日銀にとって鬼門は2回訪れる-今年最後の会合は無風も来年は波高し

今年最後となった21日の金融政 策決定会合を現状維持で終えた日本銀行。指数連動型上場投資信託( ETF)や不動産投資信託(J-REIT)といったリスク資産の購 入に踏み切るなど、波乱に満ちた1年は静かに幕を下ろしそうだが、 来年を見通すと決して楽観できない状況が続きそうだ。

日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト は「2011年、日銀にとっての鬼門は2回訪れる」と予想する。最初は 年度末を控えた2、3月だ。実際、年度末は日銀が動いたケースは多 い。古くは1999年2月のゼロ金利政策、2001年3月の量的緩和政策。 ここ数年でも昨年3月に長期国債の買い入れ額を月1.4兆円から1.8 兆円に増額。今年3月には新型オペを10兆円から20兆円に拡大した。

来年2月中旬に発表される10-12月実質国内総生産(GDP)は マイナス転落が必至とみられている。須田美矢子審議委員が3月末、 野田忠男審議委員が6月中旬に任期を迎え、新たな審議委員の国会同 意人事も控えている。日銀法改正問題も絡んで政治家の介入が入りや すい時期であり、日銀に対する圧力が高まる要因には事欠かない。

伊藤忠商事の丸山義正主任研究員は「グランドビジョンを欠いた 場当たり的な政策運営と民主党政権の内部抗争に多くの国民はへきえ きしている。4月に統一地方選を控え、そうした自らに対する風当た りを弱めるため、民主党政権が景気低迷の責任を日銀へ押し付け、追 加緩和圧力を強めることは火を見るより明らかだ」と指摘する。

2つ目の鬼門はCPI基準年改定

日銀にとって2つ目の鬼門は、8月の消費者物価指数(CPI) の基準年改定だ。日銀は2011年度のコアCPIが前年比0.1%上昇す るとの見通し(委員の中央値)を示しているが、5年前の前回改定で は0.5%前後の下方修正が行われており、今回も同程度の下方修正を 見込む向きが多い。岩下氏は「下方改定により、デフレ克服に向けて 日銀に対する政治的圧力が高まる可能性がありそうだ」という。

足元では長期金利が上昇傾向にあり、21日の会見でも質問が集中 した。白川方明総裁は長期金利について、経済・物価情勢の先行きに 対する見方を反映して形成される側面と、その変動が「企業や家計の 資金調達コストや国債を大量保有する金融機関の収益への影響を通じ て経済物価・金融情勢に影響を与える側面もある」と指摘した。

前者の経済・物価の先行きをめぐっては、世界的な長期金利上昇 の震源地となっている米国の経済について「足元では今年の夏に比べ ると幾分明るめの材料が出ているが、経済の基本的な流れをみると、 バランスシート調整の重しをしっかり認識する必要がある」と述べ、 夏場の悲観論から一転して楽観論に転じている米国金融市場の動向に 対し、懐疑的な見方を投げかけた。

白川総裁は時間軸効果を強調

国内経済についても、15日発表された日銀企業短期経済観測調査 (短観)で「先行き予想は引き続き製造業を中心に悪化が続く見通し となっており、先行きをめぐる不透明感がなかなか払しょくされず、 企業の慎重な見方が依然根強いことを示すものだと受け止めている」 と述べ、決して楽観視していないことを示した。

そして、白川総裁が強調したのが時間軸の効果だ。「日銀として は今後の金利推移や影響を注意深く点検していく」とした上で、「な お、この点に関して日銀は時間軸政策を採用していることをあらため て指摘したい」と述べた。日銀は10月5日の決定会合で包括的な金融 緩和策を打ち出し、政策金利を0-0.1%に変更するとともに、物価の 安定が展望できるまで実質ゼロ金利政策を継続すると表明した。

日銀は物価の安定として、CPI前年比2%以下のプラスで、委 員の大勢は1%が中心と考えていることを明らかにしている。11年度 がプラス0.1%、12年度がプラス0.6%上昇という日銀の見通しに基 づくと、2年以内に物価の安定が見えてくるはずだが、基準年改定を 経た後の物価見通しはそれとは一変している可能性もある。

定期的なアクションが必要に

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラ テジストは長期金利について「年明け後に落ち着きを取り戻し、年度 末にかけてはいったん弱含みに転じる」と予想する。BNPパリバ証 券の河野龍太郎チーフエコノミストはむしろ、「日銀の金融政策に最 も大きく影響を与えているのは為替レートだ」と指摘する。

JPモルガン証券の菅野雅明調査部長は「株価も戻り、為替も落 ち着いているため、現時点では追加緩和は必要ない」という。ただ、 「日銀にはデフレ克服という至上命題があるので、デフレ克服に向け て努力しているという強いメッセージを定期的に3、4カ月に一度く らいは出していくことが課題になってくる」と指摘する。包括緩和か ら数カ月経つ年度末は、やはり日銀にとっては鬼門となりそうだ。

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