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アイルランド、主権を悼む-英国王にも独皇帝にも仕えない誇り高き民

アイルランド人は第1次世界大 戦中に、「英国王にもドイツ皇帝にも仕えない」と豪語し独立運動を展 開した。財政・銀行危機がこの誇り高い国民を、まさにその英国とド イツの前にひざまずかせることになった。

アイルランドのカウエン首相は、ドイツや英国を含む諸外国から の救済受け入れにじりじりと近づいている。低税率で繁栄を呼び込ん できた同国の経済運営の自由が脅かされるとともに、国民は救済融資 返済の負担を負っていかなければならない。アイルランド中央銀行は 救済規模を「数百億」ユーロとみている。10年にわたる好況期を通し て与党の座にあったカウエン首相の共和党には、国家の誇りを損なっ たとの批判が浴びせられる。

カウエン首相は「ドイツによる救済と英国からのすずめの涙の同 情」のために独立を捨てたと、アイルランド紙アイリッシュ・タイム ズは18日論じた。野党第一党の統一アイルランド党の財務広報担当、 マイケル・ヌーナン氏は「主権を引き渡した政権与党として共和党は 恥じ入るべきだ」と責めた。

欧州連合(EU)加盟国と国際通貨基金(IMF)の当局者はダ ブリン入りし、アイルランドの銀行の帳簿を精査している。同国政府 は不動産バブル破裂で傷んだ金融サービス業界を支えるだけで最大 500億ユーロ(約5兆7000億円)がかかると概算している。

国営の電力会社を引退した77歳のビル・フェラン氏は「生まれ てこの方アイルランド自由国に生きてきた国民として、主権を引き渡 すことを考えると胸が痛む」として、「わたしがこれまでに積み上げて きたものが足の下で崩壊していくようだ。子供たちの将来を憂う」と 嘆いた。

アイルランドが救済を要請すれば、ドイツが最大額を拠出する基 金から資金を受け取ることになる。オズボーン英財務相は「良き隣人」 として支援への参加に前向きだと述べた。カウエン首相は18日記者 団に語り、アイルランドが「恥や屈辱」を感じる必要はないとし、「主 権が失われるという問題では全くない」と強調した。

大英帝国に対して繰り返し蜂起し、1922年についに自治を勝ち 取ったアイルランドにとって、外部支援をあおぐことはことさらに辛 い。最も激しい蜂起だった第1次大戦中の1916年、共和主義者らは ダブリンのリバティ・ホールに、「英国王にもドイツ皇帝にも仕えない。 ただアイルランドのみ」と記したバナーを掲げた。

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