米インフレ期待の持続に疑問、FOMC前後に金利低下も-市場の見方

米国で高まりつつあるインフレ期 待の持続性について、市場では米景気減速懸念が根強い中では、物価 の先高期待が高まりにくいことから疑問視する声が聞かれている。来 週の連邦公開市場委員会(FOMC)前後にも米国債に資金が流入し て長期金利に低下余地が出てくるとの見方も出ている。

HSBC証券の白石誠司チーフエコノミストは、バブル経済崩壊 後の長期の景気停滞やディスインフレへの期待が維持される限り、米 国の長期金利には恒常的に低下圧力がかかると指摘。その上で、「イン フレ懸念を手掛かりに売られた米国債は絶好の買い場にあり、早晩、 米長期金利は低下トレンドを取り戻す」と予想する。

米10年債利回りは今月8日には2.33%まで低下して、2009年1 月以来の低水準を付けたが、その後はじりじりと水準を切り上げた。 足元ではインフレ期待が高まったことが売り材料となり、27日には40 ベーシスポイント(bp)近くも高い2.73%を付けた。

今週の米国債市場では連邦準備制度理事会(FRB)による国債 購入が消費者物価の上昇を促すとの見方が広がるなど将来のインフレ 懸念が高まった。これを受けて、インフレ期待値を示す米10年債と同 年限のインフレ連動債(TIPS)の利回り格差が、一時は5月半ば 以来の水準まで拡大する場面があった。

しかし、9月の米消費者物価指数(CPI)では、食品とエネル ギーを除いたコア指数は2カ月連続で前月比変わらずで、前年同月比 では0.8%上昇と1961年以来で最少の伸び率となった。HSBC証の 白石氏は、国内総生産(GDP)の7割を占める家計部門でバランス シート調整が続く中で個人消費が盛り上がるとは考えづらく、「コアC PIは10-12月期に前年比上昇幅を縮める」と予想する。

トヨタアセットマネジメントの浜崎優チーフストラテジストは、 米国債市場は追加緩和に伴う金利低下観測と、先行きのインフレ期待 を背景とした金利上昇の思惑が交錯しているとしながらも、「中長期的 なテーマであるインフレを材料とした債券売りは限界的」とみる。

FOMC前後に買い再開か

このため、市場関係者の間では来週2、3日に開催されるFOM C前後のタイミングで、投資家が米国債の積極的な購入を再開すると の見方が強まっている。

2003年と08年に金融緩和後に米長期金利が上昇に転じた経緯も あって、市場ではインフレ期待の台頭に伴う先行きの金利上昇リスク も意識されている。しかし、みずほ証券の三浦哲也チーフマーケット アナリストは、ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)面からデ フレ懸念の後退やインフレ期待の台頭を議論する状況にはなく、結果 的に金融緩和の打ち止め感も生じにくいと話す。

また、これまでの金利上昇局面で持ち高整理が進んだとみられて おり、FOMCでの追加緩和の規模が市場の期待を下回った場合でも 影響は限定されそう。トヨタアセットマネジメントの浜崎氏は、「仮に 金利低下後にFOMCを迎えると材料出尽くしとなりかねないが、事 前に買い持ち高が圧縮されていわゆるガス抜きされたことから、むし ろ息の長い相場を想定してよいのではないか」と言う。

HSBC証の白石氏は、FOMCがどうあれいずれインフレ期待 は後退すると言い、その場合には米10年債利回りは2%に向けて低下 方向に動きだし、一方でこれまで上昇基調を維持してきた米国株相場 や商品相場が下落に転じることも考えられるとみる。

日本の長期金利押し下げも

10月以降に米国の金利上昇の影響を受けていた日本の長期金利 にも押し下げ圧力がかかりそう。FOMC直前の2日には10年利付国 債の入札を控えているため、積極的には動きづらい環境であるとはい え、米長期金利が低下すれば国内市場もこれに追随するとみられてい る。

みずほ証の三浦氏は、米国債市場で過去の金利上昇局面の再現と いった懸念が杞憂に終われば、時間軸効果への信認から短中期ゾーン の低位安定が維持され、10年ゾーンについても利回りスティープ(傾 斜)化の修正の買いで2%に向けて動き出すと言い、「米国と連動性の 高い国内債市場でも金利低下期待が復活する」と読む。

長期金利の指標となる新発10年国債利回りは、今月6、7日の両 日には7年3カ月ぶり低水準となる0.82%を付けた後にじり高に推 移して、28日には一時0.97%まで水準を切り上げた。

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