【11年債券】政策転換見込めず長期金利1%前半、先進国景気回復鈍い

2011年の債券市場では長期金利は 1%台前半を中心に低位で推移すると予想されている。物価の上昇圧 力が鈍い中で日本銀行による現在の実質的なゼロ金利政策が年内は継 続する可能性が高いことが背景。また、米国をはじめ先進国の景気回 復が加速するとの見方は少なく、短中期ゾーンを中心に投資家の運用 需要は根強いとみられている。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラ テジストは、物価安定が展望できるまで実質ゼロ金利政策を維持する との日銀が表明したことに対して市場は絶大な安心感を寄せていると 指摘。「日米の景気や物価見通しが慎重で需給環境の悪化も考えにくい となれば、長期金利が大きく上がる要素は見いだせない」とも話す。

長期金利の指標となる新発10年国債利回りについて、ブルームバ ーグが前週に東京在住の債券ストラテジストら16人に聞いた来年の 予想レンジは全体で0.8-1.7%となった。このうち、平均では下限が

0.93%程度、上限は1.52%程度と、おおむね1%台前半から半ばでの 推移が見込まれている。また、11年12月末時点では0.9%から1.7% に分布しており、中央値は1.325%となった。

今年の10年債利回りは4月に1.405%まで上昇して年間の最高を 付けた。その後は右肩下がりに水準を切り下げて、8月4日には03 年8月以来の1%割れを記録。10月6、7日には7年ぶり低水準の

0.82%を付けたが、その後の2カ月間はじり高に推移して一時は

1.295%に上昇。21日の終値は1.16%だった。

一方、ブルームバーグの債券利回りに関する予測調査によると、 アナリスト17人に聞いた11年末の長期金利は平均が1.36%、中央値 は1.50%となった。

金融政策転換は展望できず

米国で景気回復期待や財政悪化懸念を背景に金利水準が切り上が ったことが、国内債市場でも最近の金利上振れを促したものの、日銀 の金融政策から上昇余地は限界的とみられている。岡三証券の坂東明 継シニアエコノミストは、「日銀の金融緩和策は継続し、中短期債は安 定するので、長期金利が大幅に上昇するとは思えない。景気が回復し ても金利上昇幅は限定的ではないか」と言う。

日銀が11月に決めた包括的な金融緩和策では政策金利を0-

0.1%とするとともに、物価安定が展望できるまで実質ゼロ金利政策を 継続すると表明。日銀は生鮮食品を除く消費者物価(コアCPI)が 11年度に前年度比0.1%上昇、12年度は同0.6%の上昇を見込む。

包括緩和の効果でコアCPIが上昇幅を拡大していけば、金融緩 和政策の転換時期が早まる。しかし、コアCPIは11年8月実施の5 年に1度の基準年改訂で下方修正が見込まれている。

06年8月にはコアCPIが基準改定後に下振れたことをきっか けに、中期ゾーン主導で金利低下が進展する場面があった。みずほ証 券の三浦哲也チーフマーケットアナリストは、コアCPIは来年4月 に高校授業料無償化の影響がはく落するが、いずれ基準年改訂でデフ レ色が強まると言い、「4-6月期に市場の時間軸が揺さぶられて金利 が上昇する場面では債券買いで対応するべき」だと推奨している。

米景気に不透明感強い

バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジス トは、「年前半は景気回復期待感が強まる見通しだが、年後半は循環的 な回復の持続性に関心が移り、金利は落ち着く」とみている。

一方、米国はじめ先進国の景気には根強い不透明感がある。東海 東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、現在の米国景気に 対する楽観論は行き過ぎであり、今後は住宅と金融部門の調整が足か せになると言い、「米10年債利回りは一時的に3.5%を上振れること があっても、その後は2.5-3.5%のレンジを形成する」と予想する。

JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストも、「米不 動産市場、中国の金融引き締め後の景気の行方、欧州が債務問題から 抜け出せないことなどが景気の足を引っ張り支援材料となりそう」だ とみている。

実際、米国の雇用情勢は引き続き厳しいとみられており、家計の 過剰債務問題も根強く残っている。市場では、景気の自律回復期待が はく落する局面では、投資資金が株式などのリスク資産から債券に還 流すると予想されている。この場合、米国債市場で利回り曲線のフラ ット(平たん)化を伴って10年債利回りに低下圧力がかかり、日本の 10年債利回りは1%割れを探る展開も想定されている。

ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジストは、各国の成長率 について米国が3%弱、欧州は1%台前半で、日本はゼロ%台だとみ ており、緩やかな景気回復とディスインフレが続くと予想。その上で、 「10年債利回りは今年とほぼ同じレンジで推移する」とみている。

一方、債券市場の好需給は維持される見通し。直近2カ月に10 年債利回りは0.8%台前半から1.3%付近まで約50ベーシスポイント (bp)も上昇した。米国の金利上昇を手掛かりに投資家がリスク回避 のために残高圧縮に動いたとみられるが、銀行による債券投資の原資 が潤沢な状況は続くとみられている。

銀行は中期ゾーンに投資

HSBC証券の白石誠司チーフエコノミストは、貸出金利の低下 に加えて融資も伸びない状況のもと、銀行は貸し出しによる受け取り 収益が増える環境にならないと言い、「市場が落ち着きを取り戻しさえ すれば、銀行は中期ゾーンを手始めに債券投資を再開する」と話した。

日銀の貸出・資金吸収動向等によると、国内銀行の貸出残高は11 月まで12カ月連続で前年水準を下回り、一方で都銀と地銀、第二地銀 の実質預金と譲渡性預金(CD)残高は増加傾向が続いている。

来年度国債発行計画で増発規模が大幅に膨らまない見通しである ことも、債券需給悪化への警戒感を緩和させそう。財務省は16日、11 年度予算編成方針を公表した。景気回復とデフレ脱却への道筋を確か なものにするとした上で、新規国債発行額が今年度当初予算を上回ら ないことや、国債費を除く歳出は約71兆円を超えないことなどを示し た。

二番底懸念後退で金利低下限定的

一方、米国では財政支出拡大もあって景気の二番底懸念が後退し ており、日米両国とも金利低下余地は限定的との指摘も多い。日興コ ーディアル証券の野村真司チーフ債券ストラテジストは、米国は3% 前後の成長を見込むほか新興国経済も堅調となれば年後半にかけて景 気回復期待が高まると言い、財政赤字拡大のリスクプレミアム(金利 上乗せ)も勘案すると、10年債利回りが1%台半ばの水準を上回ると 予想する。

実際、来年の予想レンジの下限は0.8%と、今年最低の0.82%か ら大きく下回る展開は見込まれていない。一方、上限は今年最高の

1.405%を上回るとの見方もある。RBS証券の福永顕人チーフ債券ス トラテジストは、景気は悪くなく、「歴史的な低金利から離脱し、利回 り曲線は傾斜化を見込む」として、長期金利の上限を1.7%と予想し ている。

大和証券キャピタル・マーケッツ尾野功一シニアストラテジスト は、「国内景気は来年3月末まで踊り場だが、4月以降は脱却する見通 し。デフレ圧力は残存するものの、徐々に弱まるとみており、年末に かけて金利は上昇傾向を見込む」と言う。

米国ではブッシュ前政権が導入した所得税減税延長を柱とする 8580億ドル(約72兆円)規模の景気刺激策への期待が高まっている。 最近発表された指標が強めであることも相まって、前週には米国株相 場が08年9月のリーマン・ブラザーズ破たん以降の高値を更新する一 方、米10年債利回りは7カ月ぶり高水準まで上振れる場面もあった。

みずほインベスターズ証券の井上明彦チーフストラテジストは、 世界的に景気が夏以降も持ち直しが続くようだと金利は次第に下がり にくくなるとみており、「今年の金利低下が行き過ぎだったとの反省も あって、10年債の1%が節目として意識されそう」だと言う。

量的緩和期の値幅は1.2-1.6%

長期金利は2000年以降、おおむね1.2-2.0%のレンジを形成し てきた。日銀が量的緩和政策を実施した01年3月から06年3月は

0.43%-1.94%での推移となり、一時的な下振れや上振れ期を除くと

1.2-1.6%で滞留しており、この間の平均値は1.30%だった。

BNPパリバ証券の島本幸治チーフストラテジストは、景況感の 改善に伴って市場が景気回復を織り込む展開となれば、10年債利回り は過去の取引レンジに戻るとみている。

また、04年以降の7年間では、長期金利の年間の値幅は59.2bp となり、今年を除くと年末の水準が年始を上回ったのが4回、下回っ たのが2回となっている。

【新発10年債利回りの見通し】                予想レンジ 11年末
RBS証券の福永顕人氏                       1.0-1.7% 1.55%
HSBC証券の白石誠司氏                     0.9-1.4%  1.0%
岡三証券の坂東明継氏                         1.0-1.6%  1.5%
クレディ・アグリコル証券の加藤進氏           0.9-1.5%  1.35%
クレディ・スイス証券の河野研郎氏             0.8-1.5%  1.3%
JPモルガン証券の山脇貴史氏                 0.9-1.5% 1.35%
大和証券キャピタル・マーケッツの尾野功一氏   0.9-1.5%  1.4%
ドイツ証券の山下周氏                         0.8-1.4%  1.2%
東海東京証券の佐野一彦氏                     0.9-1.5% 1.25%
日興コーディアル証券の野村真司氏             1.0-1.7%  1.7%
バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎氏   0.8-1.4%  0.9%
BNPパリバ証券の島本幸治氏                 1.1-1.6%  1.6%
みずほ証券の三浦哲也氏                       0.9-1.5%  1.3%
みずほインベスターズ証券の井上明彦氏         1.0-1.6%  1.4%
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純氏 1.0-1.4%  1.3%
メリルリンチ日本証券の藤田昇悟氏             1.0-1.65% 1.2%
                                              (中央値1.325%)

--取材協力:池田祐美 Editors:Hidenori Yamanaka,Joji Mochida

参考画面: 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 赤間信行 Nobuyuki Akama +81-3-3201-8842 akam@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保義人 Yoshito Okubo +81-3-3201-3651 yokubo1@bloomberg.net

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