円が介入後の高値更新、米追加緩和観測でドル安圧力-83円台前半

東京外国為替市場では円が対ドル で介入後の高値を更新した。政府・日銀による円売り介入への警戒感 は残っているものの、米国の追加金融緩和観測を背景にドルの先安観 が根強く、円はじりじりと値を切り上げた。

ドル・円相場は一時、1ドル=83円20銭まで円が上昇。顧客に 金融機関が提示する基準レート(仲値)が設定される午前10時に向け ては、国内輸入企業などの円売りの持ち込みがやや多かったもようだ が、円の下値は83円82銭までとなり、仲値通過後は国内輸出企業な どの円買いに押される展開となった。

カナダロイヤル銀行債券為替部の高安佳子部長は「米国の追加金 融緩和期待がさらに強まるのか、後退するのかは今後出てくる米指標 次第だが、今は追加金融緩和観測でドル売りの方が強く、まだドル安・ 円高の方向だ」と指摘。また、「82円台は前回介入したレベルなので、 再び政府・日銀が出てくる可能性はあるが、日本だけが介入してもド ル安の流れに逆らうわけで、その効果には疑問がある」と語った。

ブルームバーグ・データによると、ドルは今四半期(7-9月) に主要16通貨すべてに対して下落。対オーストラリア・ドルでは13% 安、対ユーロでは10%安となっており、対円でも6%値下がりしてい る。

為替介入

政府・日銀は今月15日、円が対ドルで約15年3カ月ぶり高値と なる82円88銭を付けたことを受け、約6年半ぶりとなる円売り介入 を実施。円は一時86円近くまで下落した。しかし、米連邦準備制度理 事会(FRB)が21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明で「追 加金融緩和の用意がある」と表明すると、ドル安の流れが強まり、円 はじりじりと介入後の下げ幅を埋める展開となった。

高安氏は「介入警戒感はあるが、一部には期末を越えればそれほ ど介入しないのではないかとの見方もあるようだ。また、10月4、5 日には日銀会合があるが、量的緩和を増額したとしてもどれだけ円高 阻止に効くか非常に疑問視されるところだ」と話した。

財務省はこの日、日本時間午後7時に9月の外国為替平衡操作の 実施状況を公表する。15日の介入額については当座預金残高の増加に より過去最大規模の1.7兆円から1.8兆円程度だったとの見方が多い。

三菱UFJ信託銀行資金為替部の酒井聡彦グループマネージャー は、期末対策の露骨な円の押し下げ介入はなかったが、ドル売りの流 れは変わらず、「何もなければドル・円はずるずると下がってしまう」 と指摘。その上で、「10月も介入が続くかどうかが注目だが、米下院 で対中制裁法案が可決されているし、11月のG20(20カ国・地域首脳 会議)では日本が微妙な立場に立たされる可能性もある。当局は非常 にかじ取りが難しいだろう」と語った。

ドル安の流れ

米国ではこの日、9月のシカゴ購買部協会製造業景況指数や先週 分の新規失業保険申請件数、4-6月期の国内総生産(GDP)確定 値が発表される。景気減速を示す内容となれば、追加金融緩和観測が 強まり、米金利の低下を通じてドルの下押し圧力が強まる可能性があ る。

また、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が米上 院銀行委員会の公聴会で証言するほか、ワシントンで講演する予定。 追加緩和について踏み込んだ発言が出るかどうかが注目されている。

主要6通貨に対するインターコンチネンタル取引所(ICE)の ドル指数は29日に78.779と、前日の79.014から0.3%低下。一時は

78.616と、1月28日以来の低水準を付ける場面もあった。

ユーロが反落

アイルランド中央銀行は30日、アングロ・アイリッシュ銀行とア ライド・アイリッシュ銀行は最大で144億ユーロ(約1兆6310億円) の追加資本が必要となる公算が大きいと発表した。

一方、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは30 日、スペインの信用格付けを「Aa1」に引き下げた。見通しはステ ーブル(安定的)としている。

ユーロ・円相場は7月29日以来、2カ月ぶりユーロ高値となる1 ユーロ=114円23銭から一時、112円98銭までユーロが下落。また、 ユーロ・円につられる形で、ユーロ・ドル相場も海外時間に付けた約 5カ月半ぶりのユーロ高・ドル安水準(1ユーロ=1.3647ドル)付近 から1.35ドル台後半へ値を戻した。

カナダロイヤル銀の高安氏は、ファンダメンタルズ(経済の基礎 的諸条件)的にユーロを積極的に買える材料はなく、不安材料の方が 多い中でドル安の裏返しでユーロ高が進んできたが、予想以上のユー ロ高でユーロを買い遅れている欧州企業もあるとため、「まだユーロの 押し目買いは強いのではないか」と語った。

一方、三菱UFJ信託銀の酒井氏は「基本的にユーロについては 弱気に見ており、このところのユーロの上昇はやや行き過ぎ感がある」 と指摘。実際、追加金融融緩和の動きもなく、ユーロ高が進む今の状 況は「欧州にとっても好ましくないはず」で、10月以降は欧州に対す る警戒感が強まる可能性があるとの見方を示した。