トリシェECB総裁はEUに圧力継続、債券購入は時間稼ぎ

欧州中央銀行(ECB)のトリ シェ総裁は各国が財政赤字を削減できるよう時間稼ぎの策を打ち出 す一方で、各国政府に債務危機を収束させる責任を果たすよう引き 続き求めた。

トリシェ総裁は2日に政治家らに対し、「慇懃(いんぎん)な る無視(ビナイン・ネグレクト)」では欧州ソブリン債危機を沈静 化することはできないと警告。その上で市場の動揺を抑えるため、 緊急の流動性措置の解除を延期すると発表するとともにポルトガル とアイルランドの国債を購入するという両面戦略を展開した。

混乱がギリシャやアイルランドからスペインに波及しかねない 情勢となる中、ECBは各国政府に混乱収拾の主導権を取らせたい 考え。トリシェ総裁は2日に一段と強力な措置を打ち出しはしなか ったが、危機が長期化した場合に政府が対策を打たなければ、EC Bが追加措置を講じる必要に迫られる恐れがある。トリシェ総裁は 3日夕方にパリでサルコジ仏大統領と会談しユーロ圏情勢について 話し合う。

メルク・インベストメンツのアクセル・メルク社長は「トリシ ェ総裁は早急かつ簡単に対処できるとは見ていない」と述べ、「E CBが市場への過剰な介入にとても後ろ向きなのは、介入すれば改 革の遂行を求める政策立案者への圧力を取り除くことになるためだ」 と指摘した。

ECBによる2日の債券購入でユーロ圏周辺国の国債相場は全 面高となった。ポルトガルの10年国債利回りは51ベーシスポイン ト(bp、1bp=0.01%)低下し6.12%。アイルランド国債利回 りは38bp低い8.75%。スペインの10年国債利回りは11月30日 にユーロ導入後で最高の5.67%を付けていたが、2日は21bp低下 し5.08%となった。

年内最後の会合

ECBの2日の政策決定委員会は年内最後の会合だった。11月 28日のアイルランド救済決定では市場が沈静化しなかったのを受け、 政治家が危機の拡大阻止に向けた決意や対策を兼ね備えているのか どうかが投資家の間で議論されている。

トリシェ総裁は2日、ECBが市中銀行への期間7日と1カ月、 3カ月の無制限流動性供給を2011年1-3月(第1四半期)まで続 ける方針を示し、ある程度の安心感を与えた。総裁は11月には流動 性供給を絞る方針を示唆しており、これは方針転換と言える。EC Bはこの日の政策委で政策金利を1%に据え置いた。総裁は据え置 き決定後の記者会見で「不確実性は高い」とし、「緊張があり、こ れを考慮しなければならない」と語った。

ただそれでもトリシェ総裁は、債券購入プログラムの増額や拡 大を行うかどうかについて言及を控えた。コメルツ銀行のエコノミ スト、ピーター・ディクソン氏(ロンドン在勤)はECBがより積 極的な措置を見送ったことについて、欧州債務危機は政府による緊 縮財政の受け入れでしか解決されず、流動性供給の拡大は報いを受 ける日を先送りするだけというECBの見解を反映したものだと指 摘。「結局のところ、われわれが直面している問題は中銀ではなく 政府が解決すべきものだ」と語った。

エコノミストの間では、EUの選択肢として7500億ユーロ(約 83兆円)規模のユーロ圏救済基金の増額や、同基金を資産購入プロ グラムに作り変える案、救済の融資金利引き下げ、ユーロ圏16カ国 による共同の債券発行といった案が挙げられている。

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