【コラム】ハーバードMBAは不要、日本再生案教えます-Wペセック

ふむふむ、貴殿は世界的な起業家 で、どこで商売をしようかと考えておられる。では、法人税が17% と約36%の場所があるとすれば、どちらを選びますかね-。

米ハーバード大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得して いなくても、法人税40.7%の日本で事業を行うより、16.5%の香港 と17%のシンガポールで起業したほうが良いという結論は導き出せ るだろう。

最近、菅直人首相は2011年度の税制改正で法人税について国税 と地方税を合わせた実効税率の5ポイント引き下げを決断した。これ は、方向としては正しいのに、日本が落ちこぼれになりつつある理由 を示す貴重な展開だ。日本の法人税が35.7%に下がったところで依 然として、英国の28%や中国の25%を大きく上回るからだ。

デフレに苦しむ日本は、ここ数年、投資家のレーダーの視界から 外れつつあるが、今年はそうした動きに拍車が掛かったのが目を引い た。最近、ロンドンやニューヨーク、シンガポールを旅したが、日本 はほとんどレーダーの視界に戻ってきていない。

以下、11年に日本が没落に歯止めをかけるための5つの提案を示 す。

減税

提案1:減税。現在の世界の環境を考えれば、増税は経済分野に おける自殺行為だろう。それなのに日本の政界ではしばしば時間を割 いて論じられている。巨額の赤字を背景に消費税増税論議に多くのエ ネルギーが注がれているが、その増税によって予想される状況の悪化 についてはほとんど検討されていない。

日本は福祉を拡充し、消費のてこ入れが必要だ。既に重い税にあ えぐ一般世帯に対する消費税増税は自殺行為だ。1990年代後半に機 能しなかったことは、今も機能しないだろう。

なすべきことは減税であり、菅首相による税率引き下げでは不十 分だ。大掛かりな減税とは言いがたい。日本は、新たな経済の活力と 雇用の創出に向けて中小企業のてこ入れを図る必要がある。減税によ る歳入減は、無駄な公共事業を止めることで補填(ほてん)できるだ ろう。

提案2:通商政策に真剣になろう。韓国は苦労して米国との自由 貿易協定(FTA)交渉で合意に達したことを声高に宣言している。 なぜ日本も同じことができないのか。日本は複雑な農業問題から対処 し始めなければならないだろう。農業には政府から手厚い補助金が振 る舞われ、国内総生産(GDP)に占めるわずかなシェア以上に政治 的な配慮がなされている。

英語を話そう

円高が問題なのではなく、効率の悪い国内産業の保護政策が問題 なのだ。菅首相率いる民主党は少数の利益団体だけでなく、1億 2600万人の残りの日本国民のことを考える必要がある。中国の時代 を迎えている今、選択の余地はない。グローバリゼーションに抵抗す るという勝利のない戦いを続けるか、それともより自由な貿易によっ てもたらされる恩恵を享受することを選ぶのか。

提案3:もっと英語を話そう。日本企業の中で最も革新的な2社、 ファーストリテイリングと楽天が英語の社内公用語化を進めているこ とは偶然ではない。日本では人口が減少する一方、円高により企業の 海外企業買収力は高まっている。国際的なコミュニケーション能力の 向上は極めて重要だ。

それはまた、才能ある人材獲得にもつながる。ヘッジファンド向 けアドバイザーやエコノミストらに東京に集まらない理由を聞いてみ るといい。ほぼ確実に言葉の問題が出てくる。ピークを打った経済に とっては、ハーバード大MBA取得者など優れた人材にとって一段と 住み心地の良い場所であることが極めて重要だ。世界が変わりつつあ る場合、流れに便乗しようと思うなら、国際語を話すことが最善の方 法なのだ。

高齢者の活用

提案4:高齢者を活用しよう。最近沖縄を訪ねた際、出会った60 歳以上の高齢者全てが有給で雇用されていたことは興味深かった。

日本は、経済成長に貢献できる定年退職した熟練技術者や女性の 人口の厚みという面では、「黒字」状態だ。しかし、そのどちらも十 分には活用していない。出生率が低下し高齢化が進む国は、持てるも のを全て活用する必要がある。

提案5:移民事情に精通しよう。アジアの成長の恩恵に授かろう とするなら、移民に関する法規制の緩和が当然の方策だ。日本の総人 口に占める外国人の割合は09年の時点で1.7%にすぎない。経済協 力開発機構(OECD)の統計によると、08年時点でのオーストラ リアの25%、米国の14%をはかるに下回っている。

来年は行動の年

米国も病を抱えているが、日本よりも起業家精神にあふれ、その 生産性の向上は誇れる。オーストラリアは先進国の中で世界的な危機 を回避した数少ない国の一つだ。両国とも、多様性に富み、活気があ り、柔軟性の高い労働力が経済に貢献している。

菅首相は、外国人の熟練労働者を20年までに現在の2倍に増や したい意向だ。日本は、ハーバード大卒といったエリートだけを集め るのではなく、もっと踏み込んだ措置が必要だ。多くの低賃金労働者 も歓迎すべきだ。それは、今回の法人減税計画と同様、日本は進化し つつあると示すことにつながる。ただ問題なのは、その動きがあまり に遅々としておりさほど効果がないことだ。

さあ、今こそ変化のペースを加速させるときで、来年はまさにそ れを実行する年だ。(ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコ ラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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