【コラム】今そこにある危機、欧州はタブー破る必要-カルレッティ

【コラムニスト:Elena Carletti】

11月18日(ブルームバーグ):ユーロ圏の現在の危機に対して今 回、市場が抱いている懸念は全く正しく、決して不合理ではない。

歴史は繰り返す恐れがある。紀元前4世紀に古代アテネでデロス 島神殿からの融資を履行できなかったケースが記録に残る最古のソブ リン・デフォルト(債務不履行)とされる。ギリシャでは、新たなソ ブリン・デフォルトが数年以内に発生する可能性がますます高まって いるようだ。

ユーロ圏はそうした事態にどのように備えるべきだろうか。迅速 に動くべきだというのがその答えだ。

ソブリン債のデフォルトに関するドイツとフランスによる最近の 提案は、ユーロ圏の債務契約における集団行動条項の重要性を強調し ている。これらの条項は、大多数の債権者が同意する条件の受け入れ を少数派の債券保有者に迫ることで、債務再編をより迅速に進める狙 いがある。盛り込まれることが重要なのは間違いないが、これは一方 で、主要な問題となりそうなテーマ、すなわち金融の安定から注意を そらすものだ。

新興市場国・地域のソブリン債のほとんどの契約が英米法の下で 行われているのに対し、ユーロ圏ではその多くが各国の国内法に基づ いており、ギリシャでは約90%が国内法の影響下にある。このため、 一部の債券保有者が条件の合意を受け入れた場合、合意に拘束力を持 たせる法律を成立させることで、政府が遡及(そきゅう)的な適用に 動くことも可能だ。

リスクフリーでなかった国債

だが、金融の安定にかかわる諸問題はやすやすと解決できそうに ない。銀行規制のほとんどがソブリン債を「リスクフリー」の資産と して取り扱っているため、それに対して自己資本を保持する必要はな い。2007年に発生した金融危機以後、監督当局は銀行に対して、十分 な流動性を確保し、中央銀行が資金供給するリファイナンシング・オ ペ(公開市場操作)の担保として差し入れを可能にするためにも国債 の保有を増やすよう促してきた。方針の転換が必要なのは明らかだ。

ユーロ圏内でソブリン債の分散投資を促すことは望ましくないか もしれない。分散投資はリスク低減に役立つ半面、それを一段と拡散 させる。ギリシャの場合はソブリン債の名目発行残高が比較的少なく、 デフォルトのリスクを吸収できるという意味で分散投資はより安全だ ろう。

スペインならシステム崩壊

しかし、巨額の債務を抱えるスペインのような大国が発行する国 債は危険性が高い。スペイン国債は市中に非常に大量に流通しており、 広範に保有される場合、デフォルトになればユーロ圏の銀行システム 全体を崩壊させかねない。

ソブリン債のデフォルトは非常に迅速に処理する必要があろう。 さもなければ、ユーロ圏内で脆弱(ぜいじゃく)と見なされる諸国か らドイツのような健全とみられる国々への莫大な資本流出を引き起こ し、デフォルトを見越したこうした動きの発生を止めるのは困難にな るだろう。一部の法律専門家がギリシャについて述べているように債 務再編手続きに最低6カ月もかかるようならなおさらだ。債権の優先 順位や預金保険、他の銀行債務の債権者にかかわる諸問題を解決しな ければならない。

ユーロ圏のソブリン債デフォルトに代わって取り得るもう一つの 選択肢として、ある国が場合によって一時的にユーロ圏を離脱する手 段が考えられる。大規模な資本流出を回避するため、ここでも迅速な 行動が求められる。その国の政府は一夜にしてすべての契約を恐らく ユーロと等価で新通貨建てに書き替える必要に迫られるだろう。

楽ではない道

面倒な細かい仕事が生じるのは間違いないが、事実上のデフォル トに陥った政府が金融政策を決定する権限を取り戻し、銀行システム を保証できるようになるという大きな利点がある。インフレも発生す るだろうが、自国通貨の切り下げ効果も相まって、輸出拡大による成 長に貢献することが期待される。政府が財政赤字と公的債務を抑制で きれば、その数年後に欧州通貨統合への参加(ユーロ導入)を再度申 請することができるかもしれない。

現代の金融市場でソブリン債のデフォルトが提起する金融安定を めぐる諸問題こそが、ユーロ圏諸国の公式協議の中心に置かれるべき だ。少なくとも公式の場でこれまでそうならなかったのはいささか驚 きだ。決して楽な道ではないが、タブーを破るべき時期が来ている。

(エレナ・カルレッティ)

(エレナ・カルレッティ氏は、フィレンツェにある欧州大学院の 経済学教授です。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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