日銀2つのサプライズ-物価は「願望」、会合前倒しは「FOMC」対

日本銀行が28日開いた金融政策 決定会合で2つのサプライズがあった。1つは、消費者物価指数(除 く生鮮食品、コアCPI)の強気な見通し。もう1つは、11月15、16 日に予定していた次回決定会合の同月4、5日への前倒しだ。金融市 場では、前者は日銀の「願望」で、後者は3日の米連邦公開市場委員 会(FOMC)の結果を見極めるための措置という見方が強い。

日銀は同日公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で2011 年度のコアCPIについて、マイナス転落を予想した市場の見方に反 し、委員の中央値で前年度比0.1%上昇と7月の中間評価の見通しを 維持。12年度も0.6%上昇と民間より高めの見通しを示した。

ブルームバーグが25日にまとめた日銀ウオッチャー15人を対象 とした予測中央値は、11年度が0.2%低下、12年度が0.1%上昇。白 川方明総裁は会合後の会見で、5日に打ち出した包括緩和の効果を「多 くの委員は委員なりに織り込んでいる」と指摘。「われわれは政策当局 者なので、どういうことをやろうとしているかは見通しの前提に入っ ている。1つの違いはその辺にあるのかなと思う」と語った。

伊藤忠商事の丸山義正主任研究員は顧客向けに同日公表したリポ ートで「民間予想に対して強気であり、展望リポートの序文での『不 確実性の高い経済状況』との強調とは大きな隔たりを覚える」と指摘。 その背景について「包括的な金融緩和の効果に対する政策当事者であ る日銀の(過剰な)期待と、CPI上昇率1%の時間軸の早期充足に 対する願望が反映されたためでではないだろうか」とみる。

政府の目標との整合性も

日銀は5日の金融政策決定会合で包括的な金融緩和政策を打ち出 し、政策金利を0-0.1%として物価の安定が展望できる情勢になるま で実質ゼロ金利政策を継続すると表明。さらに、国債、社債、指数連 動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)など金 融資産を買い入れる5兆円規模の基金創設を検討することを決めた。

日銀の物価安定の理解はCPIの前年比で2%以下のプラスで、 委員の大勢は1%が中心。11年度の物価見通しがマイナスに転じれば、 日銀が昨年12月に「ゼロ%以下のマイナスは許容しない」と宣言した ことや、政府が11年度のプラス転化を目標に掲げていることとの整合 性を問われる可能性もあった。

来年夏に5年に1度のCPI基準年改定が行われることを計算に 入れた日銀の深慮遠謀も透けて見える。三井住友アセットマネジメン トの武藤弘明シニアエコノミストは「基準改定で物価見通しがいった んリセットされることを見越し、あえてアグレッシブな数字を打ち出 してきたのかもしれない」と日銀の胸中を忖度(そんたく)する。

時間軸は揺らがない

実際、日銀は展望リポートの注記で、05年から10年への基準年 改定により、CPIの前年比は「下方改定される可能性が高い」と指 摘した。06年夏の前回改定では前年比0.5ポイント程度の下方改定が 行われた。バークレイズ・キャピタル証券の森田京平チーフエコノミ ストは「次回の基準年改定では、押し下げ幅は0.2-0.3ポイント程度 にとどまる」とみるが、それでもマイナス転落は濃厚だ。

武藤氏は「実際に物価安定の理解の中央値である1%程度の上昇 率が見込まれる時期は、今の日銀の想定よりもあと3年程度は後ずれ する可能性が高い」と指摘する。モルガン・スタンレーMUFG証券 の佐藤健裕チーフエコノミストも「今回の強気の日銀予想で市場の時 間軸が大きく揺らぐことはないだろう」とみている。

もう1つのサプライズは決定会合の前倒しだ。白川総裁はその理 由について、ETFとREITの買い入れを「できるだけ早く開始す るためには、買い入れに関する基本要領を会合で決定する必要があり、 そのために当初予定されていた会合でなく、もっと早めることで、少 しでも早く実現したい」と説明した。

前倒しは不測の事態への備え

しかし、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、 こうした説明について「額面通りに受け取る市場関係者はいないだろ う。日程変更の最大の理由が11月2、3日に開催されるFOMCにあ ることは明らかだ」という。FOMCの内容次第では「ドル安円高が 相当に進むリスクもある」ため、「不測の事態に備え、FOMCの翌日 に日銀は決定会合を開くということだろう」と解釈する。

白川総裁は11月4、5日の会合でも通常通り金融政策の議論も行 い、情勢を点検した上で「最も適切な対応を行う」と言明。5兆円の 資産買い入れについて「経済・物価見通しが前の想定に比べ大きく変 わってきたときは増額も有力な選択肢になる」と述べた。第一生命経 済研究所の熊野英生主席エコノミストは「仮にFOMCで円高が急進 すれば、そうした可能性も選択肢の中に入るのだろう」とみている。

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