短観:大企業製造業の景況感は7期ぶり悪化、予想は上回る

日本銀行が全国の企業1万社以上 を対象に行った企業短期経済観測調査(短観、12月調査)は、円高や エコカー補助金制度の終了による駆け込み需要の反動などを受けて、 大企業の景況感がリーマンショックで景気が大きく落ち込んだ2009 年3月調査以来7期ぶりに悪化した。

15日発表された短観で、景気が「良い」と答えた企業の割合から 「悪い」と答えた割合を引いた業況判断指数(DI)は、大企業・製 造業がプラス5と9月の前回調査から3ポイント悪化。大企業・非製 造業はプラス1と1ポイント悪化した。いずれも予想調査(それぞれ プラス3、0)は上回った。先行きは大企業・製造業がマイナス2、 大企業・非製造業はマイナス1と悪化が続く見込み。

7-9月の実質国内総生産(GDP)2次速報は前期比年率4.5% 増と1次速報から上方修正されたが、10-12月は政策効果はく落や輸 出鈍化によりマイナス成長に陥るとみられており、為替相場など市場 環境次第で日銀が追加緩和に踏み切るとの見方が根強い。

大企業・製造業の業況判断DIは前回調査の先行きがマイナス1 と大幅悪化を見込んでいたが、マネックス証券の村上尚己チーフエコ ノミストは、実際には企業が警戒していたほど景況感は悪化していな いと指摘。駆け込み需要の反動で自動車はプラス21と11ポイント悪 化したが、鉄鋼はマイナス13と3ポイント、金属製品がプラス6と 10ポイント改善するなど、「全体の悪化は限定」的だったとみる。

10年度設備投資計画

2010年度の大企業・全産業の設備投資計画は前年度比2.9%増と 前回調査(2.4%増)から小幅上方修正された。中小企業の業況判断 DIは、製造業がマイナス12と2ポイント改善、非製造業はマイナス 22と1ポイント悪化した。3カ月先の見通しはそれぞれマイナス23、 マイナス29と悪化を見込んでいる。

10年度の想定為替レートは通期1ドル=86.47円、上期89.16円、 下期83.87円。回答期間は11月11日-12月14日。調査対象企業は 1万1183社で回答率は98.9%。午前11時現在、円相場は1ドル=83 円台後半と、短観発表前とほぼ変わらない水準で推移。日経平均株価 も反応薄で、午前終値は前日終値比3円81銭安の1万312円96銭。

足元の業況判断DIの悪化は限定的だったが、大企業・製造業の 業況判断DIの先行きが大幅な悪化するなど、先行き不透明感は消え ていない。村上氏は「円高や海外経済への警戒は根強く、製造業は依 然慎重」という。日銀の小早川周司経済統計課長によると、先行き悪 化したのは大企業で21業種、中小企業で25業種あり、「前回調査に続 き過半の業種が先行きを慎重に見ている様子がうかがえる」という。

厳しい雇用情勢

雇用情勢も引き続き厳しいことが示された。2010年度の新卒採用 計画は大企業が前年度比31.1%減と1994年度(同32.0%減)以来の 大幅な減少となった。三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニ アエコノミストは「失業率の高止まり状況はしばらく続きそうな気配 だ」と指摘する。

日銀は10月5日の金融政策決定会合で、コマーシャルペーパー (CP)や指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J- REIT)などリスク性資産を購入する5兆円の基金創設など包括的 な金融緩和策を発表した。一方、11月3日の米連邦公開市場委員会(F OMC)は6000億ドルの国債購入を決定した。

日米の金融緩和以降、円高は一服、株価は堅調に推移しており、 日銀の追加緩和観測は目先やや後退している。15日午前の債券相場は 前日の米国市場で米債相場が急落した流れを引き継ぎ大幅反落。長期 金利の指標である新発10年物の312回債利回りは一時1.295%と約7 カ月ぶりの水準に上昇した。

根強い追加緩和期待も

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「短観の 内容は、粘り強く金融緩和を続けていくという現在日銀が掲げている 方針を補強する材料だ」と指摘。「現在の債券市場は日米ともに、需給 面から大きく崩れている」とした上で、短観は「債券市場の不安定な 地合いが改善した後で、債券を買い戻す足場となる材料」とみている。

日銀が遠からず追加緩和に踏み切るとの見方も根強く残っている。 モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミストは 「先行きは政治圧力もあり、リスク資産中心に買い入れプログラムを 漸次拡大しよう」と指摘。「効果や市場規模の観点からETFの買い入 れ拡大の蓋然(がいぜん)性が意外に高い」とみている。

--取材協力 伊藤辰雄、Minh Bui Theresa Barraclough Editor:Hitoshi Ozawa, Norihiko Kosaka

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