若さに冷たいIPO事情、資金流れず企業も高齢化-日本の縮図の声も

国内の新興市場で、新規株式公開 (IPO)による1社当たりの資金調達額が激減している。2010年の IPO案件数は前年と比べてやや増えたにもかかわらず、資金調達額の 総額は減り、1社当たりの金額は東証マザーズ市場が創設された1999 年以来で最低となった。IPOした企業の社長の平均年齢も上昇してお り、若い成長企業に資金が流れにくい構図が見える。

ブルームバーグ・データによると、10年に新興市場にIPOした 企業は16社と、昨年の13社から増えたが、ITバブル全盛だった 2000年の157社の1割にとどまる。1社当たりの資金調達額は昨年の 26億5508万円から19億9890万円に減少、00年の50億2100万円と比 べれば4割程度の水準だ。

IPO動向に詳しい金融情報会社の東京IPOの西堀敬編集長は、 「日本の新興市場は、ベンチャー企業にニューマネーを供給するという 機能をもはや果たしていない。爆発力のある企業は見当たらず、日本経 済の縮図を見ているようだ」と懸念を示した。

株式相場の長期低迷で、資金調達の魅力が低下している。IPO時 の発行価格となる株式公開価格は、既に上場している類似企業の株価を 参考にするため、相場が低迷すれば資金調達額の縮小につながる。大手 ベンチャーキャピタルのジャフコの山田裕介常務取締役は、「たとえI POをしたとしても、公開価格すら維持出来ない市場環境のため、IP Oをひとまず見送る企業は多い」と話す。

ことしIPOした16社のうち、初値が公開価格を上回った企業は 10社、24日終値が公開価格を上回っているのは6社にとどまり、相場 環境は厳しい。いわゆる「初値天井」が多くなり、IPO後のファイナ ンス実施も難しいのが現状だ。「ベンチャーキャピタルにとってIPO は重要なイグジットであるため、死活問題だ。市場にニューマネーが入 っておらず、流動性は低い」とジャフコの山田氏は漏らす。

老いる企業、アジアとの温度差顕著

一方、IPO企業の社長の平均年齢は上昇している。東京IPOの データによると、00年の51.5歳から10年は52.7歳と、過去2000年 以降で初めて52歳台に乗せた。00年の最年少はサイバーエージェント の藤田晋氏、旧クレイフィッシュの松島庸氏の26歳だったが、10年は アニコムホールディングスの小森伸昭氏の40歳だ。

東京IPOの西堀氏は、「成長企業より成熟企業が多くなった。資 金調達額が減少しているにもかかわらず、日本版SOX法、四半期開示 制度などで上場維持コストが高くなっており、何のためにIPOしたの か分からない状況になっているのが一因」と指摘している。

ライブドア・ショックが起きた06年以来、代表指数であるジャス ダック指数は年間ベースで3年連続下落、昨年はやや小幅に反発し、10 年は2年連続で上昇する見通しだ。痛手を受けた個人投資家の心理は改 善し、相場環境は底打ちを見せ始めている。しかし、ITバブル最盛の 10年前には気にも留めなかったアジア市場の現在の活況ぶりと比べれ ば、日本国内との温度差は顕著だ。

香港証券取引所にはことし96社、韓国証券取引所には101社がI POした。IPO支援を手掛けるIPOソリューションの小野隆弘社長 は、「日本のIPO市場は市場としての機能を果たしていない。これか らは、MBO(経営陣による企業買収)してプライベートカンパニー化 し、アジア市場にIPOした方が良いだろう」と話す。

一方、ジャフコの山田氏は、「パラダイムチェンジが起きているよ うだ。特にIT関連のアジア企業の勢いが良い」と指摘。ジャフコはこ れまで、日本、米国、アジアと地域分散して投資活動を行ってきた。投 資回収先は日本株市場が他地域より多かったが、11年3月期は過去初 めて海外が国内を上回る見通しだという。

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