【書評】「ブラック・スワン」著者の新著は格言集-挑発的かつ魅力的

ヘッジファンドのトレーダーたち は、なぜ哲学者の王のように見られることを目指すのだろうか。

資産家のジョージ・ソロス氏は「反射理論」を提示し、その先駆け となった。次は、米ニューヨーク大学の教授となり「ブラック・スワ ン」という言葉を生み出したナシーム・ニコラス・タレブ氏だ。

レバノン出身のタレブ氏は著書や広告用の写真でポーズを取る。略 歴では「ほとんどの時間を世界各地のカフェで瞑想(めいそう)して過 ごす怠け者」と自己紹介している。

休暇シーズンを前に、タレブ氏は格言集「プロクルステスのベッ ド」を出版した。この著書には、ルービン元米財務長官や米連邦準備制 度理事会(FRB)のバーナンキ議長などあらゆる分野の人々を軽蔑す るかのような言葉がちりばめられ、挑発的かつ魅力的な詭弁(きべん) 集となっている。

著書の題名はギリシャ神話に登場する残虐な強盗にちなんでいる。 プロクルステスは旅人を誘拐し特別なベッドに無理やり横たわらせる。 人質の背が低過ぎればベッドの大きさに引き伸ばし、高過ぎれば足を切 り取ってしまう。ベッドは状況に順応するよう容赦なく利用される恣意 (しい)的な基準を象徴している。このテーマは、人間が未知や予想外 の出来事にどう対処するかというタレブ氏の最大の関心事に通ずる。

タレブ氏は「ここで描かれる全ての格言はプロクルステスのベッド のような状況に関するものだ」と説明。「われわれ人間は知識の限界や 見たことのないもの、未知のものに直面すると、人生や世界を小さな共 有化された考え方や縮小されたカテゴリー、特定の言葉、あらかじめひ とまとめにされた物語に押し込めることによってその緊張を解決する。 それは時に爆発的な結果をもたらす」と指摘する。

優柔不断と憎悪

そして、われわれは「知らないことにいかに対応するのか、対応す べきか」という問題に関する警句的な本質を導き出す。これは、タレブ 氏が著書「ブラック・スワン」や「まぐれ」で探究したテーマだ。

幾つかの格言でタレブ氏は人間のありようを簡潔明瞭に捉えてい る。「優柔不断さは、わなにかけようとする行為に対する魂の反逆だ」 と--。

少し頑張り過ぎと見受けられるこんな格言もある。「憎悪とは、コ ンピューターコードのどこかでスペルミスをした愛であり、修正可能だ が見つけるのはとても難しい」--。

この部分では、憎悪が何度も登場するモチーフになっている。タレ ブ氏はコンサルタントやエコノミスト、ジャーナリスト、ハーバード大 経営大学院の教授に拒絶反応を示す。このような「道徳的に堕落した職 業」に従事する人々と遭遇したらいつも、汚れを拭うために「清めの 水」を浴びるのだという。(ジェームズ・プレスリー)

(プレスリー氏はブルームバーグ・ニュースの書評家です。この 書評の内容は同氏自身の見解です)

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