8月鉱工業生産は予想外の3カ月連続低下、判断を下方修正

8月の日本の鉱工業生産指数は、 予想に反して3カ月連続のマイナスになった。先行きも2カ月連続で マイナスが見込まれることを受け、経済産業省は生産の判断を約1年 半ぶりに下方修正した。9月上旬にエコカー購入補助金の申請受け付 けが終了したことに伴う自動車各社の減産に加え、円高や海外経済の 減速により、生産に一段と下押し圧力がかかる恐れがある。

経済産業省が30日発表した鉱工業指数速報(季節調整済み、2005 年=100)によると、生産指数は前月比0.3%低下の94.5。3カ月連続 の低下はリーマン・ショック後の08年10月から09年2月までの5カ 月連続以来。同指数は依然リーマン・ショック前の水準(08年8月は

103.5)を下回っている。前年同月比は15.4%の上昇。ブルームバー グのエコノミスト調査の予想中央値は前月比1.1%上昇、前年同月比

16.9%上昇だった。前月比予想の幅は0.5%上昇から1.7%上昇だった。

経済産業省は8月の生産の基調について「横ばい傾向となってお り、先行きについては弱含んでいる」とし、前月の「持ち直しの動き で推移しているものの、足踏みの動きもみられる」から判断を下方修 正した。下方修正は09年3月以来。

マネックス証券の村上尚己チーフエコノミストは統計発表後、8 月の生産下振れは、鉄鋼など増産が計画されていた業種の生産が伸び なかったことを指摘。「足元の下振れよりもネガティブなことは、先 行き9、10月の生産計画が下振れていることである」と述べ、「5月 をピークに生産指数が調整局面入りしたことはほぼ確実になった」と の見方を示した。

低下業種は5業種

8月の生産で低下した業種は5業種、上昇した業種は10業種、1 業種が横ばいだった。低下した業種の中では、一般機械で特に石油精 製用に使う反応用機器が7月に大幅に増加した反動を受け、8月に前 月比92.5%減となったことが響いた。また、中国、ASEAN(東南 アジア諸国)向け輸出の伸び悩みなどを背景に鉄鋼製品の生産も減少 した。一方、猛暑の効果でエアコンの生産は同37%増加した。

日本銀行が29日発表した企業短期経済観測調査(短観、9月調査) によると、大企業の景況感は6期連続で改善したものの、先行きはマ イナスが見込まれるなど不透明感が増している。海江田万里経済財政 担当相は27日、報道各社との会見で、景気は「踊り場入りしている」 との認識を示した。経財相は7-9月期について「酷暑の効果」で比 較的堅調だったものの「問題はその先だ」と述べ、10-12月期の動向 に懸念を示した。

予測指数、9月は0.1%低下、10月は2.9%低下

鉱工業生産の8月の出荷指数は前月比0.5%低下し、在庫指数は 同0.7%上昇した。先行きの生産動向をみる上で重要な製造工業生産 予測指数は9月に前月比0.1%低下、10月に同2.9%低下が見込まれ ている。同省調査統計部の杉浦好之経済解析室長は9月の予測がその まま実現した場合、7-9月期は前期比1.1%減と6四半期ぶりにマ イナスになるとの試算を示した。

9月は輸送機械工業やその他工業、10月は輸送機械工業、情報通 信機械工業などでそれぞれ減産が見込まれる。日産自動車のカルロ ス・ゴーン最高経営責任者(CEO)は7月28日のインタビューで、 10月から11月の国内生産台数について、エコカー補助金終了と円高 を受け、9月に比べ2割程度減るとの見通しを示していた。

踊り場入りの可能性

明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは生産の結果を 受け、「大方の予想よりも早く、既に7-9月期に日本経済が踊り場入 りしている可能性を示す結果」と指摘。「中国経済が予想以上に底堅い 推移をたどっていることを考えれば、景気後退に陥る可能性は依然低 い」とする一方、この結果を受け「日銀が次回4、5日の金融政策決 定会合で、なんらかの追加対策を打ち出す可能性はさらに高まった」 との見方を示した。

農林中金総合研究所の南武志主任研究員は発表後、予想外の生産 低下について「日本銀行などが指摘するように『季節指数のゆがみ』 によって、実勢よりも低めに出ている可能性は否定できない」と指摘。 ただ、「生産波及効果の大きな自動車など輸送機械工業の減産強化や、 ハイテク財の生産調整に加え、急速に高まったチャイナ・リスクなど が、想定した以上に年度下期の景気回復テンポを鈍化させる懸念が出 てきたといわざるを得ない」との見方を示した。

国内要因で生産の反動減の懸念があるほか、生産と関連が深い輸 出の動向も不安材料だ。8月の貿易統計速報を基に、内閣府が独自に 試算した輸出数量指数によると、8月の同指数は前月比5.4%減とな った。減少幅は2009年1月の同17.0%減以来の大きさとなった。特 に米国向け輸出数量が同6.7%減と大幅に落ち込んだ。

--取材協力Minh Bui Theresa Barraclough Editor:Hitoshi Ozawa, Norihiko Kosaka

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