【クレジット市場】邦銀がリスク回避で国債売却、カネ余りも運用難に

国債市場で金利上昇(価格下落) リスクを回避しようと邦銀による売却の動きが広がっている。大手銀行 などは10月に保有残高を10カ月ぶりに減らしたが、金利には低下余地 が少なく不透明感も強い。企業向け融資が伸び悩み、余剰資金で国債投 資を増やしてきた邦銀は、運用難に直面することになる。

日銀によると、10月の邦銀の国債保有残高は合計142兆2338億 円と昨年12月以来の減少で前月比1兆89億円(0.7%)減った。9月 は143兆2427億円と史上最高を記録していた。全国銀行協会の奥正之 会長は邦銀が国債を売却したとの認識を示し、ドイツ証券の山田能伸ア ナリストは「金利上昇局面での利益確定のための売り」と分析した。

日本の長期金利は10月上旬を境に急激な上昇に転じた。直近では 日銀の白川方明総裁が表現するように「米国金利に連動」して上下する 不安定な動きも示している。いずれにしても1990年代のバブル崩壊以 降の長引くデフレで過去最低水準にある金利の低下余地は限られ、その 動向が収益に直結する銀行は難しい局面を迎えつつある。

MFグローバルFXA証券の山中威人シニアアナリストは「売却益 確保のため、11月はさらに保有残高を減らした可能性がある」と指摘す る。ドイツ証の山田氏は「金利上昇が続けば、国債の減少傾向は続くだ ろう」とし、過去最高水準の保有で膨らんだ金利上昇(価格下落)リス クを回避する売却も継続する可能性があるとみる。

貸出低迷で「カネ余り」

邦銀による国債保有増加の背景には、国内景気の低迷で企業向け融 資が伸び悩む半面での預金増加がある。日銀の11月の貸出・資金吸収 動向(速報)によると国内銀行の月中平均貸出残高は前年同月比2.1% 減の391兆9190億円と08年5月以来30カ月ぶりの低水準に落ち込 んでいる。

一方、同じ11月の預金残高は同2.7%増の543兆534億円。過去10 年で140兆円も増え、4月以降は540兆円台で推移している。この結果、 預金が貸出残高を上回って余った金額は151兆1344億円と1999年に預金 超過に転じて以来、12年近くも拡大を続けている。

こうして余った資金の多くが国債市場に流れ込んだ。例えば、約10 年前の2000年3月末時点での国債保有残高は、邦銀全体で46兆2300 億円だったが、今では三菱UFJフィナンシャル・グループ1社だけで 43兆円超に膨らんでいる。

純利益の3割超稼ぐ

邦銀大手6行が11月中下旬に発表した2010年4-9月期の決算は連 結純利益合計が前年同期比2.7倍の1兆2839億円に拡大した。このうち 国債等債券損益は同4.5倍の計5052億円と好決算の最大要因となった。 純利益の3割以上を国債売買益などで稼ぎ出した計算だ。

大手銀の上期決算に先立つ9月に日銀はリポートで邦銀の国債投資 の増大について、「金利リスクが一段と蓄積される方向にある」とし、 多額に抱えた国債が大きく下落すれば、銀行経営に影響を与える可能性 があるなどと警告していた。

長期金利の指標である国債10年物の指標債は16日、一時1.295% と7カ月ぶりの高水準に上昇。やや値を戻した現在も21日終値は9月末 より23ベーシスポイント(bp)高い1.160%となっている。これに 対して国債価格の指標である長期国債先物の21日終値は、9月末比3円 80銭(2.7%)安の139円62銭まで下落している。

「神風」は期待薄

全銀協の奥会長(三井住友銀行頭取)は21日の会見で、長期金利 は景気停滞もあり「大きく跳ね上がる要素は少ない」が、銀行の下期決 算は、国債売却などで「上期のような収益が出ることはないだろう」と の見通しを示した。「当然金利が上がれば含み損が増える」として米金 利の影響を受けて上下する最近の動きに神経をとがらせている。

UBS証券の大槻奈那シニアアナリストは、国債価格の下落に伴い 「益出しは難しくなり、上期のような『神風』は期待できない」と指摘 する。ただ、各行は「ある程度の下落は織り込んでいる」ほか、「9月 末時点での含み益は大きく、大手行が減損処理を強いられる可能性はか なり低い」と分析している。

ドイツ証券の山田氏は、邦銀による国債での資金運用について「売 却益減少により、戦略に何らかの変化があるかもしれない」とみる。具 体的にはトレーディング目的だけでなく、満期保有をより重視した運用 に転じる可能性などを指摘した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE