「礼金ゼロ」の裏技で入居者確保、家賃も下落-借り手優位の賃貸事情

世界主要都市で生活費が2番目に高 い東京で、その大部分を占める住宅の「賃貸費用」が安くなっている。 景気低迷が長引く中、かつては家賃に対して強気だった大家が、空き部 屋として放置するよりも、礼金をゼロにするなどして入居者の確保を目 指しているためだ。

東京在住で外資系銀行に勤務するダミエン・カムボン氏(29、仏国 籍)は、東京の賃貸事情の変化に眼を見張った。2年前の入居時には家 賃の約1カ月分を礼金として家主に支払ったが、引越しに向けて今年、 約100件の物件情報を見ると状況は一変。カムボン氏は「礼金ゼロの物 件ばかりだった。うれしい驚きだ」という。

米経営コンサルタント会社、マーサーの調査によると、海外駐在員 にとって世界の都市の生活費で最も高いのはアンゴラのルアンダ。2位 が東京、4位はモスクワで大阪が6位などなっている。「生活費」には 住居費、交通費、など200品目以上の価格が含まれる。

日本の不動産賃貸借には、家賃のほか、借り手が部屋を汚した際な どの損賠賠償の担保として預ける保証金(敷金)と、家主へのお礼(礼 金)をそれぞれ1-2カ月払う慣行がある。カムボン氏の以前の家主は 2年間の契約更新の際、家賃の13%引き下げと1カ月間払うことになっ ていた更新料を不要にすると申し出たという。

都心の家賃はピークから10%下落

日本不動産研究所によれば、港、中央、千代田、渋谷、新宿の都心 5区では40-80平方メートルの新築賃貸マンションの賃料(月額、1 平方メートル当たり)は、10年上期(1-6月)が4165円で98年上期 以来最も安い水準とピークの07年下期から10%下落した。

日本経済は円高や株安で低迷が続いている。物価変動の影響も含め た2010年4-6月期の日本の名目GDPは前期比0.6%減、年率換算で は2.5%減となった。国内企業の利益や労働者の賃金など所得の変化を 示すGDPデフレーターは、前年同期比1.7%低下で引き続きデフレ状 況にあることを示している。

不動産情報サービスのアットホームによると、日本の賃貸住宅に住 む独身男女の月収に占める居住費(家賃)の割合は平均で約35%に達す るという。一方、マーサーの調査では、寝室2部屋の家賃は東京の平均 4436ドルに対し、ロンドンは3906ドル、ニューヨークは4000ドルと日 本の割高さが目立っている。

Jリート、入居者確保を重視

賃貸特化型の日本版不動産投資信託(Jリート)で資産規模2位の ビ・ライフ投資法人の運用会社、大和ハウス・モリモト・アセットマネ ジメントの漆間裕隆・財務企画部長は、「礼金ゼロ化」など賃貸住宅市 場の変化について、リーマンショック後の景気悪化が影響していると指 摘する。

ビ・ライフが運用している都心5区の賃貸マンションの稼働率は、 09年11月期は84.6%とリーマンショック前の08年5月期の95.6%を 依然として下回っている。

日本国内で不動産ファンドを運用しているアトラス・パートナーズ (東京都千代田区)の平井幹久社長は、日本の賃貸住宅市場は借り手優 位の市場だと指摘。大家にとって礼金よりも入居者確保のほうが重要に なっているため、投資家も礼金収入は当てにしていないと語った。

一方で、不動産市場が回復すれば、「礼金市場」は回復するとの見 方もある。Jリートの野村不動産投資信託の緒方敦社長は、新規の住宅 供給が限られているため、2-3年後には再び賃貸住宅市場は回復する と期待する。同氏は需要が供給を上回れば、再び貸し手市場となる可能 性があると語った。