メリル吉川氏:70円台なら一段のデフレ調整、日銀は長期国債購入を

メリルリンチ日本証券の吉川雅幸 チーフエコノミストは、円相場が1ドル=70円台に突入した場合、日 本経済は企業の海外移転の加速や国内の雇用削減など「もう一段のデ フレ調整」を余儀なくされるとの見方を示した。円相場を85-90円で 安定させるために日銀は10年、20年の長期国債を20兆-25兆円程度 購入すべきだとの考えを示した。

吉川氏は26日、ブルームバーグ・ニュースのインタビューで、10% 程度の円高は日本の国内総生産(GDP)を0.5-0.6ポイント押し下 げると試算。同社は実質成長率の見通しについて、10年度はプラス

2.0%、11年度はプラス1.6%としている。

吉川氏は日本の製造業の海外移転について、1ドル=90円程度を 前提として「行くべきものは行った」と述べ、同水準からさらに70- 75円台に急伸した場合、「さらなるデフレ調整」が起こる危険性を 指摘。その上で「85円から90円ぐらいで安定化させる政策をとりあ えず取ることが非常に重要」とし、「それがうまくできれば、来年度も 1%半ばぐらいの成長はできる」と語った。

円相場は25日に一時1ドル=80円41銭と、戦後最高値の79円 75銭を記録した1995年4月19日以来の水準まで上昇した。政府・日 銀は9月15日、6年半ぶりのドル買い・円売り介入を実施したが、米 国の追加金融緩和観測を背景にしたドル先安観が根強い。

為替介入は主役でない

吉川氏は円高に歯止めをかけるのは、「為替介入が主役ではない。 金融政策以外はない」と言明。また、先に日銀が決定した国債や社債 などの資産買い入れのための5兆円規模の基金創設の検討について、 マクロ政策からは「評価できる点は少ない」と述べ、「ストライクゾ ーンの球は長期国債の購入だ」と強調した。

同氏は、短期金利はゼロ%に近い状況にあるなか、これ以上、短 期国債などを購入しても効果がないと指摘。一方、長期国債の購入は 「インフレ期待」を起こし、為替相場の円高圧力を止める効果がある と指摘する。ただ、長期国債の購入は「財政ファイナンス」とみなさ れるリスクがあるため、「物価目標の設定と併せて検討するのが筋だ と思う」と述べ、物価目標の設定は「日銀を守る盾になる」との見方 も示した。

円高は個人消費と設備投資に影響

吉川氏は、円高になっても「意外に輸出は落ちない」と述べ、そ の代わりに「個人消費と設備投資が影響を受けやすい」と分析する。 その理由として、10%円高になっても、輸出企業は現地での販売価格 を同程度引き上げない代わりに、採算を合わせるため、国内での出荷 コストを削減すると指摘する。

また、円建て価格の引き下げやコスト削減は大手製造業の売り上 げ減少を招き、残業代やボーナスのカットを通じて「半年ぐらいして 個人消費に効いてくる」と指摘。さらに「設備投資は直接効いてくる。 部品の供給をする中小企業にも波及する」と説明。その上で「円高を 防ぐことが、短期的に来年の景気を見通す上でも重要だ」と述べ、「長 い目でみても、これ以上、空洞化が進まないようにするためにも重要 だ」と強調した。

外需依存型の経済構造に対する批判については、「日本の貿易黒 字はせいぜいGDPの1%程度だ。問題ではない」とし、「ここ10 年は貿易黒字で雇用を維持しているわけではない」と説明。「今ぐら いの輸出を維持すべきだ」と主張した。

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