白川日銀総裁:必要と判断すれば適時適切に対応したい

日本銀行の白川方明総裁は27日午 後、大阪市内で会見し、「為替市場の動きについては重大な関心を持 ってみている」と述べた上で、金融政策運営の基本的なスタンスにつ いて「日銀自身は潤沢な資金供給を行っていく。そして必要と判断さ れる場合には適時適切に対応したい」との考えをあらためて示した。

先月30日に開いた臨時の金融政策決定会合以降の1カ月間で、欧 米発の下振れリスクはより高まりつつあるのか、という質問に対して は「8月の米国のデータは個人消費、住宅、雇用も非常に弱い材料が 相次いで、市場における見方がかなり悲観方向に振れたという感じが する。9月に入って、そうした極端な悲観論が少し後退したなという 感じはする」と述べた。

その上で「いずれにせよ、この1カ月間で出たデータをしっかり 点検していきたい。今、何か有意にこの1カ月間で変化したという認 識は市場ではないようだが、私どもとしてもそこはしっかり点検して いきたい」と述べた。日銀は来週10月4、5日に決定会合を開く。

日銀は先月30日の臨時の金融政策決定会合で、政策金利(0.1%) で資金を供給する新型オペ(固定金利方式の共通担保資金供給)を20 兆円から30兆円に引き上げ、うち10兆円の供給期間を6カ月とする ことを決めた。白川総裁は臨時会合後の会見で「景気の下振れリスク に対応して前倒しに追加の緩和を行った」と述べた。

中心シナリオ変えるか入念に点検する

27日の講演後の質疑応答では、地元経済関係者の間から、円高を 懸念する声が多く出された。会見で円高による下振れリスクは既に顕 現化しているのではないかとの質問に対し、白川総裁は「われわれと しては下振れリスクの方により注意が必要だと判断している。下振れ リスクがリスクという形にとどまるのか、あるいは中心的な見通し自 体を変えていくのか、そこは入念に点検していきたい」と述べた。

さらに、「円高は企業マインドを通じて経済に対して悪影響を及 ぼしていく。同時に、その出発点である世界経済がどのように展開し ていくのかも大きな要因になる。そうしたことも含めて、来週の決定 会合でしっかり点検していきたい」と述べた。

政府・日銀は15日、円相場が一時1ドル=82円88銭と15年ぶ りの高値を付けたことを受けて、大規模な円売りドル買い介入を実施 した。白川総裁は同日、「日銀としては、強力な金融緩和を推進する 中で、今後とも金融市場に潤沢な資金供給を行っていく方針である」 とする談話を発表した。

金融政策の基本スタンスに変更なし

再び介入が行われた場合も、日銀の姿勢に変わりはないかとの質 問に対して、白川総裁は「将来の為替市場介入という仮定の質問に対 して答えられないが、為替市場の動きについては重大な関心を持って みている。日銀自身は潤沢な資金供給を行っていく。必要と判断され る場合には適時適切に対応したい」と言明。「日銀としての基本的な スタンスに変更はない」と述べた。

宮尾龍蔵審議委員は22日、徳島市内で会見し、長期国債の買い入 れ増額について「恐らく、今議論されている将来の政策の選択肢の一 つかと思われる」と述べた。白川総裁は26日、神戸大学で行った講演 で「中央銀行による国債買い入れが財政ファイナンス、いわゆるマネ タイゼーションを目的としているとみられる場合にも、将来のインフ レ予想から国債金利が上昇する」と述べた。

海江田万里経済財政担当相は27日、報道各社とのインタビューで、 日銀による国債保有額を日銀券発行残高以下に抑える銀行券ルールに ついて「まだ天井まで多少枠があるが、枠があるうちにそういう議論 もしてもよいのではないか」と発言。「検討すると言うと一歩踏み込 んだ発言になるが、検討する前に議論はしておいてもいいのではない かと思っている」と語った。

どういうルールであれ信頼感が大事

白川総裁は「現在から将来にわたりしっかりと金融の調節ができ ることが、中央銀行が通貨の安定を図る上で大事だ。そのためにどの ような運営の仕方がよいのかがすべての議論の出発点になる」と指摘。 「適切に通貨の調節ができなくなった中央銀行は国民からみると非常 に不安になる。どういうルールであれ通貨の調節を適切にできるとい う信頼感を中央銀行として維持していくことが大事だ」と語った。

宮尾委員は22日の会見で、2001年から06年まで行った量的緩和 政策について「効果・副作用はその時々の経済・物価の情勢によって 変わってくるので、量的緩和政策に関する評価についても、かつての 評価と現時点における評価は当然変わり得る」と述べた。

白川総裁はこれまで、量的緩和政策は金融システムの安定には効 果があったものの、経済、物価の刺激効果は限定的だったとの見解を 示していた。こうした見方に変わりはないかを問われ、「当座預金残 高を目標として量を増やしていく政策の効果については、私というよ り、私を含めて、現在の政策委員会メンバーはそのように評価してい る」と述べ、あらためてその効果に懐疑的な見方を示した。

量を増やすことはもちろん可能だが

介入により市場に放出された資金を日銀が吸収せずに放置する 「介入の非不胎化」について、日銀が介入と同時により大規模な資金 供給を行うことで、市場参加者の期待の変化を通じて為替円高を止め る効果があるのではないか、という質問も出された。

白川総裁は「量を増やすことが技術的に可能か、可能でないかと 言われれば、もちろん資金供給オペなどによって量を増やすことはも ちろん可能だ。それが為替市場にどういう影響を及ぼすかという問い だと思うが、いずれにせよ、日銀としては金融市場に潤沢な資金供給 を行っていくという方針に変わりはない」と述べた。