日銀基金の長期国債買い入れ「特別会計」化も-円高進めば拡大必至か

円高や景気減速、デフレ長期化の 懸念を受けた日本銀行による国債を中心とした資産買い入れは、米金 融緩和で円高・ドル安がさらに進めば増額が避けられないと市場関係 者はみている。基金拡大で長期国債の買い入れ額が膨らめば、日銀が 定める保有額制限ルールを別枠で免れる「特別会計」的な存在感が強 まっていくとの見方が出ている。

RBS証券の西岡純子チーフエコノミストは、米連邦準備制度理 事会(FRB)が11月3日に大規模な量的緩和に踏み切れば、円高・ ドル安が一段と進む可能性があると指摘。日銀は「追加緩和策として 5兆円規模の基金を段階的に拡大せざるを得ないだろう」と予想する。

日銀が基金で購入する長期国債は、保有資産の一部とはなるもの の、政府の財政規律に対する市場からの信認を保つために長期国債の 保有額を銀行券(お札)の発行残高以下に抑える「銀行券ルール」の 対象外。RBS証券の西岡氏は、円高が進めば日銀が基金を拡大し、 「長期国債の買い入れ増額と償還までの残存期間の長期化」を進めて いくとみる。

バークレイズ銀行の山本雅文チーフFXストラテジストは、基金 を通じた長期国債買い入れは政府の一般会計に対する特別会計のよう に別枠なので「自ら定めた銀行券ルールは守りながら、政府・与党か らの買い入れ増額要望に事実上応えていく格好だ」と指摘する。米金 融緩和を受けた円高・ドル安進行に対し基金を拡大すれば、「基金で保 有する長期国債の残高が膨らみ、特別会計的な意義に一段と注目が集 まる」と予想。「国会における日銀法改正の議論を抑える効果もある」 と読む。

白川方明総裁は28日午後、金融政策決定会合後の記者会見で、今 後の基金拡大の可能性について「効果が副作用に勝ると判断し、経済・ 物価の見通しが想定から大きく変わってきた時」には「有力な選択肢」 になると述べた。

銀行券ルール

日銀は5日の金融政策決定会合で、バランスシート上に5兆円規 模の基金を臨時に創設すると決定。28日の決定会合では、長期国債を 1兆5000億円、国庫短期証券は2兆円程度買い入れると決めた。長期 国債は残存期間が1-2年の既発債を対象とした。

2001年3月には、長期国債の保有額を銀行券の発行残高以下に抑 える「銀行券ルール」を自ら設定。米証券リーマン・ブラザーズ・ホ ールディングス破たん後の世界的な金融不安や円高、景気悪化を受け、 CP・社債の買い入れ導入に続き、09年3月に長期国債の買い切り増 額を決定。銀行券ルールの下で、月平均1兆8000億円(年間21兆6000 億円)とした。銀行券の発行残高は10月20日時点で76兆4316億円。 長期国債は56兆1511億円。

白川方明総裁は今月5日の記者会見で「基金による長期国債の買 い入れは、現行の長期国債買い入れとは異なる目的の下で臨時の措置 として行うものだ」と言明した。

円安の前例

日銀は米証券リーマン・ブラザーズ・ホールディングス破たん後 の世界的な金融不安や円高、景気悪化を受け、CP・社債の買い入れ 導入に続き、09年3月に長期国債の買い切り増額を決定。銀行券ルー ルの下で、月平均1兆8000億円(年間21兆6000億円)とした。

円・ドル相場は直後に下落基調に転換。翌4月には1ドル=101 円44銭と5カ月半ぶり安値をつけた。その後はFRBによる米国債購 入を背景としたドル安圧力に押され、7月には91円台まで円高が進ん だ。

円・ドル相場は5月の年初来安値94円99銭から足元まで、ほぼ 一貫して上昇。政府・日銀は9月、6年半ぶりに円売り介入したが、 今月20日には一時80円41銭と1995年4月以来15年半ぶりの高値を 記録。同月の戦後最高値79円75銭に迫った。20カ国・地域(G20) 財務相・中央銀行総裁会議は23日の共同声明で、先進国は「為替レー トの過度の変動と無秩序な動きを監視する」としたが、ドル安が終息 する兆しは見えない。

FRBは11月2、3日の連邦公開市場委員会(FOMC)で大規 模な米国債購入を打ち出すと市場関係者は予想。足元までのドル安基 調をもたらしている。クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノ ミストは、2011年末までに9000億ドル程度とみている。

バークレイズ銀の山本氏は、各国が輸出に有利な「通貨安競争」 を図るなか、「金融政策を通じた通貨安は副作用に過ぎないと説明する ことができるため、国際的な批判を浴びにくい」と述べた。

日銀は28日、次回の決定会合の日程を変更。米FOMC明けの 11月4、5日とした。これを受けて、長期金利の指標とされる新発10 年物国債利回りは低下(価格は上昇)した。三井住友銀行の宇野大介 チーフストラテジストは、日程変更で「FRBとの金融緩和合戦が意 識された」と説明。円高進行などがあれば「追加緩和もあり得るとの 見方が広がった」と述べた。

白川総裁は28日の会見で、日程変更はFOMCを「意識してのこ とではない」と説明した。ただ、日銀は米金融緩和観測が浮上してい た8月10日の決定会合で金融政策の現状維持を決定。FOMCは同日、 償還される保有証券の元本を米国債に再投資する景気浮揚策を打ち出 した。円・ドル相場は翌11日、約8カ月半ぶりに1995年7月以来の 高値を更新した経緯がある。

--取材協力:池田祐美 Editor:Masaru Aoki, Joji Mochida

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