たばこ増税どこ吹く風の信用力、JTの社債スプレッドが縮小

日本たばこ産業(JT)の社債調達 コストが低下している。10月のたばこ増税後初の起債となった5年債の スプレッド(金利上乗せ幅)は増税による禁煙ブーム到来という逆風を ものともせず、2009年発行の5年債の4割水準にとどまった。国内外で の収益源の多様化戦略などが背景にあるようだ。

3日起債の3本立ての社債は、需要超過で総額800億円と当初予定 から300億円の増額発行となった。5年債は400億円で利率は0.533%、 7年、10年債が各200億円で利率はそれぞれ0.841%、1.3%に決まっ た。スプレッドはともに残存年限が近い国債対比+10ベーシスポイント (1bp=0.01%)。09年の5年債は24bpの1.128%だった。

日本たばこ協会によると、増税に伴う値上げの影響で10月のたば こ販売本数は、前年同月比7割減と駆け込み需要で374億本に膨らんだ 9月の6分の1に落ち込んだ。ただJTでは2011年3月期について国 内たばこ販売本数自体は前期比17%減るものの、他事業も含めた全体の 調整後税抜売上高は同3.8%減の1兆9050億円にとどまると予想する。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大森麻帆クレジットアナリ ストは11月8日付リポートで、JTの国内たばこ事業について「製品 の採算性向上やコスト削減などから一定の利益水準を維持できる」とみ ている。米格付け会社ムーディーズも増税決定の4月時点で、格付け見 通しに影響はないと発表した。

海外売上比率は40%台

DIAMアセットマネジメントの山崎信人ファンドマネージャー は、JTは「国内たばこ事業が苦しくなることは会社側もわかっていた ので、食品の加ト吉を買収したり、海外展開を進めてきた」と指摘。自 身も喫煙家でマイルドセブンを毎日1箱(20本)吸うという山崎氏は、 「今回の禁煙ブームだけでだめになることはない」と断言する。

ブルームバーグ・データによると、07年に英たばこ会社ギャラハー を買収したJTは20%だった06年3月期の海外売上高比率が10年3月 期には43%となった。ギャラハーは中東やロシアで売り上げを伸ばして いる。加ト吉(現・テーブルマーク)は08年に買収した。収益の多様 化を着実に進めている。

ブルームバーグの集計では、JTは紙巻きたばこ製造事業の売上高 (10年3月期)が5兆6764億円と世界1位を確保している。2位は英 インペリアル・タバコ・グループ(10年9月期)、3位は米フィリップ モリスインターナショナル(09年12月期)、4位は英ブリティッシュ・ アメリカン・タバコ(同)。

世界保健機構(WHO)のタバコアトラス2002によれば、日本の 成人男性の喫煙率は53%に上り、米国の26%、英国の27%に比べ突出 している。一方、1箱20本入りの「マールボロ」は日本で440円。英 国では6.31ポンド(約825円)、フランスでは5.60(620円)ユーロ。 厚生労働省は喫煙率低下を狙って引き続き値上げを要請している。

JTでは広報担当の土屋麻穂子氏が3日の起債について「今回の条 件に関しては、コメントを控える」とした上で、「ただ現在低金利なの で、適切なタイミングであり、当社の財務の安定性向上に資すると判断 した」と述べた。

野村証券の算出するNOMURA-BPI(円債パフォーマンス・ インデックス)によると、金融機関を除く一般事業会社の社債の平均ス プレッドは2日時点で国債対比+28bp。前回起債の4割水準まで縮まっ たJTに対して、半分までの低下にとどまっている。

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