内閣府・小野氏:金融政策で雇用増困難-日銀法改正に否定的

菅直人首相のブレーンとして知ら れる、内閣府経済社会総合研究所の小野善康所長は、民主党の一部な どに出ている、日本銀行法を改正し雇用創出も日銀の政策目標にすべ きだとの意見に対し、バブル崩壊以降の長期不況化下では、日銀が金 融政策を通じて雇用に影響を与えることは困難だとし、政府自らが財 政支出を通じ、雇用創出を図ることが現実的だとの見方を示した。

13日にブルームバーグ・ニュースのインタビューで語った。小野 氏は「雇用を増やすために、日銀も政府と一緒に努力すべきという考 えはもちろん正しい」としながらも、「結論から言うと、日銀が雇用に 影響を与えることは、今のような不況では非常に難しい」と述べた。

その理由として、「一時的な不況なら、貨幣量を増やせば利子にも 影響を与えられるし、需要も刺激できる」ものの、現状は、追加資金 を供給しても金融緩和効果が得られない「流動性のわな」や慢性的な 需要不足に陥っており、「日銀の入る余地はない」と指摘。日銀法を改 正し、雇用の最大化や物価目標などを求めることは「実現できないこ とを要求するようなものだ」と述べた。

その上で、「政府が日銀に強制するよりも、政府が雇用を創る方 がより現実的だ」と主張。来年度予算編成で雇用と需要の創出効果が 高い施策を盛り込むことが重要だとの考えを示した。現行の日銀法は 通貨・金融調節の理念として、物価の安定を図ることで国民経済の健 全な発展に資することを明記。一方、米連邦準備制度理事会(FRB) は物価安定だけでなく、雇用の最大化も政策目標に設定している。

民主党有志でつくる議員連盟や海江田万里経財相は、失業率が高 止まりする中、日銀が雇用確保にも責任を持つよう主張。同議員連盟 が3日示した日銀法改正案の大綱試案は政策理念に「雇用の最大化」 や、政府が物価安定目標を定めて日銀に達成を促すことなどを掲げた。

三菱総合研究所のシニアエコノミストで、日銀出身の武田洋子氏 は、「雇用の回復には需要の拡大が一番」とし、「そのためには成長戦 略の実行が重要だ」と指摘。こうした状況では日銀法改正は、「優先順 位が高い問題ではない」と述べた。

モノよりもおカネ

小野氏はデフレの背景について「80年代までは、貨幣量の増加に 比例して物価も上がった。90年代初めのバブル崩壊後は、貨幣量を上 げても下げても物価に影響はしていない」と説明。「モノよりもおカネ を欲しくなり、流動性のわなに陥ったことが総需要不足を生んでいる」 との持論を展開した。

また、1000兆円から2000兆円に及ぶ株や土地など、バブル崩壊 後の金融資産価値の目減りが徐々に回復していた矢先の2008年にリ ーマンショックが発生し、資産価値が再び下がったと指摘。「その状況 で皆お金を握り締めている。物が売れないから雇用が減る。雇用が減 るから雇用不安が起こり、デフレがまた悪化する」と語った。

小野氏は、こうした状況を是正しようとして、数十兆円規模の金 融緩和を実施しても何ら効果もなかったと説明。効果を得るには、喪 失した巨額の金融資産を補填(ほてん)するだけの緩和が必要とした 上で、「それは不可能だ。いまの総発行量ですら100兆円程度なので、 その10倍も増やしたら日銀券の信用が危なくなる」と述べた。

50万人の雇用創出で消費10兆円増

こうした状況を踏まえ、小野氏はデフレ脱却の「処方せんは雇用 を作るしかない」と強調。生活の質改善のために、保育・介護分野で のサービス拡大や、生活を楽しむための社会資本整備、環境規制と補 助金を組み合わせた環境市場の創出などで、官民を問わず政策的に「雇 用を創る」工夫が必要だとの認識を示した。

また、雇用創出効果の試算として、過去の失業率と消費との関係 を基に、「例えば、政府が新たに50万人雇用を創出すれば消費が10 兆円増えても不思議ではない」と述べ、デフレの緩和にも寄与すると 語った。総務省が11月末に発表した10月の完全失業率(季節調整済 み)は5.1%と、前月から0.1ポイント悪化、先行きは高止まりの可 能性も指摘されている。

小野氏はマクロ経済学が専門。10月に現在のポストに就く前は、 大阪大学社会経済研究所の所長を務めていた。菅首相が副総理兼財務 相だった今年2月に経済アドバイザー就任を要請され、内閣府参与に 就いた。

-取材協力:広川高史  Editor: Norihiko Kosaka, Hitoshi Ozawa

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