「日銀サーベイ」金利予想、経済物価情勢、金融政策の展望コメント

【記者:日高正裕】

10月1日(ブルームバーグ):ブルームバーグ・ニュースは4、5 日開かれる日銀の金融政策決定会合を前に、有力「日銀ウオッチャー」 17人に内外の経済・物価情勢、金融政策の展望を聞いた。質問内容は 以下の通り。アンケート回答期限は30日午前8時。エコノミスト予想 のまとめ記事は「日銀の利下げ観測が浮上-新型オペ拡充は効果薄く 「滑稽」との声も」をご覧ください。

1)今回の会合で予想される政策、2)日銀が政策金利を「引き 下げる」時期、3)日銀が政策金利を「引き上げる」時期、4)~11) 政策金利の予想水準(氏名50音順、カッコは前回回答)、12)経済、 物価情勢の見通し、13)金融政策の展望、次の一手

●三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジスト 1)今回会合 :新型オペ6カ月10兆円と1年10兆円追加など 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2013年4-6月以降(同) 4)10年12月末 :0.10%(同) 5)11年3月末 :0.10%(同) 6)11年6月末 :0.10%(同) 7)11年9月末 :0.10%(同) 8)11年12月末 :0.10%(同) 9)12年3月末 :0.10%(同) 10)12年6月末 :0.10%(同) 11)12年9月末 : 0.10%

12)足元の景気は予想通り踊り場に入りつつある。円高と海外景気の 減速を受けた輸出の鈍化および政策効果の一巡による。短観(業況判 断DIの先行き予測、今年度設備投資計画の修正率など)が裏付けた。 先行きも国内空洞化懸念を背景とした企業の成長期待の低迷や、雇 用・所得環境の低迷と将来不安が家計の足を引っ張り続ける。海外経 済の見方は前回回答時から大筋不変。予想通りの流れ。

日銀の景気判断は「回復傾向をたどる」というメーンシナリオを 維持するものの、リスクバランスの「上振れ<下振れ」に警戒感を表 明し、一時的な減速(踊り場)を認めざるを得なくなる。物価判断は 消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比上昇率がプラス に浮上するタイミングを「11年度中のどこか」から「12年度中のどこ か」に後ずれさせる可能性が出てきた。

13)選択肢は①時間軸政策②利下げ(完全ゼロ金利や「ゼロ%-0.10%」) ③国債買い入れ拡大④量的緩和政策(当座預金残高目標)。いずれにせ よ金利低下余地が極めて限られるため実体的な緩和効果も自ずと限ら れる。短期金利ゾーンは全般的に事実上のゼロ金利制約に陥っている。 強いて言えば米連邦公開市場委員会(FOMC)に負けない積極的か つ前倒しの緩和姿勢というアナウンスメント効果くらい。

長期金利ゾーンには低下余地が残されているものの、債券バブル の醸成促進という深刻な副作用を伴いかねない(特に④)。長期国債買 い入れ増額は銀行券ルールがこれまで歯止めとして意識されてきたが、 もとより絶対的な縛りではあり得ない。日銀の使命は「物価安定の下 での持続的な成長の達成」であり、政策選択の際はそれが優先される。 宮尾委員の発言がそのことを示唆している。

●日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :新型オペ拡充 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2012年4-6月以降(同) 4)10年12月末 :0.10%(同) 5)11年3月末 :0.10%(同) 6)11年6月末 :0.10%(同) 7) 11年9月末 :0.10%(同) 8)11年12月末 :0.10%(同) 9)12年3月末 :0.10%(同) 10)12年6月末 :0.30%(同) 11)12年9月末 :0.30%

12)短観では業況判断DIの足元の改善持続、下期の事業計画の上方 修正はポジティブな材料だが、それよりも先行きの業況判断DIの悪 化、海外の製商品需給の悪化見通し、設備投資への慎重姿勢、デフレ 圧力、交易条件の悪化見通しの方が重要なメッセージだろう。世界経 済の減速感と円高の影響が色濃く反映され、短観の特徴は下振れリス クの顕在化と言える。

短観ではマインドの先行き悪化は示されても、事業計画の見直し は不十分であり、これだけでは実態を把握できない。企業収益の見通 しは不確実性の高い世界経済の動向に依存した不安定なものであり、 調査時点での数字が実際には悪くなることをある程度は想定せざるを 得ないだろう。

今後エコカー補助金制度終了後の10-12月の自動車生産、販売の 落ち込みが避けられないだけに、10-12月の減速度合いが日本経済の 正念場となる。28日発表の日銀展望リポートは10-12月の弱さをデ ータで確認できない段階、さらには米国経済に自信が持てない状況で の景気判断となり、確固たることが言えない非常に難しいタイミング だ。景気判断に基づく政策判断にも限界が見えてしまう。

既に日銀は9月の金融経済月報で「景気は改善の動きが一時的に 弱まる」という表現を使い始めている。この弱さが一時的に終わるこ とを否定する材料をすぐに集めることはできない。それならば、下振 れリスクの強まりを示すにとどまり、標準シナリオを大きく修正する には至らないと思われる。

13)日銀が限られた政策カードを使うには下振れリスクの顕在化が必 要だ。8月分の輸出が減速を明確に示し、短観で先行きマインドの悪 化と設備投資の抑制基調を確認、複数のデータで下振れリスクが顕在 化し始めたと見ている。

これに加え、米連邦準備制度理事会(FRB)が気にするPCE 価格指数、9月のISM製造業景況指数など、今後発表される米国指 標の弱さと、7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)前の国際通貨 基金(IMF)世界経済見通しの下方修正が見込まれるならば、4、 5日の会合で早めに追加緩和を決定した方が良いだろう。

次の一手を優先順位で並べると、①新型オペのさらなる拡充②新 貸出制度の拡充③時間軸の強化④銀行保有株買い取りの再開⑤政策金 利の引き下げ⑥長期国債買い入れ増額⑦インフレターゲットの導入と なる。一部報道にあるように、すぐに取り組める一手は①であり、40 兆円への拡大を予想する。焦点は当座預金残高(9月末で20.2兆円程 度、3月以来の高水準)の扱いとなる。

明確に量的緩和宣言をするのがためらわれるなら、政府の為替介 入の側面支援と合わせ当預残高増加を容認する方法もあろう。オペ供 給量の増加で政策金利の0.1%維持が難しいのであれば、FRBのよ うに0-0.10%と誘導目標をレンジにするのも一案となる。展望リポ ートのタイミングなら、12年度の経済・物価見通しを示すことから、 ③の可能性(条件をつけてそれまで緩和を続ける)も考えられる。

⑤-⑦は26、27日の白川総裁講演からもまだハードルは高そうだ。 今後米国経済の下振れリスクが強まる場合に備え、次の次の一手まで 視野に入れると、限られた政策手段は小出しにならざるを得ない。そ して政府との協調(追加緩和と為替介入もしくは追加緩和と補正予算) を演出する方が円高阻止には得策だ。金融政策に魔法のつえはなくて も、早めの対応とポリシーミックスで乗り切るしかないだろう。

●みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :新型オペなど資金供給拡充 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2012年7月(2012年4月) 4)10年12月末 :0.10%(同) 5)11年3月末 :0.10%(同) 6)11年6月末 :0.10%(同) 7)11年9月末 :0.10%(同) 8)11年12月末 :0.10%(同) 9)12年3月末 :0.10%(同) 10)12年6月末 :0.10%(0.30%) 11)12年9月末 :0.30%

12)景気は、在庫調整一巡や政策効果、輸出増加に支えられたリバウ ンドが一巡し、下振れしつつある状況。駆け込み需要の反動もあり、 10-12月は実質マイナス成長になると予想される。米国がバブル崩壊 後の構造不況に陥っていることに加え、日本は人口動態を背景に消費 市場の縮小と慢性的なデフレが起こっており、景気の回復力は弱い。

短観は大企業・製造業DIの予測が-1まで急低下していたこと が象徴するように、円高などによって企業マインドが悪化しているこ とを確認する内容だった。ただし設備投資計画は大企業・製造業で上 方修正されており、実際の企業行動にまでは円高等の悪影響はまだあ まり及んでいない。日銀は展望リポートで緩やかに回復というシナリ オの基本線は維持しつつ、時期を先送りする形で下方修正を行おう。

13)白川総裁の神戸・大阪での発言内容からみて、銀行券ルールを撤 廃しての国債買い入れ増額はないと現時点では予想している。次回会 合で決まるのは、従来の政策運営の枠組みを維持した上での資金供給 拡充策だろう。「量」を増やしていることを政府や為替市場にアピール する必要があるため。新型オペ再拡充(増額に加え、1年物の導入も 選択肢)のほか、従来型のオペの積極活用も候補。

特に国庫短期証券買いオペは増額を執行部に指示する手が考えら れる。介入に伴い外為証券が今後増発されること(その買い入れを行 うことで「非不胎化」実施のポーズをさらに強化できる)、現在は1回 あたり3000億円のオファーに減額して運営されており増額余地があ ることがその理由。このほか成長基盤強化支援関連で資金供給増額や 証券化市場支援のための資産担保証券買い入れの復活も考えられる。

●東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト 1)今回会合 :新型オペ拡充の可能性も 2)利下げ時期 :利下げなし 3)利上げ時期 :2012年秋以降(同) 4)10年12月末 :0.10%(同) 5)11年3月末 :0.10%(同) 6)11年6月末 :0.10%(同) 7)11年9月末 :0.10%(同) 8)11年12月末 :0.10%(同) 9)12年3月末 :0.10%(同) 10)12年6月末 :0.10%(同) 11)12年9月末 :0.10%

12)標準シナリオは、トーンを落としつつ、大きくは変えないだろう。 しかし、エコカー補助金終了後の需要減退、米国経済の動向、円高が 経営者マインドに与える影響などの不確実性を警戒して、下振れリス クを強めに強調すると思われる。

13)8月30日の追加緩和策は、足元の経済指標は悪化していないもの の、「保険」として決定された。短観の先行きの業況判断DIは悪化し たものの、それはその「保険」で想定した範囲内と思われる。また、 6カ月物新型オペは、スケジュール的にまだ1本しかオファーされて おらず、その効果を議論することはまだできない。

本来の筋論であれば、10月1回目の会合では追加緩和策を見送り、 2回目の会合でインフレ率の見通しを若干引き下げる際に追加対策を 検討するスタンスを日銀はとるだろう。しかし、現状において日銀は 政治的圧力に耐えられず、1回目の会合で短期資金の追加資金供給(6 カ月物新型オペの10兆円追加や、国庫短期証券買い入れオペの積極活 用など)を決める可能性があると思われる。

日銀当座預金残高は増加し20兆円台が恒常化してくる可能性が ある。現在でも行われている事実上の量的緩和策(準備預金所要額を 大幅に上回る資金供給を継続する政策)が事実上一段と拡大されよう。 しかし短期の金融資産の利回りがゼロ%近辺の中で、それを日銀が追 加的に購入(あるいは担保に)して資金供給を拡大しても(似たもの 同士の交換なので)経済や為替市場を刺激する効果はほとんどない。

それは逆に言うと、金融市場においてすでに緩和状態がいかに進 んでいるかを示している。8月30日の新型オペ10兆円6カ月物(金 利0.1%)は平時であれば、本来は強烈な緩和効果を持ち得る手段で ある。しかし、それが「too little」と市場に一笑されてしまうとい うことは、短期金融市場に余剰資金が凄まじく溢れ、追加緩和策は今 や「ひもを押す」状態になっていることを意味している。

「効果がないからもっと強い策をよこせ」と求める声が多く出る のは、薬物中毒患者のような状態にわれわれが陥っているからかもし れない。長期国債買い入れオペの日銀券ルールは政府とのせめぎあい が続くと思われるが、まだしばらくは堅持されよう。宮尾審議委員の 先日の発言の真意は、従来の日銀政策委員会のコンセンサスの範囲内 であり、変更に前向きな姿勢を示す意図はなかった。

日銀券ルールの存在は一見保守的な印象を与える。しかし、日銀 券ルールと金融緩和の効果については事実認識の整理が必要と思われ る。近年の日本の銀行券発行残高は「流動性のわな」の発生により、 歴史的トレンドからはるかに上方にかい離し、世界的にも異様な膨張 を示している。対名目GDP比は、16-17%だ。ドル紙幣は6%、ユ ーロ紙幣は9%、ポンド紙幣は4%だ。

日銀は異常な残高に向けて、長期国債を買い進めて行こうとして いる。いずれ日銀が持つ長期国債の残高の対GDP比は16-17%前後 になる。それは現在FRBが持っている長期国債、MBS、GSE債 の合計額の対GDP比14%を上回る。国債買い入れに対するシーリン グは非常に高い所に設定されているので、現在の日銀の買い入れペー スは実はかなり大胆な規模で実施されていると言える。

それでも金融緩和効果が出ないという場合、追加的に買い入れを 増やすことにどういう意味があるのか冷静な議論が必要だろう。国債 買い入れオペの増額によって長期金利を一段と低下させることに仮に 成功した場合、それは金融機関の収益を縮小させ、彼らのリスクテイ ク能力を弱める。金融緩和効果をかえって阻害する恐れがある。

マッキノン・スタンフォード大学教授はその観点から「FRBは 直接的に長期金利を低下させようとするあらゆる計画を放棄すべきだ」 と主張し、超低金利のわなに米経済が既に陥っている危険を指摘して いるが、日本にも同じことが言えるだろう。

英国のように政府が驚くほどアグレッシブに財政支出削減策を押 し進めている国であれば、中央銀行が国債の買い入れを増額しても(緩 和効果は限られるが)財政規律が低下する恐れはない。しかし、日本 の場合は政治の財政再建に対するモチベーションがさらに弱くなる恐 れがあるため、その問題との比較考慮も必要と思われる。

●JPモルガン証券の菅野雅明調査部長 1)今回会合 :新型オペ拡充、または成長基盤強化向け貸出拡充 2)利下げ時期 :利下げなし 3)利上げ時期 :2013年以降(2012年4-6月以降) 4)10年12月末 :0.10%(同) 5)11年3月末 :0.10%(同) 6)11年6月末 :0.10%(同) 7)11年9月末 :0.10%(同) 8)11年12月末 :0.10%(同) 9)12年3月末 :0.10%(同) 10)12年6月末 :0.10%(0.25%) 11)12年9月末 :0.10%

12)短観で明らかになったように、10-12月は猛暑効果のはく落やエ コカー補助金打ち切り、たばこ増税前の駆け込み消費の反動で消費が 反動減となる見込みなほか、円高に伴う企業収益の悪化も加わって実 質国内総生産(GDP)は一時的にマイナス成長となろう。外需は欧 米経済が低迷する見通しの一方、中国経済は踊り場を脱して緩やかに 加速し始めると見られるので、2番底に向かう可能性は小さい。

ただし、日本経済の踊り場脱却は11年4-6月と予測する。展望 リポートでは4月展望リポートで織り込んでいなかったギリシャ・シ ョックと中国経済減速の影響を踏まえ、10、11年度のGDP予測を下 方修正するとともに、11年度物価見通しも4月時点のコアCPI前年 度比プラス転化予測をマイナス予測に下方修正するだろう。

13)日銀は2つの圧力に直面している。第1は国内の政治的圧力。臨 時国会では日銀の独立性を弱める趣旨の日銀法改正案が提出される見 込みで、日銀はこれに対応するためにも積極的な緩和姿勢を示す必要 がある。第2は海外発の円高圧力だ。米国の経済指標の回復が遅れる 中、11月はFOMCでの米国債購入増額観測もあって米長期金利に対 する低下圧力が増大しやすい環境にある。

これが円高圧力を高めているため、日本でも日銀に対する緩和期 待が高まっている。2つの圧力は眼前に迫っているので、追加緩和を 実施するなら早いに越したことはない。しかし日銀に残された緩和手 段は限られている。8月末に決定された固定金利オペの拡充を期間延 長・増額などさらに強化しても、金利低下効果はほとんどないだろう。

一方、介入に併せて当座預金残高を積み上げ、非不胎化介入を演 出することは十分あり得る選択だ。ただし日銀は当座預金残高に目標 を設定せず、状況に応じて弾力的に当座預金残高を増額しよう。もっ とも従来は「量的緩和は景気回復に効果が余りない」と言ってきたの で、従来の説明とどのように整合性を保つのか苦しい説明となろう。

このほかの選択肢は国債買い入れ増額と銀行券ルール撤廃だが、 現時点でこのカードを切ることには日銀もちゅうちょしよう。したが って、効果がほとんど期待できなくとも、緩和姿勢を示すために固定 金利オペの再拡充と事実上の量的緩和(非不胎化介入の実施)を発表 する可能性が高い。ただ政治的圧力と円高圧力が予想以上に高まる場 合には、10月中に国債買い入れ増額に踏み切ることも考えられる。

●第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :当面なし(同) 3)利上げ時期 :当面想定できず(同) 4)10年12月末 :0.10%(同) 5)11年3月末 :0.10%(同) 6)11年6月末 :0.10%(同) 7)11年9月末 :0.10%(同) 8)11年12月末 :0.10%(同) 9)12年3月末 :0.10%(同) 10)12年6月末 :0.10%(同) 11)12年9月末 :0.10%

12)短観は堅調だったが、景気シナリオを下方修正する可能性はある。 12年度まで消費者物価伸び率は低調なシナリオを描くのではないか。

13)米国が長期国債買い切りに踏み出せば、米長期金利低下+円高の 圧力を緩和するために、日銀の長期国債を買い入れ増額する可能性が ある。日銀は基本的に、円高圧力には固定金利オペの拡充の範囲内で 対応しようとしていると見る。

●BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト 1)今回会合 :為替動向次第では新型オペ拡充 2)利下げ時期 :利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2013年1-3月以降(同) 4)10年12月末 :0.10%(同) 5)11年3月末 :0.10%(同) 6)11年6月末 :0.10%(同) 7)11年9月末 :0.10%(同) 8)11年12月末 :0.10%(同) 9)12年3月末 :0.10%(同) 10)12年6月末 :0.10%(同) 11)12年9月末 :0.10%

12)日本は米欧と異なりバランスシート問題を抱えておらず、好調な アジア向け輸出の恩恵を受けることなどから比較的好調な推移を予想 していたが、実際は想定よりも内需回復が遅れている。原因の1つは、 米欧経済を中心とした不確実性の高まりが企業行動の足かせになって いることだ。これは循環的な現象というよりも米欧経済のトレンド成 長率(潜在成長率)の低下に対応した現象であるように思われる。

ただし、念のために言っておくと、循環的な景気回復の動きは今 後も途絶えないと予想している。消費刺激策の効果はく落(あるいは 反動減)を強く懸念する見方もあるが、仮に景気減速が生じるとして も一時的なものに終わると思われる。そもそも財政政策の効果は一時 的で、永続的に付加価値を生み出すわけではなく、本来のトレンドに 経済が戻るだけだ。

円高はデフレに陥っている日本にとって由々しき問題ではある。 ただ実質ベースで過去20年の平均に比べ円安水準にあるため、輸出が 困難になるといった致命的なものではない。円高は価格ショックなの で輸出企業の収益性に悪影響をもたらすが、需要ショックではないた め短期的に生産を大きく悪化させることもない。このように短期的に はあまり悲観的にみてないが、中長期的には決して楽観できない。

日本のトレンド成長率(潜在成長率)をあらためて推計したが、 労働力人口の減少の影響等も加わり、従来の1%弱から0.5%強に低 下したと考えられる。02-07年の景気拡大局面における平均成長率は 2%だったが、今後景気回復が続くとしても、景気拡大局面の平均成 長率は1.5%程度にとどまる可能性がある。トレンド成長率は簡単に は変化しないという意見もあろう。

しかし、少子高齢化の加速する日本では労働力人口の減少の影響 などから、むしろトレンド成長率を一定に保つことの方が難しい。さ らに、高齢化による社会保障関係費の増加を中心に財政膨張が続いて おり、将来の公的債務の返済負担増大への懸念がより強く意識され、 それが人々の成長期待を低下させている。企業や家計は継続的に支出 を抑制し、それがトレンド成長率を押し下げることになる。

高齢者を中心に積み上がった1400兆円にも達する金融資産は、 人々が将来の公的債務の返済に備えたもので、リカーディアン効果が 働いた結果と考えるべきであろうか。その場合は経済に対して長期的 にニュートラルと言うことになるが、ここ数年の人々の行動を見ると、 ニュートラルであるとは思われない。

そもそも社会保障制度によって恩恵を受けている世代と費用の負 担を強いられる世代は大きく異なる(若年層から高齢者への大規模な 所得移転が発生している)。政府の新たなばらまきや膨張する公的債務 を見て将来の返済負担増を恐れ、支出を抑制する現役世代が多数存在 し、いわゆる非ケインズ効果が働いているのではないかと懸念される。

13)さらなる円高が経済、物価に悪影響を及ぼすことを回避するため、 今後も日銀に対し金融緩和圧力が続くと思われる。その場合、以下の 選択肢が考えられる。①新型オペの拡充(残高拡大、オペ期間の長期 化)②介入資金の放置(非不胎化)③国債の買い切りオペ増額(日銀 券ルールの撤廃)④外国為替や上場投資信託(ETF)などの非正統 的な金融資産の購入。

この中で可能性が最も高いのは①新型オペの拡充と②介入資金の 放置だろう。ただ先行きの「踊り場」懸念が高まっているとは言え、 今回の短観によって7-9月における企業部門の改善継続が確認され ているため、少なくとも現段階では①、②以外の政策のオプションは 検討されていないと考えられる。

ゼロ金利政策の導入については、既に事実上のゼロ金利状況にあ るため、そもそも政策のオプションにはならないと思われる。③の国 債買い切りオペ増額(日銀券ルールの撤廃)は、公的債務の膨張が続 いており、市場からマネタイゼーションと受け止められるリスクがあ る。このため、経済が余程危機的な状況に陥れば話は別だが、政府が 明確な財政健全化策を打ち出すまでは実施されないと考える。

④の外国為替やETFなど非正統的な金融資産についても同様で、 危機的な状況に陥らなければ実施されないだろう。以下は頭の体操で あるが、もし日本経済が「デフレ均衡」に陥っている場合、非正統的 資産の購入はそこからの脱却のための手段となり得るかもしれない。

ただ、「デフレ均衡」からの脱却のためには非正統的な金融資産の アグレッシブな購入が必要であり、不測の事態をもたらす可能性があ る(経済学がいかに進歩したといっても、マクロ経済の仕組みに関す るわれわれの理解はいまだに十分ではない)。

このため、実行される場合は日銀だけの判断では不十分で、政府 からの明確な要請が必要となるであろう。仮に「デフレ均衡」からの 脱却に成功する場合でも、マクロ経済のボラティリティが相当に高ま る可能性が高いため、政治的にもリスクが大きく、実際には選択し得 ないのではないか。

●モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミスト 1)今回会合 :新型オペ拡充、短期国債買い入れ増額等 2)利下げ時期 :2010年10-12月(同) 3)利上げ時期 :2012年10-12月以降(同) 4)10年12月末 :0.05%(同) 5)11年3月末 :0.05%(同) 6)11年6月末 :0.05%(同) 7)11年9月末 :0.05%(同) 8)11年12月末 :0.05%(同) 9)12年3月末 :0.05%(同) 10)12年6月末 :0.05%(同) 11)12年9月末 :0.05%

12)海外経済は米国ではISM、小売売上高、耐久財受注等一部に明 るさを示す指標が出ていることから2番底懸念は後退している。もっ とも雇用情勢が顕著に回復する兆しはなく、米景気は浮揚感に乏しい 展開が続こう。アジアも中国は引き締め政策の影響から生産・消費の 減速が続いており、10-12月に向け景気はさらに減速しよう。

総じて10-12月の海外経済は米国が潜在成長率並みか、それ未満 の成長にとどまる一方、欧州もユーロ安の輸出への好影響一巡で景気 拡大に一服感が出るほか、中国経済も政策の引き締めにより一段と減 速が見込まれる等、目先はさえない展開が見込まれる。

国内経済も政策需要のはく落や円高の影響、および海外経済の減 速から、この10-12月はおおむねゼロ成長に落ち込み、踊り場的な状 況が深まると見込まれる。既に短観で先行きの需要の持続性に対する 企業の慎重な見方が示されたほか、国内自動車販売の急減から鉱工業 生産等も10-12月は比較的大幅な落ち込みを示す可能性が高い。

こうした状況を受け、日銀の標準シナリオは中期的に緩やかな回 復という大筋に変更はないものの、下振れリスクが増大しているとの 認識から下方修正含み、すなわち回復の足踏みといった認識となろう。

13)米国では景気減速を受けて追加緩和観測がくすぶり続けており、 11月2、3日のFOMCで実際に追加緩和策が発動される可能性が高 まっている。こうした政策動向を見越して為替市場は日本の介入発動 にもかかわらず既にやや円高気味で推移しているが、仮に日銀が10 月中に緩和を見送り、FRBが11月初旬に追加緩和を行った場合、為 替市場はさらに円高に振れ、株価も一段と軟調となる公算が大きい。

またこうした円高・株安といった市場環境次第では、日銀法改正 含みで日銀への政治的圧力もあらためて強まり兼ねない情勢となって いる。結局、日銀は10-12月も追加緩和に動く可能性が高い。本来の 手順としては展望リポートで経済シナリオを下方修正した上で、新た な緩和策を模索することとなろう。

ただし、市場が米追加緩和をほぼ織り込む中で、仮に日銀が目先 次回会合で緩和を見送った場合、市場は円高・株安で反応する可能性 があり、実際には28日を待たずに次回会合で追加緩和策が発動される 公算が大きい。あるいは10月中の2回の会合で2度にわたって新たな 緩和策が打ち出される可能性がある。

追加緩和のメニューとしては、①固定金利オペの拡充や短期国債 買い切りオペの拡大による当座預金の増額(明示的な目標設定なし) ②無担保コールレート誘導水準のバンド制への移行(0-0.1%)等を 念頭に置いている。前回の固定金利オペ拡充策が市場の期待未満とな り、かえって円高・株安を招いたとの批判を踏まえ、新たな緩和措置 はより実質的な緩和効果を狙ったものとなろう。

国債買い入れ増額は長期金利が0.9%台に低下する中、日銀が現 時点でわざわざ切るべきカードではなく、蓋然(がいぜん)性は低下 したとみている。もっとも、政府が財政健全化に向けた信頼に足る行 動計画を具体化させる場合には、将来の国債買い入れ増額も選択肢か ら排除されないだろう。

総裁は日銀券ルール改変(残存1年未満の中長期国債の取扱い変 更)や中長期国債残高が日銀券残高を超えた場合の柔軟な取扱いとい った課題について、早ければ10-12月の決定会合の中で執行部に対し て検討を命じる可能性があろう。

●東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト 1)今回会合 :新型オペ拡充を含めやや長めの資金供給拡大 2)利下げ時期 :2011年1-3月 3)利上げ時期 :2012年10-12月以降 4)10年12月末 :0.10% 5)11年3月末 :0.00% 6)11年6月末 :0.00% 7)11年9月末 :0.00% 8)11年12月末 :0.00% 9)12年3月末 :0.00% 10)12年6月末 :0.00% 11)12年9月末 :0.00%

12)欧米景気は基本的に減速へ向かう。米国経済は楽観論と悲観論が 交錯、循環的な短期的回復局面はあろう。しかし住宅や金融を中心と するストック調整、構造調整を脱するには時間を要する。それはわが 国が経験したことだ(もっとも、米国の回復の方が早いだろうが)。欧 州経済はユーロ安効果が一巡し、財政緊縮が悪影響を及ぼそう。また、 財政悪化を中心とする南欧諸国などの足かせも残る。

欧米、特に米国景気の持続的回復がなければ、中国など新興国の 内需拡大だけで世界経済を長期に支えていくことは難しい。短観を受 けて、日銀や市場のわが国経済に対する見方が大きく変わることはな い。外需減速、政策効果のはく落などから、少なくとも今後は「踊り 場」を迎える。そして減速がそれより深くなる可能性も十分ある。

日銀は展望リポートで標準シナリオを基本的に維持すると見られ る。ただ、成長率と物価上昇率見通しを若干下方修正する公算だ。ま た、一段と下振れリスクを強調しよう。

13)次回会合を「長めの資金供給の拡大」で乗り切ったとしても、日 銀への圧力はやまないだろう。この潤沢な供給にゼロ金利政策を含め た政策金利の引き下げ、「時間軸」の導入などが加われば、イールドカ ーブの下方シフトに一定の効果をあげよう。予想というより、そうい った方向に進んでほしいと考えている。一方、予想ということでは、 長期国債買い入れ増額の可能性が否定できない。

昨年3月の増額は事前予想の月額1000億-2000億円増に対し、 実際は4000億円増の決定だった(1.4兆円から1.8兆円)。しかし、こ の需給面でのポジティブサプライズに市場は反応せず、その日の10 年国債利回りは前日と変わらなかった。日銀のマネタイゼーションに 対する懸念があったためと思量される。そして、ここから増額すれば 「日銀券ルール」が早期に破られることになろう。

その際、市場はマネタイゼーションへの懸念を一段と強める公算 が大きく、金利は上昇してしまう可能性が高い。「日銀券ルール」の弾 力的運用にも同様の反応を示すと考えられる。それゆえ、長国買い入 れの増額は「もろ刃の刃」と言うより、リスキーな選択だ。

●三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長 1)今回会合 :新型オペ40兆円に拡大。成長基盤強化貸出拡充も 2)利下げ時期 :利下げなし 3)利上げ時期 :2012年7月(同) 4)10年12月末 :0.10%(同) 5)11年3月末 :0.10%(同) 6)11年6月末 :0.10%(同) 7)11年9月末 :0.10%(同) 8)11年12月末 :0.10%(同) 9)12年3月末 :0.10%(同) 10)12年6月末 :0.10%(同) 11)12年9月末 :0.35%

12)短観で大企業・製造業DIは6四半期連続で改善したが、先行き は一転して悪化見通しとなった。これは明らかにエコカー補助金が期 限切れとなった自動車が駆け込みの反動により、実に38ポイントもの 記録的悪化が見込まれているためだ。8月からの円高の進行と、一部 には9月に発生した尖閣諸島での中国船衝突事件を受けた心理的不安 も出ていよう。

大企業・非製造業も8四半期ぶりプラスとなったが、先行きはや はり悪化した。10年度下期の想定為替レートは1ドル=89.44円で、 現状の水準が企業の想定水準とはかけ離れたドル安円高状態にあるこ とが明らかになった。円高を放置すれば輸出と生産が落ち込み10-12 月にも景気が腰折れ(それでも既に景気拡張局面入りしているので「2 番底」にはならない)するリスクも皆無とは言えなくなってきた。

今後の金融財政政策発動を前提として今のところ景気後退は回避 されると考えているが、それでも10-12月以降11年4-6月までは 「踊り場」的な在庫調整局面が続くと見ている。10年度成長率は2.6% と高めだが、7-9月の猛暑効果とエコカー減税期限切れ前の駆け込 みの影響を含んでいるため、そのはく落後の10年度下期を中心に11 年度初めにかけて停滞し、11年度は1.5%にとどまると考えている。

展望リポートは下振れリスクの顕現化を強調しつつ、10年度成長 率を0.1ポイント下方修正して2.5%に、11年度は0.3ポイント下方 修正して1.6%とするのではないか。コアCPIは展望リポートでは 10年度マイナス0.5%(0.1%下方修正)、11年度0.1%(変わらず) とするだろう。

政府は補正予算を追加の国債発行なしに成立させる腹積もりのよ うだが、現実には雇用情勢の好転の遅れや中小企業の業況の低迷など 経済環境の厳しさを背景とした政治的圧力もあって、そううまく行か ないだろう。最終的に建設国債の発行を伴う経済対策の発動となれば、 現在極めて低水準にある長期金利も上昇に転ずる可能性が出てくる。

11月2、3日のFOMCでは追加金融緩和が予想されている。こ うした中、日銀は次回会合で新型オペによる資金供給の拡大など、追 加金融緩和に踏み切る可能性は高い。資金供給を円滑にするためには 本来長期国債の買い切りオペを増額するのが望ましい。ただ、9月20 日時点における日銀の長期国債保有残高は57.89兆円で、一方、発行 銀行券残高は76.56兆円である。

日銀券ルールで長期国債買い入れの上限に達するまでに18.67兆 円の余裕を残しているといえるが、現在年額21.6兆円購入しているの で、これ以上購入額を増やすと早期に日銀券ルールの上限にぶつかる リスクがある。これが財政規律を重視する日銀に、長期国債買いオペ を思いとどまらせてしまうネックとなっている。しかし、日銀券ルー ルは隠れた景気循環増幅装置ともいえるものだ。

経済が好調でインフレ的なときに大いに増える日銀券の伸びが、 不況でかつデフレのときには停滞することを念頭に入れていない。イ ンフレ克服を目指してマネタリーベースを抑制したいときは日銀券の 上限枠が上昇して国債を購入する余裕が広がる無駄が生じ、逆に現在 のようにデフレ克服を目指してマネタリーベースを増やしたいときに 日銀券の上限がむしろ下がって金融緩和政策の障害になりやすい。

従って、このルールは財政規律を守るという一点においては重要 な歯止めとはいえるものの、1920-30年代に各国で採用された金本位 制のようなもので、景気循環の安定化にはさほど役立たず、増幅さえ しかねないためマクロ経済政策的には問題があるといわざるを得ない。

実際、既に複数の政治家や当局者筋から日銀券ルールの見直しの 提案がなされているが、一概に政治的圧力と片付けてしまうのも必ず しも妥当ではなく、日銀も円滑な資金供給手段を確保するために、い ずれ見直しの決断をする必要が出てくるのではないか。

●HSBC証券の白石誠司チーフエコノミスト 1)今回会合 :ゼロ金利政策、長期国債買い入れ増額 2)利下げ時期 :2010年10月5日 3)利上げ時期 :2013年以降 4)10年12月末 :0.00% 5)11年3月末 :0.00% 6)11年6月末 :0.00% 7)11年9月末 :0.00% 8)11年12月末 :0.00% 9)12年3月末 :0.00% 10)12年6月末 :0.00% 11)12年9月末 :0.00%

12)10-12月は駆け込み需要(エコカー、たばこ)、猛暑特需の反動 が重なりマイナス成長の公算濃厚。独伊では自動車インセンティブ終 了後4カ月で制度開始前の販売台数に戻り、その後も低下基調が続い た。大手自動車メーカーは10月国内生産台数を9月比2割減らすとし ているが、日本の駆け込み需要の大きさを踏まえると11月以降も前月 比でさらなる減産を強いられ、その影響は1-3月にも及ぶ見込み。

4-6月にはエコポイント終了後の反動もある。財政政策の効果 は時間の経過とともに消滅する。重要なのは、財政出動の効果が自律 回復につながるかいなか、であるが、足元の雇用者所得の上昇は製造 業残業時間に支えられたものであること、今年度設備投資計画におけ る対策関連業種の寄与の大きさ-などを踏まえると、財政効果の切れ 目が景気の切れ目となってしまうリスクは無視できない。

OECD先行指数の動きを踏まえると、来年央まで輸出モメンタ ム低迷は続く見込みで、最近の円高も11年の輸出モメンタムに悪影響 を及ぼすだろう。こうした中、エコカー減税等の反動の悪影響からき れいに1四半期で脱するとみるのは相当無理があると考えられ、日銀 も標準シナリオを下方修正した上でさらにダウンサイドリスクを強調 せざるを得ないのではないか。

13)短観を受けて次回会合では引き続き市場金利押し下げを通じた円 高抑止策が模索されようが、既に3年債利回りまでほぼ翌日物金利水 準に収れんしている状況下での新型オペの拡張は滑稽感を伴う。市場 金利押し下げに向けて、利下げによるターム物金利の引き下げか、長 国買い切りオペ増額が検討されよう。これらは景気見通しの下方修正 に対応したマクロ金融政策として実施されよう。

効果としては、イールドカーブ水準の着実な低下に直結しようが、 残念ながら日銀が緩和をすれば日本の潜在成長力が上がるわけでもな く、米国の歴史的信用バブル崩壊後の調整プロセスが終わるわけでも ない。円高リスクも日米金利差が消滅するまで継続するリスクがある。

●クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト 1)今回会合 :新型オペ拡充 2)利下げ時期 :2011年1-3月に0.0%-0.10%のレンジに 3)利上げ時期 :2014年以降(2015年度以降) 4)10年12月末 :0.10%(同) 5)11年3月末 :0.00-0.10%(0.10%) 6)11年6月末 :0.00-0.10%(0.10%) 7)11年9月末 :0.00-0.10%(0.10%) 8)11年12月末 :0.10%(同) 9)12年3月末 :0.10%(同) 10)12年6月末 :0.10%(同) 11)12年9月末 :0.10%

12)短観で大企業の業況判断DIは製造業、非製造業はいずれも事前 予想を上回る改善幅だった。猛暑効果や耐久消費財などの駆け込み需 要の影響で、当初見通しより業績が好調に推移したとみられる。しか し、先行きは製造業、非製造業ともに悪化する見通しで、駆け込み需 要の反動減、急激な為替円高やグローバル景気先行き不透明感の高ま りが企業マインドに大きく影響していることが確認された。

国内経済は10-12月から1-3月の2四半期が踊り場局面とな る可能性が高い。特に10-12月は世界的な生産モメンタムの鈍化を背 景とした外需の減少と猛暑効果の反動による内需の弱含みを受けて、 マイナス成長となるリスクがある。緩やかな景気回復が続くという日 銀のシナリオに大きな修正はないだろう。ただし、10年度の実質成長 率見通しは下方修正が確実だろう。

11年度に大きな変更なく、12年についても緩やかなプラス成長が 想定されるものと見る。10年度の消費者物価見通しに大きな変更はな いだろう。11年度は7月時点でプラス化する見通しだったが、若干の マイナスないしゼロとされ、12年度にプラス化と修正される可能性が 考えられる。

13)日銀が大きなアクションを取るかどうかは基本的にFRBの追加 緩和の規模とその後の為替相場次第だろう。その意味で日銀のスタン スは受身であり、自ら積極的に(広義の)量的緩和政策を進めていく ことはないだろう。FOMCのない10月中は国債買い入れ額の増額は ないと見るが、FRBの追加緩和規模が大きく、為替相場がさらに円 高に振れることがあれば日銀の国債買い入れ増額もあり得えよう。

月額2000億-3000億円増額した場合、民間の日銀券需要が変わ らなければ12年にも日銀券ルールに抵触する可能性がある。そのため 銀行券ルールの見直しもあり得る。しかし、今すぐに行うインセンテ ィブは少ない。この先デフレ基調で日銀券需要が増える可能性もある ので、日銀券ルールを見直すにしても実際に抵触間近になってからだ ろう。

●大和総研の田谷禎三顧問 1)今回会合 :新型オペ拡充 2)利下げ時期 :2010年10月28日(利下げなし) 3)利上げ時期 :2012年4-6月以降(同) 4)10年12月末 :0.05%(0.10%) 5)11年3月末 :0.05%(0.10%) 6)11年6月末 :0.05%(0.10%) 7)11年9月末 :0.05%(0.10%) 8)11年12月末 :0.05%(0.10%) 9)12年3月末 :0.05%(0.10%) 10)12年6月末 :0.25%(同) 11)12年9月末 :0.25%

12)短観は企業の先行き懸念を反映するものだった。輸出の鈍化がよ りはっきりしてきたし、円高もある。日銀による成長率見通しも若干 下方修正されるのではないか。短観の設備・雇用判断DIは先行きも ほとんど改善する動きになっておらず、物価変化率のプラス浮上の時 期も後ずれする可能性がある。

13)最近の一部報道の観測通りなら、とりあえずは固定金利オペのさ らなる拡充によって、市場には介入の非不胎化を連想させることが考 えられる。また円高対策として日米短期金利差を縮小させる観点から は、政策金利の微調整、たとえば0.05%への引き下げも考えられる。

今の時点で、自らが財政赤字のマネタイゼーションを強く連想さ せると主張してきた長期国債の買い入れ増加に一挙に進むことには、 日銀として強い逡巡があるのではないか。長期国債の買い入れ増加は 今後とも議論の焦点であり続けるだろう。

●信州大学の真壁昭夫経済学部教授 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :当面利下げなし(同) 3)利上げ時期 :2012年以降(同) 4)10年12月末 :0.10%(同) 5)11年3月末 :0.10%(同) 6)11年6月末 :0.10%(同) 7)11年9月末 :0.10%(同) 8)11年12月末 :0.10%(同) 9)12年3月末 :0.30%(同) 10)12年6月末 :0.50%(同) 11)12年9月末 :0.50%

12)米国経済の先行きには依然不透明要素が多く、今後景気減速の可 能性が高まっているとみる。FRBは経済動向に対して慎重な見方を 維持しており、金融市場は追加緩和への期待を高めている。企業経営 者の先行きに対する見方も慎重で、雇用の回復には長い時間がかかろ う。短期的に消費が盛り上がる状況ではない。新築住宅販売件数など 住宅関連の指標も十分に回復しているとは言えない。

わが国の経済の回復ペースは極めては緩やかだ。エコカー減税な どの刺激策が終了することもマイナス要因になっている。政府による 為替介入にもかかわらず円高懸念が続いており、主力の輸出企業中心 に景気の先行きに対する見方は慎重だ。今後回復のペースは鈍化する とみられ、中・長期的な経済成長期待も低い。短観でも先行きに対す る慎重な見方が明らかになっている。

8月の貿易統計で貿易黒字額が15カ月ぶりのマイナスとなった。 輸出の伸び率は鈍化しており、米国の景気不安や円高の影響が現れて いる。日銀は既に先行きをめぐる不確実性に言及しており、展望リポ ートのシナリオに大きな修正が加えられるとは考えづらい。円高や海 外経済の先行き不透明感等の景気の下振れ要因に対する記述は、より 具体的な内容になる可能性もあろう。

13)日銀の対応策は少しずつ限界に近づいている。一方、金融市場の 期待は国債買い取りの増額に向かっている。確かに日銀がより大規模 な買い取り額の拡大を実施すれば、中央銀行の強いメッセージと解釈 されよう。しかし、それによって日銀の選択余地が一段と狭まること になる。

日銀とすれば、できる限り政策余地は温存したいところだろう。 10月の会合では新型オペの金額面での再拡充を含め、既存の対策の修 正を中心に議論が展開されるとみる。米国の追加緩和期待につられて、 世界的に緩和ムードが高まる中、どうしても市場の期待は先行しがち だ。日銀は政策余地を残しながら、金融市場の期待を裏切らない手法 を模索することになるはずだ。

●野村証券の松沢中チーフストラテジスト 1)今回会合 :新型オペ拡充、0.1%からの下振れ容認のなお書き 2)利下げ時期 :利下げなし 3)利上げ時期 :2012年10月(同) 4)10年12月末 :0.10%(同) 5)11年3月末 :0.10%(同) 6)11年6月末 :0.10%(同) 7)11年9月末 :0.10%(同) 8)11年12月末 :0.10%(同) 9)12年3月末 :0.10%(同) 10)12年6月末 :0.10%(同) 11)12年9月末 :0.10%

12)短観は日銀の次回会合での追加緩和の可能性を高める内容だった。 大企業・全産業の業況DIの足元改善(前期比+7)と先行き悪化(前 期比-7)の振れが大きくなっているのは、猛暑効果や減税策などの 押し上げとはく落による影響もあるので割り引いてみる必要があるが、 恐らく日銀にとって一番懸念材料は、大企業・全産業の設備投資計画 が若干ながら下方修正(前年比+2.4%←+2.7%)されたことだろう。

過去の設備投資回復局面では6月調査から9月調査にかけて平均 で+0.4%上方修正されている。グローバルに現在の景気回復局面は雇 用なきリカバリーになる可能性が高く、企業の収益・設備投資が景気 回復継続の生命線だ。展望リポートで景気見通しは下方修正しようが、 主として円高や米国の先行き不透明感による設備投資の先送りを反映 したものと思われるので、シナリオ自体には修正を加えないだろう。

13)次回会合で流動性供給オペの拡充と、翌日物金利が政策金利を当 面下回ることを許容する文言を声明文に盛り込むことを予想する。オ ペ拡充には短期国債買い入れ増額も含まれる可能性もある。介入のた め財務省が短期国債を発行するに伴い、日銀が買い入れを増額すれば 非不胎化のメッセージを明確に送ることができよう。だが、その場合 もこれは会合の議決事項ではないので会合で発表する必要はない。

長期国債買い入れオペ増額は実施しないと見ている。11月FOM Cでの出方を見極めたいこともあるが、景気の落ち込みがそれほど深 くならない証左も出てきているためだ。筆者の利回り見通し(年末ま で10年0.85-1.25%)が織り込んでいるのはTB買い入れまでで、 長期国債買い入れオペ増額が実施された場合は需給面から見通しレン ジを10bp程度引き下げることになる。

銀行券ルール撤廃については、現状ペースでも14年でルールに抵 触する見込みのため、どこかで議論する必要がある。一方、月4000 億円買い入れを増やしても、12年まで抵触することはなさそうだ。現 在追加買い入れの前提として、同ルールの撤廃と言う、より大きな問 題に取り組む必要性も、時間的余裕もあるとは思えない。

●シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト 1)今回会合 :新型オペ拡充 2)利下げ時期 :利下げなし 3)利上げ時期 :2012年10-12月(同) 4)10年12月末 :0.10%(同) 5)11年3月末 :0.10%(同) 6)11年6月末 :0.10%(同) 7)11年9月末 :0.10%(同) 8)11年12月末 :0.10%(同) 9)12年3月末 :0.10%(同) 10)12年6月末 :0.10%(同) 11)12年9月末 :0.10%

12)短観は①足元の業況判断DIの改善②先行きの大幅悪化③設備投 資の緩やかな増加-を示した。景気が7-9月の高成長の後、輸出の 減速や政策効果の反動から10-12月に足踏み局面を迎えるとの見方 と整合的な内容だった。大企業・製造業の先行きはマイナス1で、実 際に12月にマイナスになるかどうかはともかく、企業の先行き警戒は 極めて強く、それが自己実現的に景気を悪化させるリスクがある。

米国景気は4-6月に予期せぬ減速をした後、年率1.5-2%程度 の成長ペースで安定化していると判断される。潜在成長率を下回るペ ースではあるが、当面景気がさらに下振れる可能性は低くなったよう に思える。金融緩和期待も手伝い、株式相場が底堅く推移しているこ とを背景に、個人消費が安定を取り戻したことが大きい。

国内景気は輸出の減速を主因に今年春までの勢いを失いつつある。 エコカー補助金及び家電エコポイント制度の終了前の駆け込み需要と その反動等により、来年前半にかけて成長率の振れが大きくなり、景 気の基調の見極めが極めて難しくなろう。正確な景気判断が正しい経 済政策の前提だとすれば、政策運営も難しい局面を迎えることになる。

白川総裁は9月27日の講演で「本年度後半にかけて景気回復ペー スが減速する可能性が高いことは、かねてより十分意識しており、4 月に公表した見通し計数にも織り込んでいる」と述べており、景気の 中心的見通しは大枠で維持する可能性が高い。ただ下振れリスクを従 前以上に強調することになろう。

13)次回会合で新型オペ拡充を予想する。会合後のG7で日本の介入 が議題になるとみられ、その前に追加緩和をした方が介入に対する批 判をかわしやすいだろう。短期金利の低下余地が狭まる中、短期資金 の追加供給が実体経済に与える影響は限定的と判断される。米国で実 質長期金利が急低下する中(この点は物価連動債利回りに明らか)、短 期金利の限界的な引き下げだけでは円高阻止の効果も期待しにくい。

長期国債買い入れ増額や日銀券ルール撤廃は10月の2回の会合 では見送られる可能性が高いだろう。日銀はFRBが長期国債買い入 れを決定するまでは、長国買い入れ増額という選択肢を温存したい意 向とみる。ただ米国が大規模な国債買い入れを行えば円高安圧力が強 まる可能性が高く、最終的には米国と同様の措置をとることを迫られ るのではないか。長期金利引き下げ競争の様相を呈しよう。

展望リポートでは金融政策運営上の物価の位置付けが修正される 可能性があろう。FRBは景気回復基調が続いているにもかかわらず、 インフレ率の水準の低さを問題視して追加緩和を実行に移しつつある。 物価の位置づけが格上げされたことになる。日本でも「物価安定の理 解」の見直しなどの形で物価の位置付けを高める方向で変更が行われ ることが想定される。インフレ目標論への日銀なりの回答になろう。

●バークレイズ・キャピタル証券森田長太郎チーフストラテジスト 1)今回会合 :新型オペ10兆円追加、期間9カ月へ延長 2)利下げ時期 :メーンシナリオではないが11年に0.05%下げも 3)利上げ時期 :2013年以降(2012年度以降) 4)10年12月末 :0.10%(同) 5)11年3月末 :0.10%(同) 6)11年6月末 :0.10%(同) 7)11年9月末 :0.10%(同) 8)11年12月末 :0.10%(同) 9)12年3月末 :0.10%(同) 10)12年6月末 :0.10%(同) 11)12年9月末 :0.10%

12)さまざまな先行指標が示唆していた通り、日本の景気サイクルも 7-9月から減速ないし踊り場に入ったことを短観ではほぼ確認した。 しかし業況判断の水準としては大企業製造業の+8という数値は90 年代以降の水準感からするとそれなりの水準であり、本来であればこ の局面で金融緩和を行なっていること自体には違和感もある(8月30 日の臨時会合、介入の非不胎化)。

11年度の見通しを日銀が引き下げる公算は大きく、11年の景気を 見通したプロアクティブな緩和を現在は行っているという名目にはな ろうが、12年度は回復見通しを示す可能性もある。その点では現在の 日銀が為替政策のために実質的に金融政策が固定された80年代の状 況に近づきつつあることを示しているように見える。

13)G3が全て実質的にゼロ金利の世界において、金融政策の効果は 「ゼロ」か「ゼロでないか」という消極的な判断基準でしか測れない。 今後景気が本格的に後退に向かう場面が出てくれば、長期国債買い入 れ増額も効果が「ゼロでない」ということにおいては、日銀内部でも コンセンサスが取れる可能性はあろう。

少なくともFRBを筆頭に海外中銀がそういう判断の下に国債買 い入れ→量的緩和を行い、実質的には通貨安を誘導して景気刺激を行 なおうと意図するのであれば、金融政策に名を借りた通貨切り下げ競 争であり、日銀としてもこの動きを全く無視することはできないかも しれない。

通貨を挟んだ中央銀行間の「仁義なき戦い」である。ただし、10 月までの段階では日銀はそこまでは踏み込まないと予想される。日銀 は今のところ「仁義なき戦い」の受け手の立場であり、最も冷静な立 場の中央銀行であるように見える。