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【特別寄稿】露呈したユーロの欠陥に対処するための一提案-サピル

【Andre Sapir】

11月18日(ブルームバーグ):欧州単一通貨ユーロは発足から10 年を経た今日、ギリシャ危機によってその設計の紛れもない欠陥が露 呈した。既存のルールはソブリン債務の膨張を防止できず、危機の管 理ないし解決が可能な人間は誰一人いなかった。

欧州連合(EU)首脳は3月、ファンロンパイ大統領(首脳会議 常任議長)に対して、危機解決の枠組みと財政規律の改善に必要な対 策を提案する作業部会(タスクフォース)の創設を要請。法的枠組み を強化するあらゆる選択肢を探るよう求めた。

その数カ月後、ユーロ圏の制度上の問題を是正する2つの対策が 講じられた。欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の設立がその 一つで、苦境に陥ったユーロ圏諸国に金融支援を提供する能力が整備 された。さらにEU行政執行機関の欧州委員会とファンロンパイ大統 領の作業部会が、財政安定成長協定の改革を柱とする財政規律の強化 策を提案した。

この2つはいずれも重要ではあるが、明らかに不備が存在する。 EFSFは暫定的な機関にすぎず、EUの制度的枠組みの外に置かれ ている。また、欧州中央銀行(ECB)と欧州委が望むように財政安 定成長協定の手続きや制裁の自動的な適用が可能となっても、将来の ソブリン債危機を完全に回避するには十分でない可能性が高い。

債務再編を管理

EU首脳は先月になって「恒久的な危機対応メカニズム」の構築 が必要との認識で一致し、状況は一歩前進した。新たなメカニズムは 民間債権者と国際通貨基金(IMF)の関与、債務国に対する「非常 に厳しい」条件を求めるもので、危機の防止と管理および解決の改善 を図る上で、ユーロ圏が必要とする枠組みを一度に提供することがで きるだろう。

新たなメカニズムは、EUが12月に開く首脳会議でその概要が最 終的に決定されることになっており、金融市場では投資家のパニック や混乱が起きている。

わたしが所属するブリューゲル研究所は、欧州の危機解決のメカ ニズムを2本の柱で構成するよう提案する。債務再編手続きを欧州委 と欧州司法裁判所の管轄下に置くというのが最初の柱であり、EFS FをEUの恒久機関とし、金融支援の条件に関する一連の規則の運用 に当たらせるというのが2本目の柱だ。

デフォルトは現実の可能性

そのようなメカニズムの創設は、ユーロ圏でソブリン債の「秩序 立った再編」が行われる現実の可能性を認識させ、危機の防止に寄与 することになろう。必要とされる金融規制改革を併せて実施すること で、ソブリン債の発行体を債権者が選別する能力の向上を促し、市場 規律の強化と財政の持続可能性を高めることにもつながるだろう。

EFSFの恒久化は危機管理にも貢献するとみられる。特に将来 の債務の持続可能性について厳しい条件を付与し、財政難に陥ったユ ーロ圏諸国に恐らくIMFとともに金融支援を実行することが可能に なろう。ECBのビニスマギ理事は最近、支払い不能に陥った諸国の 「債務再編に金融支援を連動させる自動的なメカニズムを容認すべき ではない」と述べているが、わたしも同感だ。

では、ある国が自国の債務が持続不可能だと認識し、メカニズム の発動を要請した場合、それはどのような流れで機能することになる だろうか。

まず欧州委が、債務が持続不可能な状態にあることを認め、欧州 司法裁によって債務再編手続きの開始が決定される。債務再編のメカ ニズムは公式な2国間および多国間債務を除く、ユーロ圏内外のすべ ての債権者に適用され、ユーロ圏で発行されたかどうかにかかわらず、 すべての債務証書が対象となる。

債務国はその後すべての民間債権者と債務再編交渉に入るが、民 間債権者の負担の程度とプライマリーバランス(基礎的財政収支)の 将来の黒字化の道筋などについて、欧州委が当事者に評価を提供し、 債権者の特定多数決による合意が拘束力を持つ。合意が成立した段階 で、財政の持続可能性の実現に必要な経済構造調整に取り組むための 金融支援をEFSFが債務国に提供する。

そのようなメカニズムは発効後の債務だけに適用される新たな条 約の締結を必要とする。しかし、容易に片付く問題であるかのように ごまかすのではなく、事の複雑さの程度と質を詳細に伝えるという点 で、この提案は検討に値するのでないだろうか。 (アンドレ・サピル)

(アンドレ・サピル氏は、ブリュッセルのブリューゲル研究所の 上級研究員です。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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