【クレジット市場】市場が示す日銀利上げ、早くても12年後半以降に

将来の金利見通しを示すユーロ円 金利先物からみると、現時点では、日銀が10月5日に打ち出した実質 ゼロ金利は少なくとも2012年後半ごろまで続くことになりそうだ。足 元の日本経済はデフレ脱却や踊り場からの回復の時期が見通せず、利 上げ時期がさらに後ずれする可能性をみるエコノミストも多い。

日銀は20、21の両日、今年最後の金融政策決定会合を開催する。 ブルームバーグ・ニュースのエコノミスト調査によると、調査対象の 16人全員が政策金利である無担保コール翌日物金利の「0-0.1%程 度」の据え置きを予想。一方、将来の3カ月物TIBOR(東京銀行 間出し手レート)を予想するユーロ円3カ月金利先物(2012年9月限) は17日に0.465%の水準にあり、足元の3カ月物TIBORの0.335% 近辺に将来の不確実性のプレミアムを考慮しても、利上げを織り込ん だ水準までは至っていない。

ゴールドマン・サックス証券は2日公表した「日本経済見通し 2011-12」で、日銀の金融政策について「消費の弱さはインフレ圧力 が欠けていることを暗に示しており、物価は日銀が物価安定の目安と している1%にはるかに届かない」と指摘し、「日銀は12年末まで金 融緩和の姿勢を維持しなければならないだとう」との見方を示した。

日銀は景気下振れリスクに対応し、10月5日の会合で政策金利を 0-0.1%に引き下げた。同時に指数連動型上場投資信託(ETF)、 不動産投資信託(J-REIT)などリスク資産を購入する5兆円の 基金創設など包括的な緩和策を発表した。今月15日公表された日銀企 業短期経済観測調査(12月調査)によると、大企業製造業の景況感は リーマンショックで景気が大きく落ち込んだ09年3月調査以来7期 ぶり悪化した。

過半は13年以降の利上げ予想

ブルームバーグ調査よると、調査対象のエコノミスト16人のうち、 一番早い利上げを予想したのは12年第2四半期で1人。12年第4四 半期までにさらに5人、残りの10人は13年以降の利上げを予想して いる。

利上げ予想の時期は足元の景気や市場の動向に日々左右される。 市場関係者の現在の注目は長期金利の上昇と小康状態の円相場に集ま っている。日本の長期国債利回りは、10月には0.8%台まで下がった が、その後は上昇に転じ、今月16日には指標の新発10年物の312回 債利回りは一時1.295%と7カ月ぶりの高水準に上昇した。この背景 にあるのが米長期金利の上昇だ。

米連邦準備制度理事会(FRB)は11月3日に6000億ドルの大 量の国債購入による量的緩和の第2弾を打ち出した。先週16日には米 景気回復の継続を確認した上で、同額の国債購入計画の維持を決めた。

日米の長期金利格差は拡大

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラ テジストは日本の長期金利上昇の「最大の原因は米債相場の急落」と 指摘。その上で、FRBによる量的緩和第2弾で将来のインフレ懸念 や金融緩和の打ち止め感、さらには経済指標の上振れなどが米景気回 復期待を高めたことを挙げた。

日米の長期金利はともに上昇しているが、米国の方が上昇幅は大 きく、日米の長期金利格差は拡大傾向にある。円の対ドル相場は金利 格差の拡大を背景に円高が一服した状態で、17日午後5時現在1ドル =83円台後半で推移している。株価が堅調に推移していることも債券 市場では重しになっている。日経平均株価の17日終値は前日比7円 46銭安の1万303円83銭だった。

円の対ドル相場は、11月1日に1ドル=80円21銭と、1995年4 月19日に付けた最高値の79円75銭に迫った。その高水準からは反落 しているものの、年初来でみると依然9%強切り上がった水準だ。短 観では今年度の企業の想定為替レートは通期で1ドル=86円47銭、 (上期89円16銭、下期83円87銭)で、足元の円は下期の想定レー トと変わらない水準だ。

一方、銀行間取引金利である3カ月物TIBORは日銀の包括緩 和を受けて低下し、足元では0.335%近辺で推移。東京短資提示のC P金利はa1格の3カ月物が0.11-0.145%で推移している。ここか ら一段と低下するにはさらなる金融緩和が必要とみられるが、円高の 一服や株価の堅調もあり、目先、追加緩和期待はやや後退している。

10-12月期はマイナス成長

先行きの日本経済は楽観できない。7-9月期の国内総生産(G DP)は前期比年率4.5%増と1次速報の3.9%増から上方修正された ものの、10-12月期は政策効果のはく落や輸出鈍化見通しからマイナ ス成長に陥るとの見方が強い。社団法人・経済企画協会の民間エコノ ミストを対象としたESPフォーキャスト調査によると、平均で10- 12月期は前期比年率マイナス1.92と予想され、11年1-3月期に辛 うじて0.62%のプラス成長に戻る見込みだ。

政府の11月の月例経済報告は「景気はこのところ足踏み状態」と 指摘。エコカー補助金終了に伴う自動車販売の落ち込みを受けて個人 消費の判断を引き下げたほか、生産もアジア向け輸出鈍化に伴い減っ ていることなどから下方修正した。

米欧中の市場動向

世界経済のけん引役になっている中国経済はインフレ圧力が高く、 中国人民銀行(中央銀行)はこの1カ月に預金準備率を2度引き上げ た。こうした引き締め措置は来年以降に実体経済に表れてくる。ギリ シャの債務危機に始まった欧州の金融危機も収束の兆しは見えず、不 安定要因を来年に持ち越すことになった。

米国経済も楽観論ばかりはでない。信州大学の真壁昭夫教授は、 ブッシュ減税の延長を受けて「先行きに強気な見方が出始めているこ ともあり、米国経済の回復は続いてはいる」としながらも、「そのペー スは緩やかであり、引き続き物価下落や経済見通しに不透明感が増大 するリスクは残っている」と述べている。足元、円安に戻している感 のある円相場も、米景気指標が弱く出ればいつでも逆転しかねない。

引きずるデフレ

日本経済の最大の課題はデフレだ。消費者物価の見通しを示す5 年物の国債と物価連動国債(インフレ連動債)の利回りの格差(5年 ブレーク・イーブン・インフレ率)は17日終値がマイナス0.750%と 前日から若干マイナス幅が拡大したが、10月、11月のマイナス幅から は縮小している。

一方、17日のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS=マー クイットTraxx日本指数)市場では指数は横ばいで、日本の債券 保証コストはほぼ変わらなかった。サムライ債と国内企業社債との比 較は89ベーシスポイントと、このところ若干縮小傾向にある。

デフレ脱却の目安となるのが消費者物価指数。日銀は10月末に公 表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、11年度の消費者物 価指数(除く生鮮食品、コアCPI)を前年度比0.1%上昇と見込ん でいることを明らかにした。また、12年度は同0.6%上昇としている。 この水準は、日銀の物価安定の理解の中心値である1%には及ばない。 しかも、来年夏には消費者物価指数の基準値改定が行われ、指数の下 押しが予想される。

日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト は「物価については需給バランスの改善も足踏みだが、来夏のCPI の基準改定が鬼門だ」と述べ、「0.3-0.4ポイント程度の下方修正を 見込んでいる」という。その通りに基準値が下方修正されれば、デフ レ脱却はその分遅れる可能性が高まる。

経済協力開発機構(OECD)は11月に公表した加盟国経済見通 しの中で、日本のCPIについて11年はマイナス0.8%、12年はマイ ナス0.5%と予測している。

--取材協力 日高正裕 船曳三郎Minh Bui Theresa Barraclough Editor:Norihiko Kosaka,Hitoshi Ozawa

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