【クレジット市場】積み上がるキャッシュ-ドコモも好機の起債に慎重

日本企業は、手持ちキャッシュが積 み上がり起債環境も改善しているが、事業拡大の投資にはなお慎重な姿 勢がうかがえる。日銀短観で景況感が悪化するなど、先行きの不透明感 が背景にある。

ブルームバーグ・データによる日経平均構成銘柄225社の一株当た り現金・現金同等物は、現在1309円と統計を取り始めた01年以来で最 多。一方、今年の国内普通社債発行額は現時点で9.5兆円と、昨年1年 間の11.4兆円と比べ17%減っている。

国内携帯電話首位のNTTドコモの財務状況にもこうした傾向が 端的に表われている。同社は9月末で5297億円のキャッシュを保有。 このため、来年3月に償還期限を控える10年物社債1630億円も、手元 資金で返済して財務改善を優先する方向だ。

坪内和人最高財務責任者(CFO)はインタビューで起債環境につ いて「出すには絶好の時。金が無いなら借りたい」と述べながらも、目 立った投資案件も見当たらないため、財務上の「余力としては借り換え をしなくても良い」と語った。

実際、社債発行の環境は良好だ。ドイツ証券の村田昭仁クレジット アナリストは11月に、電話取材に対して、日銀の金融緩和を機に社債 市場は「信じられないくらい強い」と述べ、「指数上で見れば、2005 年 半ばと並んでスプレッドは史上最低水準ではないか」と指摘した。

起債環境

朝日ライフアセットマネジメントの中谷吉宏シニアファンドマネ ジャーは、仮にドコモが起債した場合の条件は「流動性を考える10 年 物国債に5-10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度の上乗せだろ う」と語る。10年物国債利回りは、10月から11月にかけ1%を割り込 んだ。その後上昇して15日に1.295%となったものの、過去7年間で見 れば依然として低水準だ。

来年3月に償還を迎える予定のドコモの社債2本の表面金利は

1.49%と 1.43%。中谷氏は、ドコモが現在の低金利環境で起債しない のはチャンスを逃すと「考えることはできる」と指摘。今後金利が上昇 して『あの時借りておけば良かった』というふうになるかもしれない」 とも語る。

15日のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では、ド コモの5年物が前日比0.2bp低下して28.2bpとなった。

資金需要の冷え込み

日銀が8日発表した11月の銀行貸出平均残高は前年同月比2.1%減 と12カ月連続のマイナス。「ゼロ金利」や社債買い取りなどの包括的な 金融緩和策にもかかわらず、企業側の資金需要が冷え込んだままである ことを示した。

内閣府の外郭団体である経済企画協会が8日発表した民間エコノ ミストを対象とする月次予測調査によると、10-12月期の実質成長率 (前期比年率)は平均でマイナス1.9%の見込み。エコカー購入補助制 度終了前の駆け込み需要などでプラス3.9%となった7-9月期から、 大幅なダウンが予想されている。

さらに、15日発表の企業短期経済観測調査(短観、12月調査)に よると、大企業・製造業の業況判断指数(DI)は7四半期ぶりに悪化 した半面、大企業の資金繰り判断はプラス15と変化なし。大企業が先 行き不透明感を背景に調達を手控えている姿勢を浮き彫りにした。

16日午前の東京外国為替市場のドルの対円相場は、米景気回復期待 を背景に1ドル=84円台前半を維持し、底堅い展開。前日の海外市場で は一時84円51銭と、9月24日以来のドル高値を更新していた。5年 物と物価連動物の国債の利回り格差で、インフレやデフレの進行度の指 標とされるブレークイーブンレートは16日午前にマイナス0.708%と、 マイナス幅は前日比0.6bp縮小した。

ブルームバーグ・データによると、日本企業による海外でのM&A (企業の合併・買収)投資は、国内の成長鈍化や円高を背景として回復 基調にある。今年の投資額は現時点までで271億ドル(2兆2900億円) と、前年の229億ドルを超えた。ただリーマン・ショックが秋に発生し た08年の実績は738億ドルに比べると水準は低い。

「目利き」

ドコモの親会社であるNTTも7月に南アフリカ共和国のIT(情 報技術)システム構築大手ディメンション・データ・ホールディングス を最大21.2億ポンド(当時2860億円)で買収すると発表、13日に完全 子会社化の手続きを完了させた。

しかし、ドコモには海外投資で手痛い過去がある。2000-01年に携 帯インターネット「iモード」展開などで計1兆9000億円を投資した が、ITバブル崩壊で計1兆5000億円を損失処理した。

坪内氏は「円高も影響し、海外投資がものすごく魅力的に映る」と 認めるものの、経営者は「目利き」になる必要があると強調。資金調達が 容易になりバブル的な様相を呈すれば「従来は『そんなばかな』と思っ ていたものを『良い話かも』と考える傾向がある」と慎重な姿勢を崩し ていない。

--取材協力:Yusuke Miyazawa Keiko Ujikane 近藤雅岐、三浦和美 Editors: Tetsuki Murotani, Kenzo Taniai

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Kazuto Tsubouchi

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