須田日銀委員:11年度の物価マイナス脱却の蓋然性高くない

日本銀行の須田美矢子審議委員は 1日午前、山形市内で講演し、「今後想定される経済の一時的な弱まり が長引くリスクは引き続き高い」と述べるとともに、消費者物価指数 (除く生鮮食品、コアCPI)の前年比について、2011年度中にマイ ナスから脱却できる蓋然(がいぜん)性は高くないとの見方を示した。

須田委員は「来年度にはCPIは10年度基準に切り替わるが、そ れを考慮に入れた場合、その蓋然性はさらに低下する」と述べた。日 銀は10月28日の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、委員の 中心値として11年度のコアCPIは前年比0.1%上昇するとの見通し を示したが、須田委員は「もっと慎重な見方をしている」と述べた。

日銀は10月5日の金融政策決定会合で包括的な金融緩和策を打 ち出し、政策金利を0-0.1%とするとともに、物価の安定が展望でき るまで実質ゼロ金利政策を継続すると表明。さらに、国債、社債、指 数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)な ど金融資産を買い入れる5兆円規模の基金創設を決めた。

「現在は、不確実性が高い経済・金融情勢であるだけに、市場が 安定的とはいえない地合いにあり、市場のリスク許容度も変化しやす い状況にある」と指摘。こうした中で「まだ稼働率が低い上に、最近 の円高の影響や企業や消費者のマインド悪化を考えると、今後想定さ れる経済の一時的な弱まりが長引くリスクは引き続き高い」と述べた。

デフレ脱却に時間かかる

物価については「先行き対外競争の激化が予想される中、企業の 価格設定行動を考えると、物価見通しに対して慎重にならざるを得な い」と言明。「来年度中に消費者物価指数(除く生鮮)の前年比がマイ ナスから脱却できる蓋然性は高くなく、デフレ脱却へ向けての改善に も時間がかかる」と述べた。

一方で、「新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇な どによって、わが国の物価が上振れる可能性がある。実際、足もとで は、国際商品市況が上昇しており、輸入物価を通じた影響を注視する 必要がある」と指摘。「物価に関するリスクとしては、むしろ上振れリ スクを意識している」と語った。

10月5日に決定したリスク性資産の購入については「市場では基 金の規模に注目する向きもあるが、量は本措置の直接の目的ではなく、 あくまで長めの市場金利の低下と各種リスクプレミアムの縮小を狙っ た後に、結果として量が拡大することをあらためて申し上げておきた い」と述べた。

価格下支えを意味しない

さらに、「ここで言うリスクプレミアム縮小への働き掛けは、リス ク資産を大量購入して価格を下支えすることを意味するものではない」 と言明。「日銀がリスクを取って多様な金融資産を購入することにより、 それを呼び水として、市場におけるリスク性金融資産に対する需要・ 供給が増え、すでに潤沢に供給されている資金が経済の活性化のため に有効活用される効果を狙っている」と述べた。

また、リスク性資産購入によるデメリットとして「日銀が市場に 介入し過ぎると価格形成をゆがめる可能性が高まるほか、金融機関の 収益機会を奪うことにもつながりかねない」上、日銀自身も「リスク 性資産の購入により、最終的に損失を被るリスクがある」と指摘。こ うした政策は「財政政策に近い非伝統的な金融政策」であり、「国民の 評価を重視しつつ運営していくしかない」と語った。

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