成長実現へ法人実効税率を5%下げ-税制大綱を閣議決定

政府は16日夕の臨時閣議で2011 年度税制改正大綱を決定した。菅直人首相が掲げる「新成長戦略」に 基づいて12年ぶりに法人税を引き下げるなど、デフレ脱却に向けた経 済成長や雇用拡大を重視した企業減税がずらりと並ぶ内容。一方で、

1.5兆円(国税分)に上る大幅な税収減を補てんする財源確保は先送 りにしたまま決着した。

菅首相は実効税率が約40%と世界的にも高水準にある法人税に ついて「景気を引き上げ、成長を促し、デフレを脱却する方向に積極 的に使ってもらいたい」とし、5%引き下げを決断。国税の法人税の 税率(30%)は25.5%に下がる。これに併せて中小企業に適用されて いる法人税の軽減税率(18%)も3%引き下げることから、計約1兆 4200億円の減収になる。

大綱には法人税引き下げについて「デフレから脱却し、日本経済 を本格的な成長軌道に乗せていくため、国内企業の国際競争力強化と 外資系企業の立地を促進し、雇用と国内投資を拡大する必要がある」 と明記。法人税に関してはデフレ脱却と雇用拡大を最優先し、減税分 の見合い財源を確保する「ペイ・アズ・ユー・ゴー」原則を事実上撤 回した経緯を説明した。

菅首相は同日の税調会合で「20年間も日本の成長が止まり、社会 の低迷が続いているなか、雇用と成長に力を入れて議論をいただいた。 単に法人税を下げるのではなく、そのお金で雇用を拡大し、給料を上 げ、国内投資をするということを企業に理解していただきたい」とあ いさつした。

企業関連では新成長戦略実現に向けて首相が指示した雇用促進税 も導入する。雇用者数が一定以上増えた企業に対し、法人税を減税す る内容で減税規模は約350億円。このほか、グリーン投資減税(約250 億円)などを含め総額1兆5000億円の企業減税となる。一方で、欠損 金繰越制度の見直しなど課税ベースの拡大によって6500億円の増税 となり、実質8500億円の減税となる。

証券優遇税制は13年末の廃止明記

11年末に期限を迎える証券優遇税制については、「景気回復に万 全を期すため」株式譲渡益と配当にかかる軽減税率(10%)を13年末 まで2年延長する。14年1月から本則20%に戻すとともに、小口の個 人投資家向けの少額株式投資の非課税制度(日本版ISA)を導入。 大綱では「経済金融情勢が急変しない限り確実に実施する」とし、13 年末での廃止を強調している。これに伴い、14年度以降、平年度ベー スで約1300億円の増収が見込まれる。

また、来年10月からは二酸化炭素(CO2)排出抑制のために活 用する地球温暖化対策税(環境税)を導入。CO2排出量に応じて化 石燃料に課す石油・石炭税を引き上げ、その増税分を充てる。激変緩 和措置として15年度までに3段階に分けて引き上げ、約2400億円の 増収を見込んでいる。最終的な増税幅はそれぞれ原油・石油製品が1 キロリットル当たり760円、液化石油ガス(LPG)が1トン当たり 780円、石炭が1トン当たり670円となる。

減収の穴埋めに5000億円必要

来年度の税制改正では相続税や所得税など個人への増税も相次ぐ。 相続税は最高税率を現行の50%から55%に引き上げるなど税率構造 に併せて基礎控除も見直し、2900億円の増税となる。所得税の給与所 得控除と成年扶養控除の縮小によって確保する2000億円の増収分は、 子ども手当の上積みに必要な財源(約2400億円)に充てる方針。配偶 者控除の見直しは見送った。

五十嵐文彦財務副大臣は、企業減税に伴う税収の穴埋めに約4000 億-5000億円が必要になるとし、特別会計の積立金などのいわゆる埋 蔵金や歳出削減などによって財源を「かき集める」必要性を指摘して いる。

野田佳彦財務相は16日夕の臨時閣議後の記者会見で「『ペイ・ア ズ・ユー・ゴ―』原則に沿った財源確保は十分ではなかった」とする 一方で、「デフレ脱却に向けて成長を促し、雇用と需要の拡大につな がるような税制改正を念頭に思い切った対応をした」と理解を求めた。 その上で、歳出71兆円と国債発行44兆円の大枠堅持のために財源確 保に努める考えを強調した。

また、大綱では消費税率引き上げを向けた税制の抜本改革につい て11年半ばまでに成案を得るため、早急に具体的内容について検討を 行うとしている。これに対し、野田財務相は「来年は必ず税制の抜本 改革をやらなければならない」と述べ、消費税増税を含めた見直しに 含みを持たせた。

--取材協力 広川高史 Editor:Hitoshi Ozawa, Norihiko Kosaka

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