【コラム】欧州4大銀行に薦める理想的な円満離婚の方策-M・リン

テロやサイバー攻撃、危険なウイ ルス。一部の欧州諸国の安全保障は、これらよりももっと差し迫った 脅威に直面している。巨大銀行が破たんして国家経済を崩壊させると いうリスクだ。

現時点で、各国の規制当局はこの問題でまちまちな対応を取って いる。英国はリテール(小口金融)銀行と投資銀行を分離する可能性 があり、スイスは銀行自己資本比率の最低基準を2倍近くに引き上げ ることを検討している。

当然のことながら、銀行はこれらの提案に抵抗し、そのような措 置は世界の市場での競争力を低下させると主張する。

もっと単純な解決法があるではないか。大き過ぎる銀行にとって も、それらの銀行がとどまるには小さ過ぎる国にとっても公平な解決 策だ。これらの銀行、特に英国のHSBCホールディングスとバーク レイズ、スイスのUBS、クレディ・スイス・グループの4行は、欧 州脱出計画を練り始めるべきだ。協議に基づく円満な離婚の方が、ど ちらの当事者にとっても望ましい。

「大き過ぎてつぶせない」ほど肥大化した銀行の問題について、 政府と金融規制当局が真剣に検討していることは当然であり、疑問の 余地はない。

信用逼迫(ひっぱく)の時期にロイズ・バンキング・グループと ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)が破 たんしかけた結果、英政府は巨額の負担を背負うことになった。スイ ス政府はUBSを救済しなければならなかった。

アイスランドとアイルランド

アイスランドでは金融業界の崩壊のおかげで国が破産寸前となっ た。アイルランドは銀行の行き過ぎの代償をまだ支払っている最中だ。

英国もスイスも、HSBCかクレディ・スイスの破たんがそれぞ れをアイスランドやアイルランドにしかねないことを認識している。 そのような事態を阻止しようとしないなら、政府は無責任と言えよう。 これは冷戦のさなかのソ連と同じほど大きな、国家安全保障への脅威 なのだから。

ではどうすれば良いのか。もちろん、規制の改善が答えの一部で あることは確かだ。しかしながら、銀行が取るかもしれないあらゆる 無茶苦なリスクをすべて発見できると自信を持てるようになるには、 監督当局の能力が非常に強く信頼されるものでなくてはならない。現 実には、銀行の取締役会ですら複雑なデリバティブ(金融派生商品) 契約の中にどれほどの支払い義務が隠れているか、それらがある日ど のように爆発しかねないかを実際は把握していないかもしれない。ま して外部の人間になど知る由もない。

英国案

英国ではオックスフォード大学教授でイングランド銀行(英中央 銀行)元エコノミストのジョン・ビッカース氏が率いる委員会が、リ テール銀行と投資銀行の分離および自己勘定取引の禁止について検討 している。

スイスでは、政府の委員会が大手銀の自己資本を資産の19%以上 とする勧告を行った。これはバーゼル銀行監督委員会が今年示した

10.5%の2倍近い。

いずれの国の提案も、100%妥当なものだ。銀行を分割すればシス テムはより安全になる。リスクの大半は投資銀行側にあるのだから、 分離しておけば投資銀が破たんしても実体経済に影響が及ぶことはな いだろう。

同様に、銀行の資本が厚ければ、その分安全性は高まる。投資で 大損を出しても、穴を埋める十分な資金がそこにある。大惨事という ほどのことではない。

脱出

HSBCとバークレイズは分割されるくらいなら英国から出て行 く可能性を示唆している。銀行も規制当局も、問題を逆から見ている。 問題は銀行が大き過ぎることではない。拠点としている国の経済に比 較して大き過ぎることなのだ。そう考えれば、答えは簡単だ。HSB Cとバークレイズは英国を、UBSとクレディ・スイスはスイスを出 て行けばいい。

自国経済との関係が薄く、行員の大半がそれぞれの国の一般的国 民よりも高い報酬を得ている銀行を支える責任を、英国とスイスの納 税者が負うのはひどい話だ。

一方、銀行が競合他行に対して不利になることを強いられるのも 公平ではない。事業分割を余儀なくされればHSBCとバークレイズ が米シティグループや仏BNPパリバと対等に競争できないことは明 らかだ。ドイツ銀行やJPモルガン・チェースの2倍の自己資本比率 を維持しなければならないのでは、クレディ・スイスが業界の上位の 地位にとどまるのは難しいだろう。何と言っても、資本は銀行業の原 材料だ。自由に使える資本が少なければ、できることも少なくなる。

結婚相談員

別の国に移るのが一番だ。そうすれば、納税者は救済を負担させ られるリスクがなくなるし、銀行は他行と競争できなくなるような規 則から逃れることができる。

規制制度の変更に伴い、銀行が拠点を移すのは異例でも何でもな い。HSBCは既に一度、これをやっている。同行は1993年に香港か らロンドンに本部を移し、イングランド銀の規制の下に入った。

巨大銀行はどこへ行けばいいのだろう。中国あるいは米国は候補 になる。もちろん、米国は「大き過ぎてつぶせない」銀行がこれ以上 増えるのを望まないかもしれない。しかし、雇用と税収をもたらして くれるのは大歓迎だろう。

銀行と各国当局が決めることだが、結婚相談員が言う通り、2人 の関係はときに、お互いのせいで多岐にわたり過ぎてうまくいかなく なることがある。そんな時は、過去にこだわらず前へ進むのがベスト だ。(マシュー・リン)

(リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。こ のコラムの内容は同氏自身の見解です)

-Editors: David Henry, James Greiff

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