「日銀サーベイ」金利予想、経済物価情勢、金融政策の展望コメント

【記者:日高正裕】

12月17日(ブルームバーグ):ブルームバーグ・ニュースは20、 21日の日本銀行の金融政策決定会合を前に、有力「日銀ウオッチャー」 16人に、金融政策の予想を聞いた。質問内容は以下の通り。アンケー ト回答期限は16日午前8時。エコノミスト予想のまとめ記事として 「日銀は金利上昇にも静観の構え、だんまり決め込む姿勢にうらみ節 も」を同時配信した。

1)今回の会合で予想される政策、2)日銀が政策金利を「引き 下げる」時期、3)日銀が政策金利を「引き上げる」時期、4)~11) 政策金利の予想水準(氏名50音順、カッコは前回回答)、12)経済、 物価情勢の見通し、長期金利の動向、14)金融政策の展望=①ここま での包括緩和の評価②金利上昇に対して日銀はどう対処すべきか③資 産買い入れ等基金の拡大のタイミングと、増額する場合の対象資産④ 成長基盤強化を支援するための資金供給拡大の可能性。

●三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジスト 1)今回会合 :現状維持、成長基盤強化の資金供給拡大の可能性 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年度下期(2013年度以降) 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国経済は緩やかな景気回復が持続している。企業部門が低在庫・ 低資本ストックを背景に底堅い。家計部門も個人消費がクリスマス年 末商戦で健闘している。ブッシュ減税の延長で不透明感が薄れ、その 他減税が来年の成長率を0.3%ポイントほど押し上げる見込み。しか し、景気拡大ペースは過去最高レベルに高止まりしている失業率を十 分に押し下げるほどには加速しない。

結果、デフレギャップがなかなか解消せずディスインフレ状態が 長引き、日本型デフレリスクもくすぶっていく。住宅や商業用不動産 の価格下落という資産デフレ圧力が根強いることもあり、家計ではバ ブル崩壊で抱え込んだバランスシート調整(過剰債務問題)が続き、 それが景気の足をなお引っ張ってゆく。

ユーロ圏経済はドイツ景気が好調を維持しているおかげで底堅い イメージがある。英国も底堅い。しかし実情は引き続き極端な二極化。 つまりPIIGSの欧州財政・金融不安が「負の連鎖」の引き金に指を かけている危うい状態。さしもの欧州中央銀行(ECB)も「出口戦 略」を延期せざるを得なくなった。来年になりユーロ安効果が薄れド イツの景況感に陰りが生じるとき、ユーロ圏景気は正念場を迎えそう。

アジア経済は底堅さが持続しているが、来年は減速が避けられそ うにない。最近の景気過熱抑制策や金融引き締め政策の効果がラグを 伴って表れてくる。

国内景気は踊り場に入ったもよう。短観の業況判断DIをはじめ 各種の主要経済統計がそれを示している。原因は生命線である輸出(特 にアジア向け)の鈍化と政策効果のはく落。景気は来年4-6月まで 踊り場を形成し、その後、失速(後退)を回避して緩やかな回復軌道 に復帰する。けん引役は輸出。外需頼み。一方、内需は成長期待の低 迷を背景に設備投資、個人消費とも引き続き伸びない。

むしろ政局混迷よる成長戦略の店ざらしにより失望感が深まり、 成長期待は一段と冷え込みかねない。こうした中、消費者物価指数(除 く生鮮食品、コアCPI)前年比上昇率はデフレギャップ解消の遅れ を背景に下落傾向は続く。下落率は縮小するが、来夏の指数基準年改 定に伴い下方修正される公算が濃厚。それにより、デフレ期待があら ためて強まる場面もありそう。

長期金利上昇の最大の原因は米債相場の急落。米債安は「QE2 (量的緩和第2弾)による将来のインフレ懸念→QE2決定後の緩和 打ち止め感(または緩和縮小懸念)の台頭→利益確定やポジション調 整の売り物拡大→経済指標の上振れ傾向と減税延長による景気回復、 日本型デフレ脱却期待の高まり、財政赤字懸念の台頭→損失確定売り の拡大」というプロセスをたどってきた。

この間、わが国債券市場では景気回復期待や脱デフレ期待が米国 市場のようには高まらなかったものの、相場の高値警戒感を背景に利 益確定売りやポジション調整売りが徐々に膨らんでいった。そして、 それが相場のボラティリティを高め、損失確定の売りを誘い出し、つ いには売りが売りを呼ぶ展開へと発展(=バブル崩壊型の相場下落)。

さらに、政府の財政規律弛緩による財政リスクプレミアムの復元 という後講釈も売りの口実として出てきた。結局、金利急上昇の背景 は「米国の景気回復、日本型デフレ脱却期待」「バブル崩壊」「財政リ スクプレミアムの復元」とみられる。長期金利は今年末までは米金利 とともに上振れし、年明け後に落ち着きを取り戻し、今年度末にかけ てはいったん弱含みに転じる。

米債市場では先走った景気回復期待が一服となり、金利上昇基調 に歯止めが掛かる。国内では景気の踊り場入りが徐々に明らかになる 中、12月末の四半期決算を終えた大手行などの運用資金が債券市場に 回帰してくる。預貸ギャップが拡大傾向を背景に投資家の余資運用難 は一段と強まっているためだ。

13)①包括緩和:今のところ40点程度。白川総裁は包括緩和の波及経 路として(a)長めの市場金利低下を通じた企業や家計の資金調達コス トの引き下げ(b)リスク資産買入の「呼び水」効果によるリスクマネー の仲介機能円滑化(c)「時間軸」による長期金利の安定化(d)企業や家 計の心理面への働きかけ-を挙げている。

このうち(b)の「呼び水」効果については株価持ち直し、不動産投 資信託(J-REIT)指数の上昇、社債スプレッドの縮小などにう かがわれる。一方、(a)(c)に関しては何と“逆効果”が発生してしま った。市場金利が実質ゼロ金利政策の時間軸の短期化を織り込むかの ように全般的に上昇し、国債イールドカーブが大きくベアフラット化 している。包括緩和後の資金供給オペレーションが一因だろう。

『長めの市場金利の低下』(日銀)というコミットメントよりも金 利機能の維持を優先している印象がある。そのことが市場参加者に日 銀に対する不信感を抱かせる結果に。なお、(d)の評価にはもう少し時 間が必要。

②金利上昇:市場の不信感を払しょくするべく『長めの市場金利 の低下』を促す姿勢をきちんと示すべき。景気が踊り場にあるにもか かわらず金利上昇傾向が続けば、それは「悪い金利上昇」であり、包 括緩和の初期効果を相殺してしまう。また、中短期債利回りの大幅上 昇は同ゾーンの国債を大量保有している銀行の体力を消耗させ、リス クテイク力の低下を招き、ひいては金融仲介機能を弱めかねない。

資金供給拡大で翌日物金利の下振れを許容したり、国債買現先オ ペを復活させたりして、そのような「悪い金利上昇」の抑制に乗り出 す必要がある。

③基金拡大:来年2月または3月の会合で基金を8兆円程度に増 額する可能性がある。理由は(ア)2月中旬発表の10-12月の実質国内 総生産(GDP)がマイナス成長に転じ、景気の踊り場入りを明確に 映し出す(イ)マイナス成長転落を受けて政府与党が追加経済対策の 策定に動き出す(ウ)日銀審議委員の国会同意人事に絡んで政府与党 内からデフレ脱却に向けたいっそうの努力を求める声が再燃する等。

増額対象資産は市場規模や流動性の観点から国庫短期証券と長期 国債が有力。長期国債の残存期間については、現行の「1-2年」か ら「1-5年」に延長する可能性もある。

④成長基盤:今会合で上限(現行3兆円)を引き上げる可能性が 見込まれる。11月30日に通知した第2回(貸付日12月7日)の貸付 総額は9983億円と第1回の4625億円から大きく増え、1回あたりの 貸付上限額である1兆円に迫った。第3回の貸付通知は来年2月末と 見込まれる。

早めに貸付枠を拡大して、銀行の年度末に向けた貸出需要の掘り 起こしを促すと同時に、デフレ脱却に向けた成長底上げに貢献する姿 勢を示すのではないか。その場合、1回あたりの貸付上限額(1兆円) と対象金融機関ごとの貸付残高上限(1500億円)も拡大するだろう。

●日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年以降(2012年4-6月以降) 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(0.30%) 11)12年9月末 :0.00%-0.10%(0.30%)

12)12月に入り米国では好調なクリスマス商戦のスタートが報じられ、 景気回復期待が高まっている。季節的に米株高の資産効果がすぐに目 に見える形となり、オバマ大統領からもブッシュ減税延長というクリ スマスプレゼントが用意されることを非常に喜んでいる。しかし、夏 場の行き過ぎた米国悲観論の修正から回復期待に転じたとは言え、こ の先、米国経済が一気に加速するわけではない。

QE2効果への過度な期待も禁物と考えている。民間部門の雇用 者数が前月比で+10万人以上のペースを持続することにより、家計の バランスシート調整を進めながら、緩やかな回復を続けていくことに なろう。QE2以降の日米長期金利上昇の流れも、米10年債が7カ月 ぶりに3.5%乗せとなり、いったんの達成感は出てくるだろう。

国内は短観で業況判断DIは大企業が7期ぶりに悪化。中小企業 製造業のみ足元は改善。総じて9月時点の予想に比べて足元は持ち直 したが、先行きは大幅悪化と企業の慎重姿勢が示された。一方の事業 計画では売上高、経常利益の上期を上方修正して下期を下方修正する 動きが続いたが、通年では上方修正としっかり。設備投資は中小企業 が過去平均ペースより高めの上方修正、大企業も非製造業が上方修正。

収益改善に遅れながらも設備投資の持ち直しは進んでいる。足取 りは緩やかだが悪くはない。エコカー補助金制度終了後の自動車生産、 販売の落ち込みを背景に10-12月の生産もGDPも前期比マイナス が避けられない。改善テンポの鈍化は織り込み済みであり、来春には 持ち直すことを完全に否定する新たな材料は短観からは読み取れなか った。日銀の次の一手がすぐに必要な状況とは判断されないだろう。

踊り場後に緩やかな回復に戻れるかは、10-12月の落ち込みから 来春にかけて持ち直せるか次第である。物価については需給バランス の改善も足踏みだが、来夏のCPIの基準改定が鬼門だ。ラスパイレ ス連鎖方式との乖離から0.3-0.4ポイント程度の下方修正を見込ん でいる。デフレ克服に向けた道のりは長くなる可能性が高い。いずれ にせよ、来夏にシナリオ再点検せざるを得ない。

13)①包括緩和:早めのタイミングで包括緩和を決定し、日銀が柔軟 姿勢を示したことにより、金融市場を安定(短期金利の低位安定、リ スクプレミアムの縮小)させる効果はあった。②金利上昇:米国がけ ん引したものであり、日本のファンダメンタルズを反映した動きとは 言い難い。日銀が対応する必然性は乏しい。

③基金拡大:年度末を前に金融市場が不安定化(株安、円高進行) した場合、企業や家計のマインドが冷え込む可能性が高まったと判断 された場合には資産買い入れ等基金の拡大が見込まれる。国債の買い 入れは須田委員が反対しているが、資産の中では効果と副作用の検証 ができており、増額に一番取り組みやすい手段ではあろう。期末の株 価への危機感が強まる状況となった場合には指数連動型上場投資信託 (ETF)の増額の可能性もあるように思われる。

④成長基盤強化の支援策は、従来の金融政策だけでなく、日銀に 何かできることはないかと考え抜いたものである。資金需要が高まる 効果が見えるようなら、上限の拡大の可能性は十分にあるだろう。

●みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年1-3月(2012年10月) 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)エコカー補助金終了や円高の影響で国内景気は「踊り場」に陥っ ているが、11年春には輸出主導で緩やかな回復軌道に戻ると予想して いる。企業の景況感は足元でいったん悪化しているものの、このまま 腰折れする状況ではない。このところの長期金利上昇は基本的には、 米長期金利急上昇や円高一巡など債券市場を取り巻く環境変化を反映 した水準シフトという性格が濃い。

ただし、米国債で大手邦銀が多額の評価損を被り、この穴埋めで 国内債を大量に売却するといった需給面のゆがみが広がっていること が金利上昇の幅を大きくしている。不安定な局面を経て、金利水準は 各ゾーンで徐々に落ち着いてくるとみている。

13)①包括緩和:社債の信用スプレッドが相対的に低格付け債でも縮 小しているほか、REIT指数が上昇していることには効果が出てい る。しかし、それによって景気・物価が刺激される効果は極めて小さ いのではないか。市場のセンチメントや需給に介入したことの反動が 将来訪れるリスクがあることにも留意したい。国債利回り上昇を抑制 する効果は基金による国債買い入れではほとんど出ていない。

②金利上昇:日銀は長期金利のコントロールに乗り出すべきでは ない。市場にゆがみを作り出すのみならず、金利コントロールに完全 に失敗した場合は日銀の信認に傷がつくことにもなる。日銀によるリ スク性資産の購入にも筆者は反対だ。「実験」したい気持ちは理解でき なくもないが、日銀が長期的に最も重視すべきものは何かを見失って はならない。

③基金拡大:円高が再度進行する場合や、景気下振れリスクが強 まる場合に増額が検討されるだろう。増額する資産は状況次第で柔軟 に決めると思われるが、基本的には国債と国庫短期証券だろう。④成 長基盤:将来、枠を1、2兆円拡大する可能性がある。

●東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年以降 4)10年12月末 :0.00%-0.10% 5)11年3月末 :0.00%-0.10% 6)11年6月末 :0.00%-0.10% 7)11年9月末 :0.00%-0.10% 8)11年12月末 :0.00%-0.10% 9)12年3月末 :0.00%-0.10% 10)12年6月末 :0.00%-0.10% 11)12年9月末 :0.00%-0.10%

12)米国の長期金利上昇は中央銀行が国債買いオペで同金利をコント ロールすることの難しさを示唆している。今年の世界経済は問題をは らみつつも結局はトレンドを上回る5%近い好調な成長になる見通し だ。米国の減税策延長は将来の財政再建への懸念を高めると同時に、 来年の米成長率を下支えするため、米長期金利は上昇している。

米連邦準備制度理事会(FRB)の大規模国債購入策は同金利の 動きを増幅してしまっている。このため日本の長期金利は当面は米長 期金利に引っ張られやすい状況が続くだろう。

13)①包括緩和:日銀によるETFやREITの購入は、海外投資家 の目をそれらの市場に振り向かせた功績はあると思われるが、包括緩 和策は基本的には日銀法改正議論が国会で高まらないようにするため の政策だと思われる。②金利上昇:上昇といっても米国に比べればマ イルドであるし、無理に抑え込もうとすると米国のように妙な反動が 出る恐れもある。

③基金拡大:米国で景気悲観論が台頭して円高が起きたり、米連 邦準備制度理事会(FRB)が国債買い入れ額を増額すれば日銀は基 金を拡大するだろう。当面は様子見と思われる。④成長基盤:金融機 関のニーズが強ければ、拡大することはあり得るだろう。

●JPモルガン証券の菅野雅明調査部長 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年以降 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国の長期金利上昇に引っ張られて国内の長期金利も上昇してい る。米国の長期金利上昇は、クリスマス休暇前で商いが薄い中、ブッ シュ減税の延長などに過剰反応している面もある。ただ、米国の失業 率の高止まりやディスインフレの継続から、米長期金利が上昇を続け る必然性はなく、そろそろ上限に近づいているとみている。したがっ て、国内の長期金利もそろそろ落ち着いてくるのではないか。

13)①包括緩和:所期の目的は達成しつつある。日経平均株価は10% 前後上昇している。東証REIT指数は包括緩和前の10月4日から 18%上昇している。日銀の決定に市場参加者が追随し、価格を押し上 げている。市場参加者のリスクテイク姿勢も戻りつつある。J-RE ITが今後新たに組成され、価格も上昇すれば、不動産価格が上昇す るという効果も期待できる。

②金利上昇:日銀は短めの金利を上昇させない姿勢を強く打ち出 すべきだ。米国ではイールドカーブがスティープ化している。日銀は 長期金利を動かすことはできないが、ターム物の資金を潤沢に供給す ることで、2年以下の短めの金利は極力上昇させないというメッセー ジを出せば、短めのゾーンで日米金利差が拡大し、円安方向に作用す ることも期待できる。

市場参加者の間では、日銀のスタンスをめぐって若干混乱がみら れる。市場参加者のモラルハザードを助長するという副作用があるの は事実だが、今はメッセージを出すには非常に良い機会だ。

③基金拡大:株価も戻り、為替も落ち着いているため、現時点で は必要ない。今は短めの金利を上昇させないというメッセージを出す ことの方が重要だ。ただ、デフレ克服という至上命題があるので、デ フレ克服に向けて努力をしていることを示すため、定期的に強いメッ セージを出していく必要ある。3、4カ月に一度くらいはアクション を取り続けていくことが課題になってくる。

④成長基盤:今のところ、ミクロでの効果はあったのかもしれな いが、マクロのデータで貸し出しが増えたことは確認されていない。 従来の貸し出しが単にシフトしただけという可能性もある。資金供給 額を増やすよりも、まずはマクロ的な効果を検証するのが先決だ。

●第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :予想の期間内に想定できず(同) 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)長期金利上昇、米金利上昇にひきずられたものだ。短観結果を見 ると少なくとも11年春くらいまでは企業の慎重姿勢が続きそうだ。長 期金利は当面1.2-1.4%の範囲内で推移するのではないか。

13)①包括緩和:日銀は米QE2を警戒して包括緩和を発動したと見 ている。1ドル=80円を切るような円高リスクが遠のいたので、セー フティーネットとして一定の意義はあった。②金利上昇:長めの金利 低下にはあまり貢献していない。現時点くらいの範囲であれば動かな いのではないか。

日銀は主に円高リスクを念頭に基金での買い入れ増加を視野に入 れてきた。もし長期金利が一気に1.8-2.0%くらいまで跳ね上がれば 基金を使ったアクションを採るのではないか。③基金拡大:タイミン グは事前には想定できず。④成長基盤:金額的にそれを大きく積み増 す展開にはなりそうにない。地道な取り組みの様子をみると考えられ る。

●BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年1-3月以降(なし) 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)4-6月以降、新興国を中心に在庫復元の動きと財政政策の効果 が一巡し、世界経済の成長ペースが鈍化していた。しかし、最も先行 して成長ペースが鈍化していた中国で8月以降は製造業循環が回復に 転じている。中国をはじめとする新興国向け輸出を増やす形で、先進 国の製造業循環の減速も止まり始め、ここ数カ月間で世界経済が2番 底に陥る懸念はかなり薄らいだ。

実際、米欧の製造業循環も10月に下げ止まり、5月から低下傾向 にあったグローバルPMIは10月以降、持ち直しの動きが見られる。 年明け以降、世界的な製造業循環の回復が明確になっていくと予想さ れる。ただ、日本については例外で、エコカー補助金の打ち切りに伴 う駆け込み需要の反動から10-12月も製造業循環の減速が継続する 見込みで、世界的な製造業循環の回復に多少遅れるが、それでも春先 以降は回復が明確化してくると思われる。

13)①包括緩和:日本のトレンド成長率低下の主因は生産年齢人口や 総人口の減少と思われる。この場合、裁量的な財政政策や金融政策を 発動しても効果はない。重要な点だが、労働力が減少すれば、資本ス トックの水準が一定でも一人当たり資本ストックは増加する。適正な 水準を上回れば収益性の低い過剰ストックが発生する。

設備投資の増加こそ経済成長の源泉と考え、金融政策で設備投資 を刺激しようとすることは、過剰ストックを生み、潜在成長率を低下 させる恐れがある。非正統的な政策によって資本コストやリスクプレ ミアムが低下し、設備投資が促されても、成長分野が現れ資本収益率 が高まらなければ、新たな過剰ストックが生まれるだけというリスク がある

②金利上昇:世界的に株高、ドル高、金利高が見られるのは、前 述した通りグローバルな製造業サイクルが底入れし、「世界経済が二番 底に陥る懸念」が大きく後退したためであり、違和感はない。経済状 況の好転に伴う金利上昇は問題視されるべきではない。

③基金拡大:日銀の金融政策に最も大きく影響を与えているのは 為替レートだ(日銀が為替レートに反応しているというよりも、日本 社会が円高に強く反応しているというべきか)。また、このところのド ル円レートに最も大きな影響を及ぼしているのは、FRBの金融政策 だ。FRBはしばらく現在のQE2の効果を見守ると思われ、その結 果、円高圧力も和らぐため、日銀への追加緩和圧力も高まらない。

もっとも、米国の抱えるバランスシート問題(過剰債務問題)は 簡単には解消されない。全治10年で、あと7年程度の調整期間を要す ると考える。このため米国経済は輸出主導で循環的な景気回復が続い ても、内需の回復は緩慢なままだろう。オバマ政権の決定した追加財 政で成長率が多少高まる局面があったとしても、それは一時的なもの で終わる。

この結果、失業率の改善も限られ、コアインフレ率も低下トレン ドが続くと見られる(ただ、ヘッドラインのインフレ率は、原油や穀 物などコモディティ価格の高騰によって上昇が見られるかもしれな い)。こうした状況が続けば、FRBはいずれQE2の拡大(QE

2.5)、あるいは非正統的金融資産の購入を伴う物価水準ターゲットの 導入(QE3)を検討せざるを得なくなる。

追加財政や金融緩和などマクロ安定化政策で自然利子率(均衡実 質金利)を押し上げることはできないが、無理は承知でFRBがアグ レッシブな金融政策を追求する場面が訪れると見られる。FRBの政 策変更に反応し、為替市場では再びドル安・円高が進む可能性は高く、 円高圧力を吸収すべく日銀に対し追加金融緩和圧力が高まるのは避け られないだろう。

残念ながら「経済の老化」で日本の内需は停滞が続くと見られ、 輸出頼みの日本社会は輸出セクターへ悪影響をもたらす円高を受け入 れることができない(本来は円高のメリットを享受できるような経済 構造とすることが望まれるのだが)。その時、非正統的な金融政策を行 うために設置した基金が増額されるのだろう。

非伝統的資産の大規模な購入政策は、民間部門の資源配分や所得 分配に大きく影響を与えることになる。資本主義の原則を逸脱する政 策だとも言えるが、もし民主主義国家においてこの決定を行うことが できる主体があるとすれば、それは選挙の洗礼を受けた政府・議会の みである。このため本来であれば、基金の増額の際には政府が購入資 産の全額保証を行う必要がある。

また、基金の規模(上限)や購入対象資産についても、本来は政 府が決定すべきだと思われる。ちなみに、より確実な効果を持たせる のであれば、外貨あるいは外貨建て資産も対象とすべきだと考える。 ④成長基盤:規模を増やしても、それが成長分野の出現をもたらし、 均衡実質金利の上昇につながるのか大いに疑問。

●モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2012年10-12月以降(同) 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国経済はブッシュ減税の拡大・継続が確実となったことから11 年の成長率は従来見通しより1ポイント程度押し上げられ、3%台半 ばとなる見通し。本年後半にまん延した過度の悲観論は足元修正の途 上にあるが、実際の経済のパフォーマンスも遅行指標の雇用を除けば 良好なものが増えてきている。

ただし、日銀の認識通りバランスシート調整下の経済は上方モメ ンタムを持ちにくく、減税効果はく落後に経済は再び停滞するリスク がある。物価も需給ギャップや新興国からの安価な製品流入を背景に 低空飛行が続こう。

日本経済は足元想定通り踊り場にあり、短観もそれを確認した。 一方、10月で鉱工業生産は底入れし、景気ウオッチャー調査の現状判 断DIも大幅に持ち直した。自動車ではエコカー補助金打ち切りを見 越した見込み減産の反動から1-3月の生産も持ち直し継続となる公 算が強く、足元の国内需要の踊り場的な動向の割に先行きの見通しは さほど暗くない。

国内長期金利は米債券市場の影響を強く受けており、景気回復期 待といった内生要因よりはむしろ外生要因で動いている面がある。す なわち、米国債投資で損失を被った国内機関投資家が円債ポートフォ リオの含み益を吐き出すために国債を売っているとみられる。その点、 投資家が債券市場を買いの目で見始めるためには、米債券市場の売り が一巡し、市場のボラティリティが低下することが必須だろう。

13)①包括緩和:J-REITの買い入れがまだ始まっておらず、包括 緩和のメニューは実際に出揃っていないが、アナウンスメント効果で ここまで市場が持ち直してきた点は評価できる。ただし、無担コール 翌日物金利は包括緩和導入前後で全く変わっておらず、実質ゼロ金利 政策は有名無実化している。加えて、円金利市場も米債の影響を受け、 ポジション調整から利上げを織り込む形となっており、金利面では所 期の効果を発揮していないうらみがある。

②金利上昇:足元の円金利市場の動向は利上げを織り込むような カーブの形状となっており、「長めの金利の低下」と「リスクプレミア ムの縮小」を促すという包括緩和の目的と合致していない。日銀は包 括緩和の2点目の柱である時間軸へのコミットメント明確化の趣旨に 沿い、市場の不合理な利上げ期待をけん制する必要があろう。

もっとも、足元は米国経済の対する過度の悲観論の揺り戻しで米 長期金利が急上昇するのにつれて円金利も上昇した面があり、現実的 には日銀は当面、静観を決め込む可能性が高い。ただし、03年のVA Rショック時との比較で地銀の金利リスク量が顕著に拡大しているこ とから、仮に足元の金利上昇が地銀のシステミックリスクに発展する 事態となれば、日銀は解除条件の数値基準化や基金による国債買い入 れ枠の拡大等を通じて金利上昇を抑え込みにかかろう。

③基金拡大:資産買い入れ等基金拡大のカタリスト(触媒)は為 替と物価動向。物価面では、消費者物価の基準改定が行われる11年8 月以降にあらためてデフレ脱却の遅れが問題視される可能性が高く、 年後半(恐らく10-12月)にかけて基金の拡大が模索・実施されよう。 買い入れ拡大は優先順位の高い順に①国債②ETF③クレジット物④ J-REIT。市場規模や流動性の面から、各資産の構成割合は一定 ではなく、今後の拡大に応じて変化するだろう。

すなわち、J-REITは買入れ対象となるAA格以上の残高が 2兆円弱しかなく、買い入れ拡大の可能性は低いとみる。一方、日銀 はETF市場の残高との比較で現行の4500億円の買い入れ枠を決め たようだが、ETF市場残高との比較は意味をなさない。株式市場が 底割れする事態となれば、政治的圧力からETFの買入れを増やす展 開もあり得よう。

④成長基盤:日銀は成長基盤強化の政策に強くコミットしており、 早晩上限を拡大の可能性大。

●東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :可能性あるが時期特定できず(2011年1-3月) 3)利上げ時期 :2012年10-12月以降 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(0.00%) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(0.00%) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(0.00%) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(0.00%) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(0.00%) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(0.00%) 11)12年9月末 :0.00%-0.10%(0.00%)

12)米国景気はブッシュ減税の継続などによってやや目線を上げる必 要性が生じた。それでも住宅・金融部門のストック・構造調整を脱す るには時間を要する。クリスマス商戦の好調が伝えられているが、リ ーマンショック後のペントアップ(溜まっていた)需要と「先食い」 の部分が大きい。特に後者は住宅など資産価格の上昇と雇用・所得環 境の改善を前提にしていると見られ、今後の息切れは否めない。

欧州経済はユーロ安効果が一巡し、財政緊縮が悪影響を及ぼそう。 財政悪化を中心とする南欧諸国などの足かせも残る。また、中国の金 融引締め転換は世界経済の減速要因だ。わが国経済は外需減速、政策 効果のはく落、円高の悪影響などから、少なくとも今後は「踊り場」 を迎えるという方向性に変化はない。

長期金利の上昇について、外部環境面では米国金利上昇が主因だ。 怪しい部分もあるが、QE2がインフレ期待を醸成したことに、景気 楽観論の台頭や財政悪化懸念が加わった。そして需給面では、その米 国金利上昇がわが国の金利上昇を促したことによって、投資家のポー トフォリオのデルタ(三角)調整が迫られ、現物の売却、先物のヘッ ジ売りがかさんだ。

さらに、米国債投資の損失拡大が円債におけるリスク許容度の低 下や益出し売却につながったと見られる。また、外部環境で加えるな ら、株高や日銀が見る時間軸の長さに対する思惑も挙げられる。

13)①包括緩和と②金利上昇:「長めの金利の低下」は不十分、「リス クプレミアムの縮小」は一定の効果ありと評価できる。今回の金利上 昇はわが国の景気回復期待が強まったことが背景ではない。したがっ て、それは景気の足かせになると考えられる。

金利の上昇に対しては、潤沢な資金供給によりレポレートを含め た足元金利の一段の低下を促す、あるいは「資産買い入れ等基金」を 拡大する際に残存の制限を取り払い、国債の買い入れを増額するなど が挙げられる。

③基金拡大:市場の規模や秩序、公正性、日銀の役割などを考え ると、プレーンな債券を対象とするのが妥当と見る。タイミングはた とえば低調な景気指標が来年1-3月に発表されても、金利が高止ま りしているときなどが挙げられる。額としてはとりあえず5兆円から 10兆円への拡大を想定する。

④成長基盤:中央銀行としてどこまで介在すべきかという疑問は 残るものの、民間の貸出増を促すには一定の効果があることは間違い ないだろう。したがって上限拡大の可能性は十分ある。

●HSBC証券の白石誠司チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年以降 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国データはまだら模様ながら市場予想を上回る頻度が増えてき た。高水準の失業率、根強いディスインフレ基調といった歴史的バブ ル崩壊後の構造現象に変化はないものの、循環的に二番底リスクが後 退しているのは明らか。

中国でも夏場を底にPMIが反転・加速しており、インフレ圧力 が一段と高まったことから金融引き締め基調への転換が宣言された。 ただ、“緩和度合いの調整”に過ぎず、基本的には緩和的金融環境自 体は維持されるとみられ、景気のダウンサイドリスクとまではとらえ にくい。

日本では耐久財消費支援策の反動を主背景に年度後半の踊り場入 りが不可避の情勢。1-3月期生産が3期連続の前期比マイナスとな れば事後的に景気後退が認定される可能性が高まる。しかし、足元で 米中経済が減速局面を脱してきているため、春先以降の緩やかな外需 主導成長再開が見込み得る点において、市場の景況感悪化は限定され る公算。

足元の長期金利上昇の最大の背景は米国長期金利上昇といえる。 米国ではQE2採用公算をはやして8月末から株価が上昇基調に転じ、 11月初旬のQE2決定以降、長期金利も上昇トレンドに転じた。株高 による資産効果でクリスマス商戦も堅調で推移しているもよう。足元 では新財政パッケージも決定され、今後における循環的なモメンタム 加速公算に加え、一段の財政悪化懸念も材料となっている。

ただ、バランスシート調整に顕著な進展がみられない中、財政刺 激策を起点とした自律回復が実現する公算は小さい。財政政策が繰り 返され、債務残高が累増すればするほど、財政刺激効果は短期的にも 限定されていくと考えられるが、米国ではまだ財政政策の効果に対す る期待が高い(ナイーブ)のかもしれない。

今後、失業率低下ペースの鈍さ、CPIディスインフレ傾向の根 強さ、これらに規定されたFRBの超低金利政策長期化公算-などが 冷静に再評価されることで米長期金利は下方に水準訂正する公算が大 きく、いずれ再度の10年3%割れも視野に入ってこよう。

13)①包括緩和:基本的に足元の株高・円安・金利高は海外、特に米 国動向の反映であり、包括緩和の効果、影響ではない。ETF、RE ITについては、短期的に需給面からリスクプレミアムの縮小に寄与 しているが、より長い目で見た効果は限定的だろう。

②金利上昇:日銀がターム物金利への働きかけを強めた大きなき っかけは円高進行であった。足元では米国景気見通しの改善を受けて やや円安方向に振れる展開となっており、この点において力ずくでも 2年債金利を元のさやに戻すといったインセンティブは今の日銀には さほどないだろう。

③基金拡大:景気見通しの悪化と再度の円高進行(80円突破リス クの高まり)が基金増額のカタリストになるとみられるが、足元では 当面における基金増額公算を弱める要素が多い。増額の場合は1-2 年国債買い増しが中心となろう。④成長基盤:可能性はある。

●クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2012年9月に0.1%へ(2012年1-3月) 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(0.10%) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(0.10%) 11)12年9月末 :0.10%(同)

12)世界景気は回復基調を維持。米国では雇用に拡大モメンタムがつ く見通しで、雇用→個人消費の好循環が顕在化してこよう。中国は人 民元切り上げ、賃上げ抑制、価格統制によってインフレ圧力を抑えな がら、投資主導型の景気拡大を維持。欧州景気は財政問題を抱える周 辺国と独・仏など中心国の景気格差が残存するが、ユーロ安に支えら れて全体としては上向き。

国内景気は外需再加速のプラス効果はあるものの、耐久財消費大 幅増の反動から短期的には減速傾向。世界的な長期金利上昇は基本的 に景況感の改善を反映したものであり、ごく一部の国を除いて財政問 題とは無縁。米国の場合、11年の名目GDP成長率は5%に迫る可能 性が高く、10年債利回りが4%台に上昇しても全く不思議ではない。 長期金利が上昇したから景気が腰折れるというものでもない。米国企 業や家計が借入によって支出を増やす局面にはまだないためだ。

13)①包括緩和:株高、円安、金利高は米国景気、世界景気の先行き 期待改善を基本的に反映したものであり、包括緩和の効果は限定的。 ②金利上昇:長期金利の上昇が景況感改善を反映したものである以上、 追加的な対応の必要はない。③基金拡大:世界景気循環から考えて、 資産買い入れ等基金を拡大する必然性はない。このため拡大を予想で きない。④成長基盤:拡大の可能性は低い。

●大和総研の田谷禎三顧問 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2012年7-9月以降(同) 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年9月末 :0.25%(同)

12)このところ円高の一服、株価の堅調、米国経済に対する極端な悲 観論の後退などもあって、国内景気の先行きについてやや安心感が出 ている。短観の業況判断は先行き弱めに出ていたが、先週の法人企業 景気予測調査や今週の同友会の景気定点観測アンケート調査などの結 果は、先行きについて比較的楽観的だった。短観の結果はやや景況感 に遅行する傾向がある。

ただ、このまま景況感が改善し続けるのは難しく、来年に入って からもしばらくは一進一退が続く可能性が強い。最近の長期金利の上 昇は米国金利の上昇に連動したものだろうが、景況感の改善を反映し たものばかりでもなさそうだ。現在が既にそうだと言うわけではない が、今後、長期金利の上昇局面では注意が必要だろう。

いつユーロ危機が日米を含めた主要先進国のソブリンデット・ク ライシスに転化しないとも限らない。それだけ各国の財政状況は悪い。 長期金利の上昇局面では常にその可能性を頭に入れておかなければな らないだろう。

13)①包括緩和の効果がどれほど出ているかはよく分からない。ただ、 日銀がリスク資産を買う姿勢がマーケットに評価されていることは事 実だろう。②金利上昇③基金拡大:今後とも景況感が下振れした際に は日銀への景気支援要請は出てくるだろう。そうした際、最近の総裁 の発言などからすると買い入れ資産の拡大はあり得るだろう。買い入 れ増加対象資産は長期国債が中心だろうが、ETFもあり得る。

④成長基盤:成長基盤強化のための支援を強化することも、実際 の使用状況によっては考えられるかもしれない。

●信州大学の真壁昭夫経済学部教授 1)今回会合 :現状維持 3)利下げ時期 :なし 2)利上げ時期 :2012年4-6月以降(同) 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年6月末 :0.20%(同) 11)12年9月末 :0.30%(同)

12)ブッシュ減税の延長を受けて米国経済の先行きに強気な見方が出 始めていることもあり、米国経済の回復は続いてはいる。しかし、そ のペースは緩やかであり、引き続き物価下落や経済見通しに不透明感 が増大するリスクは残っている。また、減税延長は財政への懸念を高 めることにもあり、長期金利の上昇を加速する格好にもなっている。

企業の雇用に対するスタンスは慎重で、当面、労働市場の回復は 極めて緩やかなものになろう。加えて、家計部門にはバランスシート 調整の負担もかかっている。そうした状況下、減税の延長がどれほど の景気浮揚効果を持つかは未知数とみるべきだろう。消費動向には明 るさも見えるものの、本格的な回復には時間がかかると見た方が良い。

年末にかけてわが国の景況感は一時的に下落している。背景には エコポイントの縮小やエコカー補助金の終了など経済対策の効果がは く落していることに加え、夏場の猛暑効果がなくなったことがある。 海外経済減速を受けて輸出にも伸び悩み傾向が見えたことも影響して いる。潤沢な流動性が供給されていることもあり、今のところ景況感 の一時的な落ち込みが金融市場に大きな影響を与えるとは考えづらい。

一方、欧米や中国経済の行方にやや不透明な部分もあることを考 えると、今後の展開には注意が必要だろう。長期金利の上昇に関して は、米国での減税措置の延長による財政状況の悪化や、先行きのイン フレ懸念に対する警戒感が大きいとみられる。ただ、わが国や米国の ファンダメンタルズを考慮すると、長期金利の上昇スピードはやや速 過ぎるかもしれない。

13)①包括緩和:包括緩和策はこれまでのところ投資家のリスク許容 度回復に資したといえるだろう。特にREIT市場には資金が流入し ており、市場全体にとってもセンチメントの改善に寄与している。た だ、市場全体のリスクプレミアムというよりは、特定資産のプレミア ム低下につながっている部分が大きいと見られる。

②金利上昇:日銀は包括緩和策によって長めの金利を低下させる という姿勢を打ち出した。しかし、このスタンスは既に世界的な金利 上昇によって弱められてしまった。物価上昇なき金利上昇は経済活動 を抑制する要因となる可能性が高い。日銀に対して今後もデフレ脱却 への向けた要請が強まる可能性はあろう。その場合、これまで日銀が 回避し続けてきた国債買い取り額の増額の是非を問う可能性がある。

③基金拡大:日銀が基金を拡大するタイミング(条件)は、内外 の経済環境を判断しながらの決定となるため一概には考えづらい。現 時点で予想するとすれば、11年1-3月の間には、欧州の動向や米国 の雇用情勢を見た上で拡充機運が高まる場面があるかもしれない。そ の時、増額の対象となる資産は国債になる可能性もあろう。わが国の 場合、REIT、社債等の市場は規模が小さく、参加者も限られる。

今後、基金の拡大が議論されるとき、その目的はリスクプレミア ムの縮小ではなく、金利の低下にある。ということは、より広範囲に 金利低下のシグナルを示し得る国債が買いとし拡大の対象となること も想定される。

④成長基盤:成長基盤強化のための資金供給拡大は、一種のデフ レ脱却を目指した措置ではあるものの、基本的に中央銀行が行うべき 範ちゅうを越える部分もある。日銀としては可能な限り供給枠の拡大 をしたくはないはずだ。ただ、経済・金融状況によっては、日銀が実 施に追い込まれる可能性を完全の払しょくすることはできない。

●野村証券の松沢中チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2012年10月に0.1%へ(同) 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)景気は米国の製造業活動や小売販売を中心に改善が見え、総じて 横ばい、ないし改善方向へ。近い将来、出遅れている雇用にも波及す る可能性は高い。日本でも先行的に動く生産計画や景気ウオッチャー 調査には底入れ感が見えるが、短観ではまだ企業が先行きに対し悪化 の方向で見るなど、総じて悪化ないし横ばい。

金利上昇のほとんどは過度な金融緩和への期待が消失したことに より発生している。ただし日本では既に短期ゾーンも含めイールドカ ーブ全体が09年12月1日に日銀が臨時会合を開き量的緩和に乗り出 した(3カ月固定金利オペを初めて開始)前の水準に戻った。つまり 量的緩和効果を否定する水準へ戻っており、これは緩和打ち止めがま だ市場のコンセンサスとなっていない現状ではやや先走り感が見える。

米国でも2年ゾーンを除きギリシャショック前、すなわちFRB が出口論を転換していた時期の水準へと戻っており、こちらも先走り 感は否めない(ただし筆者は来年央には日米で緩和打ち止めがコンセ ンサスになり、現行水準は肯定されると見ている)。

13)①包括緩和②金利上昇:現在、株高・金利高となっているので、 金利上昇が景気抑制的な水準へ上がっているようには思えないが、09 年12月の量的緩和開始前の水準には戻っており、量的緩和効果が否定 され始めていることは確かであるので、もし日銀が包括緩和を通じて 景気回復を「駄目押し」したいのであれば、少なくとも短期ゾーンの 利回りの上昇圧力は抑えにいくべきだろう。

追加緩和措置は景気回復が日銀シナリオに対し下振れた時なので 尚早だが、オペを潤沢にし、短期ゾーンの利回り安定を促すことは今 すぐできるだろう。

③基金拡大:基金の増額はないと見ているが、そもそも日銀の言 う「長めの金利」とは10年金利ではなく、企業借入が集中する2-3 年ゾーンまでの金利を意味すると思われるので、仮に買い入れ基金を 増額することがあっても、対象はやはり5年以下のゾーンであると思 われるし、むしろリスク資産の上昇を狙いETFの買い入れを増やす のでは。

④銀行の企業貸出に対し資金を付けることは日銀が最も望んでい る政策の方向性だと思うので、ニーズがあるならば基金増額よりも優 先順位は高いのではないか。

●シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年10-12月(同) 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国経済は種々の構造調整圧力を引きずりながらも、循環的には 底打ちし、成長ペースが加速する局面に入っている。経済政策面では ブッシュ減税が延長されるだけでなく、追加的な家計支援策が打ち出 されており、これも景気を押し上げていくと予想される。米国の来年 の成長率は潜在成長率を上回ろう。

ただ、その場合でも需給ギャップの縮小は緩やかなものにとどま り、失業率の明確な低下は想定しにくい。コアインフレはFRBがそ の任務と整合的と考える水準を下回り続けよう。このため景気が循環 的には回復していても、11年中は金融緩和を見直すような状況にはな らないとみられる。

国内景気は7-9月の成長率を押し上げた一時的な要因(エコカ ー補助金終了前の駆け込み需要、たばこ値上げ前の買いだめ)の反動、 そして輸出の足踏みを背景に、10-12月はマイナス成長となることが 確実視される。ただ、自動車販売・生産の減少は年内で一巡する可能 性が高まっている。米中景気が持ち直し、ハイテク部門の調整一巡の 兆しが現れる中、日本の輸出の足踏みも長引かないだろう。

11年に入ってからは、輸出の増加を起点に、国内景気も底堅く推 移すると予想される。短観は足元での景気の足踏みと、企業の先行き に対する慎重な姿勢を示したが、細部においては底堅い内容だった。 米国では今年夏場以降、FRBがインフレ率の低さを問題視し、目先 の景気動向にかかわらず、追加金融緩和を実施する姿勢を明確にした ため、債券相場の経済指標に対する感応度が著しく低下した。

ただ、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で実際に追加緩 和が実施された後は、市場参加者の関心が経済ファンダメンタルズに 回帰し、この間の指標の改善に対する調整が短期間で起こったと理解 できよう。国内では日銀が短期金利(特にGCレポレート)の上昇を 抑制する姿勢を明確にしなかったことが金利上昇に拍車をかけた可能 性がある。

13)①包括緩和:最近の株高、円安、金利高は一義的には米国景気見 通しの改善を反映しており、包括緩和の影響によるものとは考えにく い。ETFやREITについては包括緩和による買い入れがbackstop (防波堤)の役割を果たし、価格を押し上げているとみられるが、こ れも米国景気見通しの改善という外部環境の変化がなければ、上昇幅 はずっと小さかった可能性が高い。

②金利上昇:最近の長期金利上昇はグローバルな現象であり、世 界景気見通しの改善に伴い不可避的に発生するものと位置付けられる。 そのため日銀がそれに直接的に対処する必要は今のところないと思う。 ただ、「長めの金利の低下」を促すという政策目的に照らして、短期金 利の上昇を抑制する姿勢をもっと明確に示すべきだったのではないか。

③基金拡大:タイミングとしては、景気悪化の兆候が強まった場 合、円高ドル安が再燃する場合、長期金利が許容できない上昇をみせ た場合が考えられる。それぞれのケースで対象買い入れ資産は異なる 可能性がある。年限の短い国債の買入れを大幅に増加させるだけでも 金利体系全般の上昇を抑制する効果が期待できるのではないか。

●バークレイズ・キャピタル証券森田長太郎チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年以降(同) 4)10年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)11年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)11年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)12年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国経済が4月以降の踊り場局面を脱し、循環回復過程に入りつ つある。日本は足元では財政刺激策の切れ目と円高で相対的に指標の 下振れ感あるが、年末から年始にかけて先行的な指標は底入れをして こよう。11年の米経済が従来のコンセンサスである「低成長」ではな く「ノーマル」ないし「やや高め」の成長になるとの期待感が、11月 以降の内外の長期金利上昇の一因ではある。

しかし実際には、そういった景況感の変化が生じてくるタイミン グでFRBがQE2に踏み切り、長期金利低下の期待値を強めてしま ったことで、市場のファンダメンタルズの見方の変化に伴う金利上昇 を過度なものにしてしまった面も強い。これは明らかにFRBの過剰 な市場介入がもたらした副作用であり、その余波は今後も完全に収束 することはないかもしれない。

日本では、銀行の米債市場におけるリスクテイクがやや過剰にな っていた分、円債市場もQE2余波を大きく受ける結果となっている。

13)①包括緩和:市場の小さいREITの反応は明らかに包括緩和の 影響だが、それ以外の資産には直接的にそれほど大きな影響があるよ うには思えない。②金利上昇:長期金利上昇を中央銀行の購入によっ て押さえ込むことの弊害は、今回のQE2の結果を見ても明らか。特 に現在のように循環的に景気が回復に向かう可能性が高い時期に、中 央銀行が不用意なアナウンスメントを出すと混乱するリスクもある。

③基金拡大:必要になるタイミングは、これから再開すると思わ れる景気の循環回復が次に勢いを失ってくる時以降。長期国債購入の 増額にウエートを置かざるを得ないだろう。

④成長基盤:成長支援オペは銀行の貸出レートに過度に低下圧力 を加える懸念がある。貸出レートの低下はマクロ経済全体にはプラス ではあるものの、銀行の体力に影響すれば最終的に銀行の自己資本減 少を通じて信用創造能力をかえって弱めるリスクと裏表である。枠の 拡大には日銀もちゅうちょすると思われる。

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