日銀は新型オペ拡充か、効果は期待薄-円高止まらずもう一段の緩和も

日本銀行の企業短期経済観測調査 (短観)で企業の業況感が先行き大幅に悪化したことを受けて、日銀 が4、5の両日開く金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るとの見方 が強まっている。従来のような新型オペ(固定金利方式の共通担保オ ペ)の拡大にとどまれば、為替相場や景気への効果は限定的で、日銀 は遠からずもう一段の金融緩和に追い込まれる可能性もある。

29日発表された短観は、企業収益の改善を受けて大企業・製造業 の業況判断指数(DI)がプラス8と前回調査から7ポイント改善し たが、海外経済の減速懸念や円高の影響から、先行きの見通しはリー マン・ブラザーズ破たん後の2008年12月調査以来の悪化に転じた。

日銀は先月30日に臨時の決定会合を開き、新型オペの6カ月物 10兆円を新たに追加。3カ月物と合わせて資金供給額を30兆円に拡 大する追加緩和を実施した。日銀が追加緩和に踏み切る場合、新型オ ペによる資金供給をさらに拡大する措置が有力とみられるが、ドイツ 証券の安達誠司シニアエコノミストは「これまでの緩和策の延長線上 の政策発動では、円高抑制の効果は限定的だろう」とみる。

白川方明総裁は27日、大阪市で会見し、「8月の米国のデータは 個人消費、住宅、雇用も非常に弱い材料が相次ぎ、市場における見方 がかなり悲観方向に振れたという感じがする。9月に入ってそうした 極端な悲観論が少し後退したなという感じはする。いずれにせよ、こ の1カ月間で出たデータをしっかり点検していきたい」と述べた。

強まる追加緩和観測

短観では足元の業況感の改善とともに、10年度の売上・収益計画 も上方修正された。しかし、JPモルガン証券の菅野雅明調査部長は 「現状の為替レートを前提とする限り、12月短観では下期の売上・収 益計画が下方修正される可能性が高い」と指摘。先行きの業況感が大 きく悪化したことが日銀の追加緩和に「サポート要因」となり、次回 決定会合で「金融緩和措置が決定される可能性が高まった」とみる。

三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニアエコノミストは 「先般実施された為替レートの単独介入の効果は大方の予想通り早く も賞味期限切れとなっており、円相場は再び84円を割り込んでいる。 このような状況に照らすと、次回決定会合では固定金利オペの増額を 軸とした追加金融緩和が決定される可能性が高い」と予想する。

ただ、追加緩和が市場の予想通り新型オペの3カ月物や6カ月物 の資金供給額の拡大にとどまれば、為替相場や景気に与える影響は限 定的との見方が圧倒的に多い。東海東京証券の佐野一彦チーフストラ テジストは「現在の枠組みでは、為替介入も利用して市場に潤沢な資 金供給を行っても、その効果はないに等しい」と指摘する。

効果は期待薄

日銀は昨年12月1日に臨時の決定会合を開いて新型オペを導入 したが、銀行・信金計の総貸出平均残高は昨年12月から今年8月まで 9カ月連続で減少している。昨年12月に新型オペを導入した際と今年 3月17日に新型オペを10兆円から20兆円に拡大した際は、一時的と はいえ円安、株高が進んだが、先月30日の臨時会合で新型オペのさら なる拡充に踏み切った際は、為替、株式市場ともにほぼ黙殺された。

市場金利も既にかなりの低水準に低下しており、2年国債利回り は0.10%台前半、5年国債利回りは0.20%台、10年物国債利回りは 1%を割り込んでいる。菅野氏は「長短期金利の低下余地は限定的だ。 仮に長期金利をさらに低下させたとしても、実体経済に与える影響は わずかだ」と指摘する。

シティグループ証券の道家映二チーフJGBストラテジストは次 回会合で追加緩和が新型オペ拡大にとどまれば、「早ければ11月3日 の米連邦公開市場委員会(FOMC)で新たな金融緩和策を打ち出す とみられ、政治サイドの要求を満たすには不十分だろう。日銀は年内 にあと1、2回さらなる金融緩和に追い込まれるだろう」とみる。

終わりなきゲームに

武藤氏は「11月のFOMCで例えば国債の買い増しなど何らかの 緩和策が決定されると、10月に日銀が緩和しても再び円高圧力が増す こととなり、ボールは再び日銀に戻ってきてしまう。それを受けて、 またもや日銀が小出しの追加緩和を検討するといった感じで、『終わ りなきゲーム』にはまり込んでしまっている可能性がある」という。

日銀は介入資金を市場に放置する「介入の非不胎化」を行ってい ると市場ではみられている。武藤氏は「日銀は本来自分たちが意義を 認めていないはずの『非不胎化介入』も、市場の誤解に便乗し、あた かもそういうものがあるかのごとく振る舞うなどして、あの手この手 で市場の期待に応えようとしている。そうであれば、市場の期待に沿 う形での小出しの追加緩和もやめられないことになる」としている。