【コラム】ヘッジファンドの常識はプラザ合意の再現なし-Wペセック

ガイトナー米財務長官は就任時、 まさか元素周期表を調べることが仕事になろうとは思いもしなかった はずだ。

同長官と財務省職員は今後数カ月、元素をめぐる思惑に振り回さ れることになるだろう。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、 中国が17元素の総称であるレアアース(希土類)の対日輸出を停止し た後、米欧向けにも同様の措置を取ったと報じた。これは政治家同様、 投資家にとっても大きな事件だ。

この報道は、中国が今週に入って実施した意表を突く利上げとい うニュースを脇に追いやった。中国の影響力が高まるにつれ、経済協 力という概念が古臭いものになりつつあることを示すものだ。と同時 に、1985年のプラザ合意の再現が、夢物語であることをあらためて浮 き彫りにした。

中国の人民元とレアアースをめぐる政策は先進各国に一つのメッ セージを投げかけている。愚痴るのをやめて、政策を変更しろという ことだ。

ヘッジファンドマネジャーは、主要20カ国・地域(G20)の間で 元高に向けた合意がなされる可能性がないことに賭けている。ブルー ムバーグ・リンクが香港で今週主催した会議では、ソウルでの来月の G20首脳会合(金融サミット)でプラザ合意のような大ニュースが生 まれると予想する参加者にはただの一人も出会わなかった。

ハイブリッド車からパソコン、風力タービンや武器、それに米ア ップル社の多機能携帯電話(スマートフォン)「iPhone(アイフ ォーン)」といったあらゆる製品に不可欠なレアアースを「配給制」と する方針を、中国が考え直す可能性があると予想する者もいなかった。

現実は不可避

経済社会は人民元にとりつかれている。ワシントンから東京に至 るまで、どのようにして先進5カ国(G5)で円高誘導を決めたプラ ザ合意のように、中国に人民元上昇を認めさせるかという話題でもち きりだ。世界経済に災いをもたらす不均衡の是正にはこうした取り決 めは不可欠にも思えるが、中国が乗ることのない話だ。労働力の大半 が貧困にあえぐ途上国として、中国は安い通貨を必要悪と見なしてい る。

その上にレアアースの問題がある。世界のレアアース生産の97% を占める中国は、この事実を見逃すことのできない利点だととらえて いるようだ。国内経済の成長にはこうした多くの資源が必要だし、ま たこの独占は地政学的にも極めて有用だと認識しつつある。

世界は選択を迫られている。不満を言い中国に方向を変えさせよ うと無駄な試みで足を踏み鳴らすこともできれば、世界の新しい秩序 の現実を受け入れることもできる。米国が中国製品に輸入関税で報復 するのは自由だが、1930年代に保護主義が世界恐慌を悪化させたこと を考えれば、そうした対応策は今日、賢明な選択肢とは言えない。

構造的変化

産業の進展には常に、商品消費の構造的変化を伴う。石器時代や 青銅器時代、鉄器時代、それにアルミニウムや銅の時代を経てきた人 類だが、今は製品小型化の波にもまれ、レアアースの「代替品」の必 要性が高まっている。そしてこのこと自体、ビジネスチャンスだけで なくヘッジファンドの投資機会を広げている。

中国マネーはすでに米国の不均衡を穴埋めし、ヘッジファンドに またとない富を提供している。パワーシフトがいかに不快なものであ ろうと、これは続く。世界にとって必要なのはただ、不可避の現実を 受け入れ、次の工業化の流れに適応することだけだ。(ウィリアム・ペ セック)

(ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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