菅首相、法人税5%下げを決断、財界に雇用拡大を要請(Update3)

菅直人首相が2011年度税制改正の 焦点となっていた法人税について、国税と地方税を合わせた実効税率 (現行約40%)の5%引き下げを決断した。経済界の要望に応じた形 で、14日夜には日本経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長)らと会談 し、国内投資や雇用の拡大を求めた。ただ、仮に5%引き下げても日 本の実効税率は国際的にはなお高く、来年の通常国会や12年度以降の 税制改正論議でさらなる減税を求める声も出てきそうだ。

首相は13日夜、公邸での野田佳彦財務相と玄葉光一郎国家戦略担 当相との会談で法人税の5%引き下げを指示。14日夜には米倉氏、日 本商工会議所の岡村正会頭(東芝相談役)と直接会談。首相は米倉氏 らに「雇用を守り、育て、あるいは経済を成長させるための法人税減 税だ。働く皆さんにも分配されるように経済界として約束してほしい」 と要請した。

この後、米倉氏は官邸で記者団に対し、首相の求める国内投資・ 雇用拡大や労働分配率の引き上げについて「資本主義の中で私1人が 約束はできないが、最大限努力していく」と述べた。

首相の決断を受け、政府は代替財源の確保に向けた調整を進めて いる。仙谷由人官房長官は14日午前の記者会見で、財源について「法 人税5%分の財源を財務省は必ず掘り出してくると私は確信してい る」と述べるにとどめた。

野田佳彦財務相も14日の会見で、「課税ベースの拡大で6500億円 を確保した」としているが、財務省は法人税減税に伴う税収減(国税 分)が1.4兆円から2.1兆円に上ると試算しており、さらなる財源ね ん出が急務になっている。

第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは、法人税減税 が日本経済に与える影響について「法人税を下げるから日本経済がバ ラ色になるとは思えないが、このままだとじわじわと海外に資本が逃 避していく」と指摘。その上で、「まだ財源問題で四苦八苦しているが、 法人税引き下げは道半ばで、さらに下げていく必要がある」と語った。

経済産業省は6月3日に発表した産業構造ビジョン2010で「アジ ア諸国の法人税率引き下げ競争を踏まえ、国際的水準(25-30%)を 目指した法人税率の引き下げ」を求めた。これを受け、同18日に政府 が閣議決定した「新成長戦略」には具体的な税率こそ明記しなかった が、「主要国並み」に段階的に引き下げる方針を打ち出していた。

国際比較

財務省の「法人所得課税の実効税率の国際比較(2010年1月現在)」 によると、日本の東京都の実効税率40.69%で仮に5%引き下げて35% 台になればフランス(33.33%)に近い水準になるが、中国25.00%、 韓国・ソウルの24.20%などに比べなお10%以上高い。

このため、大畠章宏経済産業相は13日夜に発表した談話で、5% 引き下げは「国を開き、世界水準の投資・事業環境を整備するため、 国際的にみて高すぎる法人実効税率を主要国並みに引き下げるための 第一歩である」と指摘。日本経団連の米倉会長も14日、「もっともっ と段階的に落としていくというようなこと。これも税制、財政、それ から社会保障の一体改革という中で今後とも政府に努力してほしい」 と期待感を示した。

野党からもさらなる引き下げを求める声がすでに上がっている。 自民党が10日発表した「税制改正についての基本的考え方」で子ども 手当の停止・縮減などを前提に来年度から20%台に大幅減税すること を求める方針を打ち出している。

これに対し、仙谷氏は会見で、段階的な引き下げについて「その 他の社会保障企業負担分というものを先進国レベルで合わせてどうな るかも含めて考えていかなければならない」と今後も模索していく考 えを示した。

--取材協力:下土井京子、小笹俊一 Editor: Hitoshi Sugimoto, Keiichi Yamamura, Takeshi Awaji

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