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【コラム】欧州債務危機、GDP連動型証券で対処を-B・モイニハン

米シティグループの前身、シティ コープの最高経営責任者(CEO)を務めた故ウォルター・リストン 氏の持論は「国家は破産しない」だった。それでも国がデフォルト(債 務不履行)に陥ることはある。1980年代には多くの国がそうなった。 欧州の指導者やバンカーは、この経験から学ぶことがあるかもしれな い。

国が債務返済のために清算手続きを取ることはない。一方で返済 が困難になった債務を再編することはある。これは新興国の一部が数 十年前にデフォルトに陥った際にリストン氏も学んだ通りだ。

それ以降も状況はほとんど変わっていない。先進国の中でも比較 的経済規模の小さい国が、外貨建てで短期資金を借り入れて返済期限 を迎え、新たな貸し手が見つからずに借り換えができなくなる「ロー ルオーバーリスク」は健在だ。

債務を抱える国は、紙幣を印刷して返済に充てることができる。 債務返済を履行しない選択肢もある。その両方も可能だ。例えば2008 年にはアイスランドが外国の預金者への預金保険適用を拒んだ上に、 自国通貨を切り下げた。1998年にはロシア、2001年にはアルゼンチン がデフォルトに陥り、自国通貨を切り下げた。

欧州連合(EU)のソブリン債務危機を受け、市場では新たなデ フォルト懸念が強まっている。国や企業の信用力を取引するクレジッ ト・デフォルト・スワップ(CDS)市場では、アイルランドとポル トガル、スペインの債務保証料が、今年前半のギリシャと同様の水準 にある。

欧州にとっての障害は、債務問題の解決に通貨切り下げを使えな いことだ。各国はユーロ導入時にこの選択肢を放棄した。

見当違いの救済

EUはデフォルト回避に向けて全力を尽くしている。ギリシャが 今年に入りデフォルト寸前の危機に陥ったのを受け、EUはユーロ圏 を守るため、国際通貨基金(IMF)と共同で7500億ユーロ(約83 兆円)の救済基金を設置した。週末に発表されたアイルランド向け支 援パッケージには、同国の資金調達コストの拡大回避に向けた7年間 の緊急融資措置が盛り込まれた。

しかし、このような救済措置は問題を先送りするだけの見当違い の対応といえる。欧州が抱える問題は、過剰な債務だ。元本を圧縮し なければならない。

最良の選択肢は、デフォルトに陥った上で債務を再編することだ。 ロシアもその道をたどった。その結果、国際債券市場への復帰を果た した。アイスランドの債務保証料は現在、ギリシャやアイルランド、 ポルトガル、スペインよりも低い水準にある。

金融「折り紙」

欧州債務危機の解決法には、ほんの少しの金融工学だけで実現可 能なものがある。その名も、金融「折り紙」。株式や債券またはデリバ ティブ(金融派生商品)の性質を併せ持つ新たな証券の組成だ。

具体的には、国債の元本圧縮に向け、債権者に国債のヘアカット (掛け目、担保価額の割引率)を受け入れてもらうため、国内総生産 (GDP)に連動した証券を発行すべきだ。

例えばある国の国債を保有している債権者は、額面1ドルにつき 70セントだけを受け取るヘアカットを受け入れる見返りに、利回りが ドイツ国債と同じ債券と、その国のGDPに応じたクーポンが支払わ れるワラントを受け取ることになる。ワラントは切り離して個別に売 買することもできる。

アルゼンチンの前例

前例はある。アルゼンチンは2005年、デフォルトに陥った債務 950億ドル(約8兆円)を再編する際に、一定の条件を満たすとクー ポンが支払われるGDPワラントを導入した。

GDP連動型のワラントには多くの長所がある。第1に債券保有 者の利益にその国の実情が反映されること。第2は自国の経済情勢に 見合ったクーポンを支払えること。第3は公共サービスや年金基金へ の悪影響をおおむね回避できることだ。

アルゼンチン・モデルの成功は、ワラントの発行後のパフォーマ ンスに表れている。このモデルを、すべてのソブリン債務問題に適用 すべきだ。債権者が投資先をより慎重に吟味するようになるメリット も生まれるだろう。(ブレンダン・モイニハン)

(ブレンダン・モイニハン氏は、ブルームバーグ・ニュースのエ ディターです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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