内閣府水野氏:円高利益享受できる体質に改善を-介入で火消し必要

内閣府の水野和夫大臣官房審議官 は28日、ブルームバーグ・ニュースのインタビューで、為替市場での 円高・ドル安傾向が続く中、短期的には市場介入を通じて日本経済の 「火事」を止める必要があるとする一方、中長期的には円高の利益を 享受できるように体質改善が必要だとの考えを示した。

政府・日銀は15日、6年半ぶりのドル買い・円売り介入を実施し た。水野氏は、介入しないと投機筋が過去最高値の1ドル=79.75円 まで攻めてくるとし、「そうすると日本の虎の子の自動車・家電産業 が、本来なら国内で生産しようと思っていたのを海外に移そうという 行動になる」と指摘。企業が海外にいったん工場を外に移転すると「 なかなか戻らない。そういう意味では足元の火事を消さなければい けない」と述べ、短期的な為替介入の必要性を指摘した。

円相場が1ドル=84-85円で定着した場合について、水野氏は 「為替の評価だけで売上高営業利益率が落ちる。さらに売上高が数量 ベースで減るので、輸出企業にとっては厳しい」と語った。さらに「 問題はその厳しさが長く続くと、国内の工場をやめて、海外に行く行 動に結び付くと雇用にも影響する」と指摘した。

水野氏は、8月の貿易統計を基に内閣府が試算した輸出数量が前 月比5.4%減となり、特に米国向けが同6.7%減と大幅に落ち込んだこ とを挙げ、輸出減少の背景には、円高も影響している可能性があると 語った。三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフエコノミスト を務めていた水野氏は9月8日付で経済財政分析を担当する大臣官房 審議官に就任している。

ドル安放置

一方、円高の原因について水野氏は「アメリカの回復が鈍ってき ている。回復が鈍ってきているのでオバマ大統領は輸出倍増計画を考 えている」とした上で、「当然、米国はドル安、『ビナイン・ネグレ クト(ドル安放置)的』な政策を取ると思う」と指摘。「中期的にド ル安と考えなければいけない。ずっと介入をやり続けるかと言うと、 介入の効果もだんだん薄れてくる」とし、金利も下がって日米の「 金利差がなくなってくる」と説明した。

円高・ドル安傾向については、当面「続くのだろうと思う」とし、 「ドル安になっても米国金利が上がらないだろう」と予測した。その 理由として同氏は、米国では「貯蓄率が上がって国内でファイナンス できるようになりつつある」と指摘。「貯蓄率が上がり、借金が返っ てくるので、米国の金融機関が国債を買い始めている。日本と同じだ 」との見方を示した。

アジア共通通貨構想

水野氏は円高傾向が続くことを前提に「中長期的にはアジアの共 通通貨をつくるようなことをしておけば、資源はドルで安く輸入でき る。強い円・弱いドルは、安い資源と置き換えられる」と述べ、「輸 出先をアジアにシフトして、そこで共通通貨をつくる」構想を示した。

一方、徐々に円高が進行した場合、「企業が現地で作って現地で 売る『地産地消』は相手国からも好まれる」とし、「本籍は日本だが 現住所はアジアという企業が活躍することになるだろう」と語った。 半面、国内では海外から人や企業を呼び込めるかということが課題と した上で、「円高・ドル安が日本の購買力を引き上げて、生活水準を 上げていくような体質に変えていかなければならない」と主張した。

政府は10日に閣議決定した緊急経済対策で、急速な円高の進行 ・長期化に対し、経済・金融への悪影響から「看過できない問題であ り、政府は必要な時には為替介入を含め断固たる措置を取る」と明記 した。同時に「円高のメリットを最大限に活用するという観点も重要 だ」と指摘し、円高は商品・サービスの輸入、資源関連を含め海外の 資産購入やM&A(合併・買収)に有利な条件をもたらすことにも言 及している

水野氏は、1980年に早大大学院を修了し、八千代証券に入社。国 際証券執行役員を経て、2002年に三菱証券理事・チーフエコノミスト に就任。三菱UFJ証券とモルガン・スタンレー証券の合併により、 今年5月から三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフエコノミ ストを務めていた。1953年生まれで56才。

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