴訟で、同社は7月に5億 5000万ドル(約454億円)を支払うことで和解した。ロイド・ブ ランクファインCEO(56)を初めとする同社の経営幹部らは和 解の半年後、まさにその07年の賞与の繰り延べ分として、1億ド ル(約83億円)余りを受け取ることになっている。

ウォール街が雇う大勢のロビイストとかねてからの政治献金 だけが成功の鍵ではないと議員や学識経験者、業界首脳は指摘する。 バンカーが話の展開を都合良く操作し、改革派を自称する人々の考 えを実行不可能だとか、危険とかいった理由で退ける上で、金融シ ステムの複雑さがバンカー側に有利に働いた。政府と銀行のオフィ スとの間の「回転ドア」も、ウォール街にとって良いことが実体経 済にとっても好ましいと思い込ませるのに役立った。

ロビイストの言いなり

今年で引退するバイロン・ドーガン上院議員(民主、ノースダ コタ州)は「巨大な金融業界は、自分たちが新たな商品や手法を用 いて経済に価値をもたらすと議会や監督当局を中心に多くの人々 に信じ込ませてきた」と発言。「強硬に見えることを何かやろうと すれば、大衆迎合主義の急先鋒と呼ばれるのがおちだった」と振り 返る。

テネシー大学のアンソニー・ナウネス教授(政治学)は、金 融業界が議会や政府で経験のある人物を採用する術にたけており、 この結果、取るべき最善の戦術を判断する上で有利になっていると 説明した。シティは今月、ピーター・オルザグ前行政管理予算局(O MB)局長を投資銀行部門 副会長に起用すると発表。ゴールドマ ンも元ニューヨーク連銀のテオ・リュブケ氏を採用した。

ナウネス氏によれば、議員らは複雑で技術的または経済関連の 問題について、ロビー活動の影響を受けやすいことが調査で分かっ ている。これは銀行にとって好都合だ。同氏は「問題が技術的かつ 複雑であればあるほど、情報量での銀行側の優位は大きくなる」と 語った。

金融システムは優先されず

シティのリード元共同CEOは、議員らが金融業界の関係者の 主張をそれほどまでに信用する理由が理解できないと言う。金融シ ステムの安全性をめぐるいかなる懸念よりも株主の利益を優先す るのが、彼らの仕事だからだ。

リード氏は、米国の政治家が「株主こそが守るべき人々だと考 えていることは驚きだ。守るべき相手は、銀行システム全体とそれ に頼る無数の企業だと私には思えるのだが」と述べている。

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