ECB:出口戦略を延期、債券購入を継続-総裁「深刻な緊張」を指摘

欧州中央銀行(ECB)のトリ シェ総裁は、危機対応で導入した緊急の流動性措置の解除を遅らせる ことを明らかにするとともに、国債購入は継続中だと述べた。総裁は 2日、政策決定後の記者会見で、市場の「深刻な緊張」状態に対処し ていく意向を表明した。

ソブリン債危機の拡大阻止を求める投資家の圧力が高まる中、ト リシェ総裁は、ECBが市中銀行への無制限流動性供給を2011年1 -3月(第1四半期)いっぱい継続すると明らかにした。期間7日、 1カ月、3カ月の融資は、ECBの政策金利である最低応札金利で、 応 札額全額を供給する。

トリシェ総裁の会見の間にも、ECBは新たに国債購入を実施。 取引について知るトレーダーらによると、ECBは2日にアイルラン ドやポルトガルの国債を購入した。

ECBはこの日、政策金利を過去最低の1%に据え置いた。トリ シェ総裁は記者会見で、「不確実性は高い」とした上で、「緊張があ り、これを考慮しなければならない」と述べた。

ECBは危機対応の新たな措置を打ち出しはしなかったものの、 トリシェ総裁は会見後に国債市場で新たな一斉売りが起こることは回 避した。11月28日のアイルランド救済合意に市場は不信任票を投じ、 国債売りが加速していた。

トリシェ総裁は危機への取り組みを各国政府に求め、「悪意のな い放置」は適切ではないと述べるとともに、スペイン救済の恐れを前 に資金不足が懸念されるユーロ圏救済基金の拡大も可能と考えている ことを示唆した。

「次は政府の番」

ABNアムロのユーロ圏担当チーフエコノミスト、ニック・コー ニス氏は、「ECBはできる限りのことをしている」として、「次は 政府が思い切った行動を取る番だ」と話した。

債券購入プログラムについてトリシェ総裁は、22人の政策委員の 「圧倒的多数」が支持したと述べ、全会一致ではないことを匂わせた。 流動性供給については、現状を維持することが「総意」だと述べた。

トリシェ総裁はさらに、債券購入を継続すると同時に不胎化も続 けると表明し、米連邦準備制度理事会(FRB)やイングランド銀行 (英中銀)の量的緩和と一線を画した。トリシェ総裁は、ECBは供 給した「流動性をすべて引き揚げている。これは、量的緩和ではない」 と強調した。

スプレッド縮小は一時的か

量的緩和への抵抗は債券安を再発させる恐れがあるとの見方もあ る。BNPパリバ(ロンドン)の金利ストラテジスト、マテオ・レゲ スタ氏は、トリシェ総裁が債券購入は量的緩和ではないと強調したこ とで、債券スプレッドの「縮小は一時的にとどまるかもしれない」と 話した。不胎化を続けるためには、購入規模は限られると説明した。

危機がスペインに及ぶ懸念を背景に、ECBに新手の措置を求め る声は根強いが、トリシェ総裁は政府に行動を求める姿勢を示し、救 済基金についてブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、 「このファシリティーはその時々に生じる困難の度合いと一致する必 要がある」と述べた。

出口戦略の延期がトリシェ総裁にとって初めての方向転換ではな い。5月のギリシャ危機の際にはECBの大原則を捨て債券購入開始 に追い込まれた。これについて、当時から政策委員会内には異論があ った。

ECBはスペイン、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルなどユ ーロ圏周縁諸国をこれ以上支えることには慎重にならざるを得ない。 各国政府から救済の道具として依存され、中銀の独立性が損なわれる 恐れがあるためだ。

ウェーバー独連銀総裁

次期総裁の最有力候補でもあるウェーバー・ドイツ連邦銀行総裁 は当初から、債券購入には反対の見解を示している。

ウェーバー総裁はこの日、フランクフルトでのイベントで語り、 トリシェ総裁の発言に追加することはないと述べた。

この日のアイルランド債とポルトガル債は上昇。ロンドン時間午 後5時36分現在、ポルトガル10年債利回りは55ベーシスポイント (bp、1bp=0.01%)低下の6.31%となり、ドイツ債との利回 り格差は334bpに縮小。アイルランド債利回りは38bp低下し

8.75%となった。

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