白川総裁:長期金利の変動は経済・物価に影響も-動向注視

日本銀行の白川方明総裁は21日 午後、定例記者会見で、長期金利は経済・物価情勢の先行きに対する 見方を反映して形成される側面と、その変動が「企業や家計の資金調 達コストや国債を大量保有する金融機関の収益への影響を通じて経済 物価・金融情勢に影響を与える側面もある」とした上で、両方の側面 を踏まえて今後の推移と影響を注意深く点検していく姿勢を示した。

10月5日の会合で決定した包括緩和の効果については「長めの金 利を押し下げる方向に作用している」と指摘。「全体として金融環境を さらに緩和方向に進める効果を発揮している」と述べた。

15日に発表された企業短期経済観測調査(短観)については、業 況判断DIの先行きが9月調査に続き大幅に悪化した点を挙げて、「世 界経済をめぐる不確実性の存在」を背景として「霧が晴れない状況が 続いている」と述べた。先行きの上下のリスクについては、9人の政 策委員の「全体としておおむねバランスしている」と述べた。

日銀は10月5日の決定会合で①政策金利を0-0.1%に変更②物 価の安定が展望できるまで実質ゼロ金利政策を継続③指数連動型上場 投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)などの金融資産 を買い入れる5兆円の基金創設-の3本柱からなる包括緩和を決定。 今月15日にETF、16日にはREITの買い入れを開始した。

悲観論と金融緩和期待が後退

日銀は包括緩和で「リスクプレミアムの低下」とともに「長めの 市場金利の低下」を狙いとして打ち出したが、長期金利(新発10年物 の312回債利回り)は15日、一時1.295%と約7カ月ぶりの水準に上 昇。0.8%台前半まで下落した10月初めから水準を切り上げており、 包括緩和の効果を疑問視する声も出ている。

白川総裁は長期金利の上昇について「わが国のみならず米国やド イツ、英国、新興国でも観察されている」と指摘。日本は「欧米先進 国に比べて上昇幅が大きいわけではない」としながらも、日本も含め た長期金利上昇の背景として「米国経済の先行きに対する悲観論や米 金融緩和期待の後退により、米国の長期金利が上昇する中、各国の長 期金利がこれにつれて上昇したと理解している」と述べた。

包括緩和の効果については「導入後の金利低下が示すように、総 額35兆円に上る基金による多様な資産買い入れと長めの資金供給は 長めの金利を押し下げる方向に作用している」と指摘。加えて「社債 スプレッドが格付けの低い銘柄を中心に縮小しているほか、株価やR EIT価格の上昇も見られるなど、リスクプレミアム縮小にも一定の 寄与をしているとみられる」と述べた。

金融環境を緩和方向に進める効果

白川総裁はさらに、「企業金融をめぐる環境は、貸出金利の低下や 社債、コマーシャル・ペーパー(CP)発行環境の改善にも見られる ように着実に改善している。時間軸効果も期待できる。このように包 括緩和は、全体として金融環境をさらに緩和方向に進める効果を発揮 している」と語った。

日銀短観では、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス 5と9月の前回調査から3ポイント悪化したものの、予想調査(プラ ス3)や前回調査の先行き予測(マイナス1)は上回った。一方で、 先行きはマイナス2と大幅な悪化を見込んでおり、企業が引き続き先 行きを慎重にみていることが示された。

白川総裁は短観の結果について「全産業・全規模の業況判断DI をみると、7四半期ぶりに悪化しているが、9月調査時点における企 業の先行き予想で示されたような大幅な悪化ではなく、ごく緩やかな 落ち込みにとどまった」と述べた。

米国はバランスシート調整の重し

その上で「もっとも、12月短観の先行き予想は引き続き製造業を 中心に悪化が続く見通しとなっており、先行きをめぐる不透明感がな かなか払しょくされず、企業の慎重な見方が依然根強いことを示すも のだと受け止めている」と述べた。

米国経済については「足元では今年の夏に比べると幾分明るめの 材料が出ているが、経済の基本的な流れをみるとバランスシート調整 の重しをしっかり認識する必要がある」と指摘。「FRB(米連邦準備 制度理事会)自身も先々の失業率がなかなか目に見えては低下せず、 デフレの世界に入っていく可能性は小さいが、ディスインフレのリス クを意識せざるを得ないということから、資産の大規模な買い入れを 行っている」と述べた。

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