大田元経財相:5%の法人実効税率下げとTPPが菅内閣の試金石

大田弘子元経済財政相は、日本企 業が必要以上に生産拠点を海外に移転することを食い止めるため、政 府の最重要課題として、法人実効税率の5%引き下げと環太平洋戦略 的経済連携協定(TPP)への交渉参加を挙げ、この2つが、日本が 内外に向け成長路線に舵(かじ)を切ったことを示す「試金石になる」 と強調した。

現在、政策研究大学院大学副学長の大田氏は、27日に行ったブル ームバーグ・ニュースのインタビューで、来年度税制改正の焦点の1 つである法人実効税率の引き下げについて「企業には日本の政策が政 権交代以降どちらに行くか不安感がある」と述べた上で、税率の引き 下げ幅は「租税特別措置を縮小して財源が捻出(ねんしゅつ)できる 範囲での引き下げなのか」、または丸々5%なのか「はっきりしない 」と指摘した。

大田氏は、菅直人政権は分配重視の鳩山由紀夫政権から現実路線 に修正しているものの、「本当に国内の成長分野を残し、さらに外か らも引っ張ってくるような成長重視型の経済政策が取られるのかどう かが見えない」と指摘、「その意味で初年度5%の引き下げはメッセ ージとしても重要だ」と語った。同減税の財源については、子ども手 当の支給額見直しなどを含め「マニフェスト(政権公約)の見直しだ」 との考えを示した。

3年以内に主要国並みに

政府は6月に閣議決定した新成長戦略の中で、約40%で高止まり している法人実効税率について、「主要国並みに引き下げる」と明記し た。ただ、何年かけて主要国並みに下げるかは言及していない。大田 氏は、引き下げは「まず初年度5%で、それで終わりでない」と述べ、 主要先進国並みへの引き下げを「3年以内でやるべきだ」と語った。 経済協力開発機構(OECD)加盟国の法人実効税率の平均は約26%。

大田氏は法人税率の引き下げを通じ「企業が必要以上に海外に出 て行くことを食い止めるべきだ」と述べ、国内に成長分野や付加価値 が高い生産工場を残し、日本に「知的創造の拠点を残していくことが 必要だ」と強調。さらに、主要先進国並みの税率引き下げは自民党政 権時の「骨太の方針」に「書きたくても書けなかった」と振り返ると ともに、「これは今の日本経済にとっては突破口であり、書いたこと は実行してもらいたい」と期待を示した。

TPP

一方、菅首相が10月1日の所信表明演説で交渉参加の検討を表明 したTPPについて大田氏は「自民党政権の時は農業が大きなイシュ ー(争点)となるFTA(自由貿易協定)はできなかった」と振り返 った。その上で「過去からのしがらみがあって進まなかったものを新 しい政権で進めてほしい」と述べ、「政府は自ら需要をつくるのでは なく、成長を阻害してきた要因を取り除くことにある」と意義づけた。

TPPは農産物を含むモノの貿易について原則として全品目につ いて即時また段階的に関税を撤廃するほか、サービス貿易や知的財産、 人の移動の自由化も含む包括的な協定。同協定の交渉には、農業大国 でもある米国やオーストラリアなどが参加している。

また大田氏は、TPPに参加する場合、民主党の政権公約の1つ である「農業の戸別所得補償はまだモデル事業の段階なので、今から 180度中身を転換させないといけない」と指摘、「これを関税引き下げ とセットで設計していく必要がある」と語った。TPP交渉に不参加 となった場合、日本経済への「ダメージは極めて大きい」と強調した。

大田氏は2006年9月、安倍晋三政権で民間人閣僚として経済財政 相に就任。翌年9月の福田康夫政権でも再任され、昨年8月の内閣改 造時に退任した。08年1月の通常国会の経済演説では、「残念ながら、 もはや日本は『経済一流』と呼ばれるような状況でなくなった」と述 べ、注目を集めた。

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