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金属泥棒が全米の都市機能を脅かす-銅高騰で電線の窃盗急増、悪質化

ミッド・シティー・リサイクリ ングはここ約1年間、ダラス南部にある大通り、サウス・インダストリ アル・ブールバードの酒屋の隣の倉庫で商売をしていた。どこからとも なくやって来て商売を始めたかのようだった。

歩道沿いにはメキシコの国旗が掲げられ、経営者がスペイン語を話 すことが道行く人にも分かる。小型トラックには「高値買い取り」と書 かれていると、ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌29日号は報じて いる。

2009年夏、ダラス警察の金属窃盗捜査チームの覆面捜査員たちが ミッド・シティーを見張っていた。駐車場でセダン型自動車やSUV (スポーツ型多目的車)から捜査員が一人ずつ降りる。捜査員らのシャ ツに取り付けられた隠し撮りカメラがとらえたのは、絶縁電線や周囲を はがされた送電線、天井灯の光をさえぎるほど頭上高く積み上げられた スクラップ金属の山だ。金属は小さな塊に分けて重量を測り、ガラス張 りの窓口の中にいる人物と取引する。

その後、撮影した映像をリチャード・ダウヤー警部補らがチェック した。ある捜査員がカメラのアングルを間違え、使い物にならない映像 を持ち帰った時、ダウヤー警部補は「これは屋根を映した映像としては 最高だ」とつぶやいた。捜査員らは撮影を続けた。同警部補はミッド・ シティーが闇市場として機能していることを証明したかった。証拠がつ かめれば、この犯罪の取り締まりに一歩近づく可能性がある。

他の多くの都市と同様、ダラスも銅の窃盗事件に揺れている。金属 の窃盗事件は銀行強盗や殺人ほど脅威ではないように聞こえるかもしれ ないが、犯罪の規模や頻度によっては、かなり重大な標的、つまり、都 市の中枢神経とも言える機能を果たす配線や配管が中断される恐れがあ る。これはダラスだけに限った問題ではない。

銅高騰

銅市場の活況のおかげで全米の都市が打撃を受け、法執行当局は問 題の規模を理解し対策を立てようと取り組みを急いでいる。

銅は送電線や暖房器具、冷却管、接地線の製造に欠かせない原料 だ。これらは現代の都市の基盤を形成している。電線が盗まれれば道 路は暗闇になる。携帯電話の基地局が狙われれば電話が通じなくな る。変電設備が破壊されれば警察署も含め、あらゆる場所が停電にな る。

ダラス全域では02-07年に金属窃盗事件が約1000%増加し年間 3339件に達した。08年には減少したが約2400件に上った。スパナや 作業手袋、電動のこぎりなどの工具を使って都市からあらゆる金属が盗 まれている。墓地に設置されている金属製の花瓶さえもだ。

金属窃盗事件の捜査を07年春から10年秋の終わりまで統括した ダウヤー警部補は「窃盗犯は固定されていない物なら何でも盗むと言わ れていた。今では固定されている物でも欲しければ盗む」と指摘する。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のCOMEX部門の銅相場 は01年には1ポンド当たり1ドルを下回っていたが、現在では4ドル を超えている。このため、全米各地であらゆる場所から銅が盗まれてい る。

バージニア州東部とノースカロライナ州の17の司法管轄区で過去 3年間に銅窃盗犯の犯行により携帯電話の基地局130カ所が利用できな くなったほか、オハイオ州では空港管制塔から電線が抜き取られ飛行中 の航空機との通信機能が危険にさらされた。アリゾナ州パイナル郡では 灌漑(かんがい)設備が被害に遭い1000万ドル(約8億3500万円)の 損害を出したほか、作物を台無しにした。

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