パソコン用電池、EV向けで本命狙う-トヨタ・テスラ提携で脚光

電気自動車(EV)に搭載する電池 として、コストが安いパソコン(PC)用リチウムイオン電池が脚光を 浴び始めた。トヨタ自動車やダイムラー、BMWがEV向けの利用に積 極的な姿勢をみせており、EV専用電池との競争が激しくなりそうだ。

米シリコンバレーのEVベンチャー、テスラ・モーターズは、PC 用電池を搭載した電気自動車のパイオニア。高級スポーツ車「ロードス ター」を2年半前に投入。「18650」と呼ばれるパナソニック製のPC用 円筒形リチウムイオン電池6831本から成る電池パックを積んでいる。 車両価格は1280万円で、日本を含め30カ国以上で1400台以上販売し た。

テスラはダイムラーの「スマート」、メルセデス・ベンツの「Aク ラス」の各小型車のEVにも電池パックを供給。BMWも小型車「MI NI」のEVにPC用電池を搭載する。専用電池開発と両にらみのトヨ タが2012年に発売する多目的スポーツ車(SUV)「RAV4」のEV にも採用される予定だ。一方、ゼネラル・モーターズ(GM)や日産自 動車、三菱自動車はEV専用のリチウムイオン電池を研究している。

専用電池は開発や工場に投資が必要。EVは電池のコストが半分を 占める例もある。アドバンストリサーチジャパンの遠藤功治ディレクタ ーは、PC用の転用なら既存工場で生産でき、「規模の経済が働く」と 指摘する。「量産効果でEVの部品総額がガソリン車よりも格段に低く なれば、車両価格も下がる可能性が出てくる」とみる。「PC用電池が 低コストで一定のスペックも維持できるなら専用電池陣営でも採用す ることは大いにあり得る」と話す。

テスラの共同創業者マーチン・エバハード氏によると、車専用電池 の生産コストはキロワット時当たり700-800ドルで、PC用電池は年 間10万台分の生産なら同200ドルで実現できるとみている。PC用電 池に「大きな優位性がある」という。

量産効果

トヨタとダイムラーはすでにテスラへ出資。トヨタの豊田章男社長 は、テスラ製と自社製の両輪で電池を開発すれば顧客の選択肢が広がる と説明する。共同開発した電池パックの販売などで協力関係を深めるた め、パナソニックも11月、テスラに3000万ドル(約24億円)を出資 した。

専用電池を積む三菱自のEV「i-MiEV(アイ・ミーブ)」の 車両価格は398万円(補助金除く)。電池を供給するリチウムエナジー ジャパンの小野勝行社長は4月の取材に、専用電池の価格は約200万円 強と明かした。12 年度には量産効果で100万円ほどに下がる見込みだ という。

日産はNECと組んでEV「リーフ」向けに専用電池を開発。仏ル ノーと合わせて12年までに世界で年間50万台分の電池生産体制を敷く 予定。電池の価格は明らかにしていないが、量産効果でコスト低減を目 指す。

コスト

遠藤氏は「リーフやアイ・ミーブの電池価格は200万円程度とすれ ば、テスラ・パナソニック製はその半額くらいだとしてもおかしくない」 とみている。パナソニックはEV向けなどの需要拡大に備えて新工場 (大阪市住之江区)を建設、4月から小型リチウムイオン電池の生産を 開始し、攻勢を掛ける。傘下で充電池世界最大手の三洋電機の分も合わ せると、将来的に年14億個の電池生産を計画している。

一方、野村証券金融経済研究所の御子柴史郎アナリストは「3、4 年後もPC用電池にコスト優位性があるとは考えにくい」と指摘する。 今は既存の量産設備で対応しているが、台数が増えた場合は設備も「こ れまでの延長線上というわけにはいかないだろう」とみる。専用電池陣 営も新技術で数年後にコスト低減を実現していると考えれば、PC用電 池のコスト優位性は「必ずしも永遠ではない」という。

安全性

PC用電池は安全面でトラブルが起きた過去もある。06年にはソニ ー製リチウムイオン電池の発火問題で、計960万個を回収。07年にはノ キア製携帯用のパナソニック製電池パック4600万個が充電中の異常発 熱でリコール(無料の回収・修理)された。

日産本社ギャラリー(横浜市)を訪れていた顧客の稲葉武信さん (27)。PC向け電池について、「爆発するのではないかという話もある ので、ちょっと不安な感じはする」と漏らした。米経営コンサルティン グ会社、A.T.カーニーの川原英司パートナーは、PC用電池の安全 性は証明されているが、自動車は過酷な条件で走行するため、EV転用 後も性能を維持できるかは「意見の分かれる議論」と指摘する。

テスラ広報担当者の土肥亜都子氏によると、同社製電池パックは電 池1本が発熱しても6831本の電池の周りに冷却用の液体が入った管が 張り巡らされており、発火しない仕組みになっている。電池パックの技 術も特許を取得済み。パナソニック電池部門、エナジー社の広報担当者、 津崎裕二氏も「自動車メーカーは自動車の安全に豊富なノウハウを持っ ており、安全対策は十分擦り合わせをして作り込んでいる」と説明する。

三洋電の予測では、リチウムイオン電池の世界市場は向こう10年 で現在の3倍以上、5兆円規模に伸びる見通し。ブルームバーグ・ニュ ー・エナジー・ファイナンスの予測によると、政府の補助金によってプ ラグインハイブリッド車やEVの販売が伸び、20年には自動車販売全体 の9%を占める見通しだ。

専用電池陣営で世界展開するEVリーフは20日に発売される。D VD(デジタル多用途ディスク)でブルーレイ対HD-DVDという規 格争いが起こったように、EV搭載電池でも、専用電池とPC用電池と がデファクトスタンダード(業界標準)を競うことになるかもしれない。

--共同取材:北村真樹子、山口祐輝、Alan Ohnsman Editor: Tetsuki Murotani, Kenzo Taniai,Hideki Asai

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