【11年為替】今度こそ円安基調、最高値一時突破でも-100円は遠く

2011年の円相場は戦後最高値を 一時的に突破しても、年後半にかけては世界的な金融危機後初めて、持 続的な円安・ドル高に転じるとの見方が優勢だ。米国経済の回復を受け た米量的緩和政策の打ち止め観測が主因。欧州債務危機や中国の金融引 き締めなど波乱要因もあり、今年の安値を明確に下回るとの回答は皆無 で、控えめな円安予測となった。

ブルームバーグ・ニュースが東京を拠点とする市場関係者11人に 聞いたところ、円・ドル相場が来年末に1ドル=85円以下に下落し、 日本企業の多くが決算期末を迎える3月末より円安になるとの回答が8 人に上った。11人の平均予測値は3月末が82円36銭。実現すれば 1995年(86円55銭)を上回り、同時期の過去最高となる。年末は85 円27銭で、日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)が示す10年度 下期の大企業・製造業の想定為替レート83円87銭を1円40銭下回る 見通しだ。

バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチの藤井知子シニア FXストラテジストは、来年の焦点は「米量的緩和政策からの出口と欧 米の財政懸念」だと分析。米景気回復を見越した「良い米金利上昇」を 前提に円安・ドル高を見込む。来春にかけては円が最高値を突破する場 面があるが、日銀による資産買い入れ策の拡充があり得ると指摘。ただ 、円売り介入は他国の理解を得られず、再開は難しいと見る。

外為どっとコム総合研究所の植野大作社長は、中国の金融引き締め がインフレ抑制を狙った「中立化」にとどまる限り、世界経済への影響 は小さいと見る。同国は預金準備率を今年6回引き上げ、10月には07 年12月以来となる利上げも実施した。BOAメリルの藤井氏は、人民 元相場はまだ輸出に「非常に有利」な水準にあり、日米欧と比べ財政出 動の余地も大きいため、中国経済の失速はないと読む。

前年も円安予想、今年こそ

菅直人内閣の行方や政界再編、主要国で最悪の公的債務残高といっ た日本発の材料は「為替相場への影響度は低い」と、バークレイズ銀行 の山本雅文チーフFXストラテジスト。ただ、来年夏の消費者物価指数 の基準改定による下方修正やタカ派(物価抑制重視)とされる須田美矢 子日銀審議委員の退任が円安圧力になる面はあると指摘する。

昨年12月の調査でも、市場関係者は円安転換を予測した。しかし、 円は今年3-4月こそ下落したが、5月からはギリシャなど欧州での債 務危機が深刻化しユーロが急落。6月以降は米景気見通しの悪化と金融 緩和観測を背景に、ドルが全面安となった。円は対ユーロで8月24日、 約9年ぶりに1ユーロ=105円44銭に上昇。対ドルでは米国の中期債 利回りが過去最低を更新する中、11月1日に80円22銭と、95年4 月の最高値79円75銭まで50銭弱に迫った。

減税延長、米量的緩和打ち止め

クレディ・スイス証券の深谷幸司チーフ通貨ストラテジストは、米 景気回復を受けて米量的緩和政策が「予定通り終わるか、終わりが早ま る」と分析。日米金利差が広がり、今年こそは円安基調になると読む。 深谷氏は前年調査(ドイツ証券に在籍)で円安を予想したが、円高値・ 安値については80-95円と現時点で最も正確な見通しを示した。

ユーロ圏16カ国政府は5月、7500億ユーロ規模の欧州金融安定 化基金の設立で合意。先週末には欧州連合(EU)首脳会議が、13年 に恒久的な危機管理メカニズムを設立することで合意した。

欧州債務危機の影響もあり、米連邦準備制度理事会(FRB)は6 月以降、景気判断を徐々に引き下げ、雇用情勢やインフレ率の鈍化に懸 念を表明。市場の米利上げ観測は後退した。FRBは11月、来年6月 にかけて6000億ドルの米国債購入を決定。金融危機対策で購入した証 券の償還元本の再投資分も含めると、総額8500億-9000億ドルに及 ぶ。先週末にはオバマ米大統領が、8580億ドル規模のブッシュ政権時 代の所得税減税を全て2年間延長する法案に署名し成立させた。

慎重な円安予想

今回の調査では、年後半にかけての円安予想が優勢とはいえ、その 程度は控えめだ。90円を明確に下回る場面があるとの回答は4人で、 前年調査時の「一時100円」の5人を下回った。来年末に90円を下回 るとの見方は3人だけ。80円超の最高値圏予想は2人だった。

来年の安値についても、今年の安値94円99銭と同水準の95円が 1人で、93-94円が3人。4人は90円まで下げる場面はないと予想 した。一方、円高値が95年4月の最高値79円75銭を上回る場面があ るとの見方は5人で、明確に否定した4人を上回った。

慎重な見通しの背後には米金利や欧州債務危機、中国の引き締めを 巡る不透明感がある。11月初めにかけての米金利低下とドル安は、F RBが量的緩和政策を導入すると終息。その後は、米国内外から行き過 ぎた金融緩和だとの批判や、インフレ懸念の台頭で米長期金利が急上昇 し、ドル相場も底入れした。

ユーロについては、今回の調査に回答した11人中、対ドルで7人、 円に対しては10人が来年はユーロ高を見込む。もっとも欧州債務危機 に関しては、ギリシャやアイルランド、ポルトガルに加え、経済規模の 大きいスペインに飛び火する懸念が残っており、ユーロ高の見通しは、 あくまでもスペインの危機回避が前提だとしている。

日銀は8月末に固定金利オペ(公開市場操作)を拡充した。10月 には政策金利を0-0.1%に下げ、物価の安定が展望できる情勢になる まで実質ゼロ金利政策を継続すると表明。5兆円規模の基金創設による 長・短期国債や民間金融資産の購入を決めた。政府も9月15日、6年 半ぶりとなる円売り介入に踏み切った。しかし、日本の政策対応だけで は、米欧発の要因による円高・株安の流れを変えられなかった。

円・ドル相場が来年、最高値を突破しても、政府・日銀が大規模な 円売り介入に踏み切るとの見方は少ない。9月の介入は、米欧との協調 ではなく日本単独で実施。国際通貨基金(IMF)は10月の報告書で、 日本や新興国の為替介入を批判した。政府はその後、最高値接近時にも 介入を見送った。ただ、野田佳彦財務相は、円急騰時には介入も辞さな い構えを崩していない。

日経ヴェリタス誌の為替アナリスト・ランキング首位、野村証券の 田中泰輔外国為替ストラテジストは、最高値突破で市場が混乱した場合 には介入もあり得ると予想する。田中氏は前年調査で「82-83円」で の介入を予測し、的中させた。今年末の円・ドル相場も87円と予想。 当時の12人中、足元の水準に最も近い。

今回の調査でも異彩を放ったのが、三井住友銀行の宇野大介チーフ ストラテジスト。米国経済が本格的な立ち直りを果たせず、投資家の米 資産離れが進むと予想する。前年調査では1人だけ、今年前半のユーロ 安と年央以降のドル安という流れを的中させた。ユーロの安値を1.1 ドル、100円と予測。6月7日の1.1877ドル、8月24日の105円 44銭に11人中、最も近かった。

11年相場見通し

市場関係者11人が予想する年間の値幅は以下の通り(かっこ内は 左から11年3月末、12月末)。

◎三菱東京UFJ銀行金融市場部

中村明チーフアナリスト

円・ドル  :  81- 94円 ( 84円、  92円)

ユーロ・ドル: 1.19-1.31ドル(1.28ドル、1.22ドル)

円・ユーロ :  103- 120円 ( 107円、  112円)

◎みずほコーポレート銀行

唐鎌大輔マーケットエコノミスト

円・ドル  :  78- 90円 ( 83円、  86円)

ユーロ・ドル: 1.15-1.36ドル(1.29ドル、1.18ドル)

円・ユーロ :  100- 115円 ( 107円、  101円)

◎三井住友銀行

宇野大介チーフストラテジスト

円・ドル  :  50- 85円 ( 80円、  60円)

ユーロ・ドル: 1.28-3.00ドル(1.40ドル、2.50ドル)

円・ユーロ :  108- 180円 ( 112円、  150円)

◎野村証券

田中泰輔外国為替ストラテジスト

円・ドル  :  78- 89円 ( 80円、  85円)

ユーロ・ドル: 1.25-1.42ドル(1.32ドル、1.35ドル)

円・ユーロ :  105- 120円 (105.6円、114.8円)

◎大和総研

亀岡裕次シニアエコノミスト

円・ドル  :  81- 94円 ( 86円、  91円)

ユーロ・ドル: 1.25-1.39ドル(1.31ドル、1.35ドル)

円・ユーロ :  107- 127円 ( 113円、  123円)

◎外為どっとコム総合研究所

植野大作社長

円・ドル  : 80.5- 95円 ( 81円、  95円)

ユーロ・ドル: 1.18-1.38ドル(1.35ドル、1.18ドル)

円・ユーロ :  104-112.5円 (109.35円、112.1円)

◎JPモルガン・チェース銀行

棚瀬順哉チーフFXストラテジスト

円・ドル  :  75- 88円 ( 81円、  78円)

ユーロ・ドル: 1.29-1.49ドル(1.40ドル、1.48ドル)

円・ユーロ :  106- 120円 ( 113円、  115円)

◎バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチ

藤井知子シニアFXストラテジスト

円・ドル  :  78- 88円 ( 79円、  88円)

ユーロ・ドル: 1.20-1.35ドル(1.23ドル、1.20ドル)

円・ユーロ :  97- 114円 ( 97円、  106円)

◎シティバンク銀行

高島修チーフFXストラテジスト

円・ドル  :  80- 90円 ( 86円、  84円)

ユーロ・ドル: 1.25-1.40ドル(1.27ドル、1.38ドル)

円・ユーロ :  105- 120円 ( 109円、  116円)

◎バークレイズ銀行 山本雅文チーフFXストラテジスト

円・ドル  :  80- 90円 ( 82円、  89円)

ユーロ・ドル: 1.26-1.44ドル(1.28ドル、1.42ドル)

円・ユーロ :  102- 128円 ( 105円、  126円)

◎クレディ・スイス証券

深谷幸司チーフ通貨ストラテジスト

円・ドル  :  82- 93円 ( 84円、  90円)

ユーロ・ドル: 1.25-1.38ドル(1.30ドル、1.34ドル)

円・ユーロ :  107- 123円 ( 110.5円、 120円)

--取材協力:三浦和美、小宮弘子、近藤雅岐、油井望奈美 Editor: Joji Mochida, Hidenori Yamanaka

参考画面: 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 野澤茂樹 Shigeki Nozawa

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