【コラム】米政府の敵はウィキリークスか言論の自由か-A・ウルナー

ホルダー米司法長官は大量の機 密文書を含む米外交公電を公開した内部告発サイト「ウィキリークス」 に対し、刑事捜査を進めていることを全世界に訴えた。

オバマ米大統領の側近、ホワイトハウスのギブズ報道官はさら に露骨だ。このサイトに関与した人々を「犯罪者」と断定している。

ウィキリークスの創設者、ジュリアン・アサンジ氏を無謀で危 険な人物だと決めつけることは可能だ。外交官同士の国際的なやり取 りを台無しにし、戦時に米国に協力した無実の人々、匿名を条件に命 がけの危険を冒した人々の生命を危険にさらしたということもできる だろう。

だが誰かを犯罪者呼ばわりする前に、その人物が破った法を特 定する必要がある。ホルダー長官にとって、アサンジ氏にどの法律を 適用するか探すのは容易なことではない。

長官は立件の難しさについて記者に聞かれた際、「法律に抜け穴 があるなら、それをふさぐために行動する」と答えた。自信があるな ら、そのようには返答しなかっただろう。

これは基本的に法律に抜け穴があることを認めたものだ。仮に 検察当局がその抜け穴を飛び越えることができたとしても、合衆国憲 法修正第1条、つまり「言論の自由」条項という真に大きなハードル に向き合うことになる。

新法

アサンジ氏を罪に問うため、議会の協力を得て新法を制定した としよう。しかし米憲法は、その時点で合法だった行為については、 法が改正されても事後に有罪にすることを明白に禁じている。

秘密工作員の名前を公表したなどといったまれなケースを除け ば、民間人による機密情報の公開を罰する法律はない。英国には公務 機密法があるが、検察側が裁判で勝つのは容易ではない。米国にもそ うした法律がないわけではない。第一次世界大戦時にできたスパイ法、 1917年の諜報(ちょうほう)活動取締法だ。

次の下院国土安全保障委員会委員長に内定しているピーター・ キング議員(共和、ニューヨーク州)は、この法律を適用してアサン ジ氏を起訴するよう求める書簡をホルダー長官に送った。

だがせいぜいできるのはアサンジ氏が情報漏えいを促し、内部 告発者と共謀したと証明することだけだろう。情報漏えいで陸軍上等 兵が軍法に沿って起訴されたことはある。捜査当局がはっきりした共 謀関係を見いだしたとしても、連邦裁判所での別の判例はこのスパイ 法を民間人に適用する難しさを示している。

外国政府

どのような罪状でアサンジ氏が起訴されたとしても、憲法修正 第1条の問題に突き当たるだろう。言論、特に政治的言論、極めて重 要な公共の問題に関する言論を、どうすれば刑事罰の対象とすること ができるのだろうか。出版の自由、言論の自由を保証する合衆国憲法 を無視する行為に見えるだけだろう。

アサンジ氏を刑務所送りにできるとすれば、最も可能性が高い のは外国政府に代わりを務めてもらうことだろう。米ニュースサイト、 デーリー・ビーストは8月、米国の当局者がこうした考えを英国とオ ーストラリア、ドイツに伝えたと報じた。機密情報リークにより、こ れらの国々の軍隊も悪影響を被ったとの主張だ。

こうした国々には、米国が持つような言論の自由を明白に保証 する憲法条項はない。なるほど、この考えはうまくいくかもしれない。 だがウィキリーク創設者側が、言論の自由と出版の自由を主張したの には根拠がある。情報公開でどのような悪影響が生じたとしても、憲 法修正第1条に抵触せずにそれを修復することはできない。 (アン・ウルナー)

(ウルナー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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