日銀は金利上昇にも静観の構え、だんまり決め込む姿勢にうらみ節も

日本銀行が20、21日開く金融政 策決定会合は現状維持となる公算が大きい。長期金利が上昇している が、円高の一服に加え、株価が堅調なこともあり、日銀は静観の構え を続けるとみられる。日銀が金利の上昇に対してだんまりを決め込ん でいることに対し、金利抑制姿勢を鮮明にすべきだとの声も出ている。

日銀企業短期経済観測調査(短観)では、大企業・製造業の業況 判断指数(DI)がプラス5と9月の前回調査から3ポイント悪化し たものの、予想調査(プラス3)や前回調査の先行き予測(マイナス 1)は上回った。一方で、先行きはマイナス2と大幅な悪化を見込ん でおり、企業が引き続き先行きを慎重にみていることが示された。

日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト は「エコカー補助金終了後の自動車生産、販売の落ち込みを背景に10 -12月の生産と成長率は前期比マイナスが避けられない」としながら も、「改善テンポ鈍化は織り込み済み」と指摘。「日銀の次の一手がす ぐに必要な状況とは判断されないだろう」という。有力日銀ウオッチ ャー16人対象のブルームバーグ調査では全員が現状維持を予想した。

日銀は10月5日の会合で包括的な金融緩和策を打ち出し、政策金 利を0-0.1%として、物価の安定が展望できるまで実質ゼロ金利政策 を継続すると表明。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信 託(J-REIT)など金融資産を買い入れる5兆円の基金創設を決 めた。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は11月3日の米連邦公 開市場委員会(FOMC)で6000億ドルの国債購入を決めた。

円安、株高、金利高

日米の金融緩和以降の金融市場を振り返ると、11月初めに1ドル =80円割れ寸前まで円高が進んだ円の対ドル相場は足元では同84円 台前半で推移。日経平均株価は11月初めから11%上昇。東証REI T指数は包括緩和前から16%上昇した。一方、長期金利(新発10年 物の312回債利回り)は15日、一時1.295%と約7カ月ぶりの水準に 上昇。0.8%台前半まで下落した10月初めから水準を切り上げている。

JPモルガン証券の菅野雅明調査部長は「包括緩和は所期の目的 は達成しつつある。特にJ-REITは日銀の決定に市場参加者が追 随して価格を押し上げており、市場参加者のリスクテーク姿勢も戻り つつある。J-REITが今後新たに組成され、価格も上昇すれば、 不動産価格が上昇するという効果も期待できる」と評価する。

ただし、上がっているのは称賛の声ばかりではない。HSBC証 券の白石誠司チーフエコノミストは「基本的に足元の株高・円安・金 利高は海外、特に米国動向の反映であり、包括緩和の効果、影響では ない。ETF、REITは短期的に需給面からリスクプレミアムの縮 小に寄与しているが、より長い目で見た効果は限定的だろう」という。

QE2がインフレ期待を醸成

モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミス トは「米国経済はブッシュ減税の拡大・継続が確実となったことから 2011年の成長率は従来見通しより1ポイント程度押し上げられ、3% 台半ばとなる見通しだ。本年後半にまん延した過度の悲観論は足元修 正の途上にあるが、実際の経済のパフォーマンスも遅行指標の雇用を 除けば良好なものが増えてきている」という。

東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジストは米国の長期金利 上昇の背景について「怪しい部分もあるが、QE2(量的緩和第2弾) がインフレ期待を醸成したことに、景気楽観論の台頭や財政悪化懸念 が加わった」と指摘。その上で「米国債投資の損失拡大が日本国債に おけるリスク許容度の低下や益出し売却につながった」という。

金利上昇を座視する日銀への批判も出ている。三菱UFJモルガ ン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジストは、市場金利 が実質ゼロ金利政策の時間軸の短期化を織り込むかのように全般的に 上昇していると指摘。その背景として日銀の金融調節を挙げた上で、 日銀が包括緩和で掲げた「長めの市場金利の低下」というコミットメ ントよりも「金利機能の維持を優先している印象がある」という。

悪い金利上昇

石井氏は「そのことが市場参加者に日銀に対する不信感を抱かせ る結果になっている。日銀は市場の不信感を払しょくするべく、『長 めの市場金利の低下』を促す姿勢をきちんと示すべきだ。景気が踊り 場にあるにもかかわらず金利上昇傾向が続けば、それは悪い金利上昇 であり、包括緩和の初期効果を相殺してしまう」と指摘。

その上で「中短期債利回りの大幅上昇は同ゾーンの国債を大量保 有している銀行の体力を消耗させ、リスクテーク力の低下を招き、ひ いては金融仲介機能を弱めかねない」と指摘。「資金供給拡大で翌日 物金利の下振れを許容したり、国債買現先オペを復活させたりして、 そのような悪い金利上昇の抑制に乗り出す必要がある」としている。 ============================================================= 利上げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2012年4-6月】信州大学真壁昭夫教授

【2012年7-9月】クレディスイス証券の白川浩道チーフエコノミス ト(0-0.1%から0.1%へ)、大和総研の田谷禎三顧問

【2012年10-12月】モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕 チーフエコノミスト、東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト、 野村証券松沢中チーフストラテジスト(0-0.1%から0.1%へ)

【2013年以降】三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ 債券ストラテジスト、日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケ ットエコノミスト、みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミ スト、東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト、JPモルガン証券 の菅野雅明調査部長、第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミス ト、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト、HSBC証 券の白石誠司チーフエコノミスト、シティグループ証券の村嶋帰一チ ーフエコノミスト、バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チー フストラテジスト ============================================================= 無担保コール翌日物金利の予想は以下の通り(敬称略50音順)

                        10   11   11   11   11   12   12   12
                      12末 3末 6末 9末 12末 3末 6末 9末
-------------------------------------------------------------
調査機関                16   16   16   16   16   16   16   16
 中央値                0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
 最高                  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.20 0.30
 最低                  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
-------------------------------------------------------------
三菱UFJ・MS 石井      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
日興コーディアル岩下        0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
みずほ証 上野          0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
東短リサーチ 加藤      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
JPモルガン証 菅野         0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
第一生命経研 熊野      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
BNPパリバ証 河野     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
モルガン・スタンレーMUFG 佐藤  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
東海東京証券 佐野   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
HSBC証 白石        0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
クレディS証 白川      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10*0.10
大和総研 田谷          0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
信州大 真壁            0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.20 0.30
野村証 松沢            0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
シティG証 村嶋        0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
バークレイズC証 森田      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10

(注)無担保コール翌日物金利の予想の0.10%は現在の政策金利 「0-0.1%程度」の現状維持を意味します。ただし、白川氏は2012 年9月に「0-0.1%程度」から「0.1%前後」への引き上げを予想 (*)。アンケート回答期限は16日午前8時。「日銀サーベイ」金利 予想、経済・物価情勢、金融政策の展望コメントを17日朝に送信しま した。

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