【クレジット市場】恩恵はマツダよりルノーか-日銀の資産買い入れ

日本銀行による社債買い入れの恩恵 が国内債以上に円建て外債(サムライ債)などに表れている。サムライ 債のスプレッド(金利上乗せ幅)が相対的に大幅に縮小し発行企業のコ ストが低下した一方、投資家にとってはなお国内債より高い利回りが見 込めるためだ。

社債市場では日銀の10月5日の資産取得構想の発表を受け各種債 券のスプレッドは低下。しかし、14日時点での一般事業会社債の平均+ 28bpに対し、サムライ債平均は償還日の近い国債+89ベーシスポイン ト(1bp=0.01%)。例えば仏自動車ルノー債は急低下したにも関わら ずスプレッドは212bpと絶対水準が高い。

日銀の資産買い取りは12月3日から始まった。追加金融緩和策の 一環で、BBB級の低格付け債にまで対象を広げて金融機関からリスク 資産である社債を買い取り、民間銀行などにその分の新たな資金供給余 力を作りだす狙いがある。今回、サムライ債を発行する外国企業や投資 家はこうした直接の趣旨とは別の部分で恩恵を受けることになった。

約700億円の資産を運用する朝日ライフアセットマネジメントの中 谷吉宏シニアファンドマネージャーは、「日本の社債はもともとスプレ ッドにタイト化の余地がないのにさらにタイト化し、魅力が非常に薄れ た」と指摘。運用資産の一部を国内債からサムライ債に入れ替えたこと を明らかにした。

一方、UBS証券の後藤文人クレジット調査部長は7日付のリポー トで、「サムライ債などは国内普通社債に比べてスプレッドが依然とし て相対的に厚く、関心を示す投資家が増えている」とみている。

ルノー、日産、マツダ

10月5日以降のスプレッド縮小幅を自動車各社で比較すると、格付 投資情報センター(R&I)がA‐に格付けしている2013年4月満期 の日産自動車債のスプレッドは6bp縮小して22bpに、R&IがBBB としている2012年9月満期のマツダ債は21bp縮小して34bpとなった。

これに対し、BBB+の13年1月満期ルノー債のスプレッドは60bp と大幅に縮小。それにも関わらずスプレッド水準は212bpと日産自の10 倍もある。ルノーは12月に年限2年・利率1.95%のサムライ債450億円 の発行を決めている。

日本の社債市場では、スプレッド縮小と世界最低水準の金利を背景 に資金調達コストは低減した。投資家の取得意欲も含めた起債環境の好 転を背景に、英国のロイズ・ティーエスビー・バンクや韓国のハナ銀行 なども初の発行に踏み切り、サムライ債市場では10月5日以降に9銘 柄16本が発行された。ただサムライ債は日銀の買い取り対象外だ。

国内債に比べ高利回りのサムライ債への需要は強く、ドイツ銀行は 発行予定額の500億円を大幅に上回る800億円を集めた。10年の公募サ ムライ債の発行総額は15日までに1兆7400億円に膨らみ、前年同期比 34%増となっている。さらに韓国の地方銀行である釜山銀行やパナマ共 和国も起債を準備している。ドイツ銀やプサン銀は高格付けだ。

BBB格級の国内債も起債が増加

利回りを追い求める投資家の行動は、サムライ債だけにとどまらず 今回初めて買い入れ対象に含まれたBBB格にも波及している。10月5 日以降、国内格付け機関からBBB格級の格付けを取得した起債(転換 社債を除く)は、15本(13銘柄)と前年同期の7本(6銘柄)に比べ 倍増した。

東芝は低金利で需要が強いなど、マーケット環境が良いことから、 借入金とCP(コマーシャル・ペーパー)の借り換え資金を調達したほ か、トピー工業は07年7月以来、約3年5カ月ぶり、大王製紙は同年 4月以来、3年8か月ぶりに起債を果たした。さらに月内には関西アー バン銀行や紀陽銀行など同格付けの企業の起債が控えている。

残存期間5年の国債と物価連動国債の利回り格差でインフレ・デフ レの指標とされるブレークイーブンレートは15日、マイナス0.66%と なり前日比3.3bpマイナス幅を縮小した。10月5日からは29bpマイナ ス幅が縮小した。一方、10年債国債の利回りは約7年ぶりの低水準とな った10月6日の0.82%を底に上昇し、現在1.255%となっている。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE