【コラム】経済の「有毒カクテル」あおる日本、米の反面教師-ボーム

日本は古い国だ。土地柄が古い と言っているのではない。

スタンフォード長寿センターによると、人口の2割を65歳以上 が占める日本は、高齢化社会という点ではイタリアと並び世界1位だ。 その一方で、日本の平均出生率は現在の人口を維持できる水準である

2.1%を過去40年間下回っている。同時に、日本は平均寿命が82歳 と、世界一の長寿国だ。

このような問題をすべて束ねると、日本が金融業の破たんや産業 の非効率性に対して及び腰であることもあり、有害な組み合わせにな る。労働市場では減少する現役世代が増加する退職世代を支えなけれ ばならないため、景気の減速と生活水準の低下が起きるだろう。

言い換えれば、デフレは日本にとって最悪の問題ではない。それ は、バブル崩壊後20年間の景気停滞を引き起こした原因ではなく、 一つの症状にすぎない。

日経平均株価が3万9000円近くでピークに達した後の20年間 の日本の消費者物価指数(CPI)上昇率は平均でプラス0.5%だっ た。過去10年間のCPI上昇率の平均はマイナス0.3%。どんなに 数字に細かい買い物客でも、こんな大差のない数字は区別できないだ ろう。

避けるべきモデル

米連邦準備制度理事会(FRB)にとって、日本は避けるべきモ デルだ。量的緩和の第2弾を検討するFRBは、日本のデフレが米国 で起きないようにしようと決意を固めている。

米国にはデフレの傾向があるだろうか。住宅バブル崩壊から5年 近く経ち、米国経済がリセッション(景気後退)に陥ってから3年近 く過ぎたが、経済指標にデフレは現れていない。FRBが9.6%の失 業率やリセッション並みの設備稼働率など、経済のたるみ(スラック) を指摘しているほか、信用が収縮しているにもかかわらず、経済全体 で物価下落の兆候は見られない。

デフレが大恐慌の時のような物価のスパイラル的な下降でなく、 緩やかな下落にとどまるのなら、FRBが言うほど悪い事ではない。 日本の消費者に聞いてみると良い。

15日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のコラムで、 ジリアン・テット氏は、日本銀行が行った消費者の物価下落に対する 意識調査の結果を引用した。44%が物価下落を好ましいと回答し、 35%がどちらとも言えないと答え、21%が困ったことだと答えていた。

デフレの利点

高齢者の多い日本では、賃金がほぼ過去10年間を通して低下し ただけに、消費者には現金の価値が上がった方が望ましい。

もちろん、デフレは借金がある人にとっては困る事だ。ただ、日 本は政府が数えきれないほど景気対策を行ったことで公的債務が国内 総生産(GDP)比200%近くに膨らんでいるのにもかかわらず、歴 史的に見て貯蓄する国民が多い国だ。

米国が日本と異なっている点は多い。若い国である米国の文化は、 集団主義志向ではなく個人主義志向だ。米国経済と雇用増加を支える のは産業政策ではなく、起業家精神だ。

米国は国家として、何年も続く低成長に対し、何もせず指をくわ えて見ていることはできない。欧州が苦しんでいるような失業率の高 止まりを、落ち着いて見てはいられない。米国人は、政府に何をして ほしいのかよく分からなくても、政府に「何かする」よう要求する。

もちろん米国にも、高齢化(スタンフォード長寿センターによる と人口の12%が65歳以上)、財政赤字、持続不可能な社会保障制度、 次の選挙までしか考えられない政治家など、いろいろ問題はある。

日本のデフレは過去20年間の景気停滞の「副産物」だ。景気停 滞は、不動産・株式バブルが崩壊し、銀行のバランスシートが壊滅的 な打撃を受け、政府が「死に体」の銀行や企業を支援してきた結果と して起きたことだ。

もしFRBが日本と米国を比較するのなら、デフレの観点とは別 の方法を勧めたい。両国とも明らかにバブル回避の必要性を示してい る。

(キャロリン・ボーム氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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