宮尾日銀委員:必要なら適時適切に対応-下振れリスク注意

日本銀行の宮尾龍蔵審議委員は22 日午前、徳島市内で講演し、景気の「下振れリスクにより注意をしな ければならない状況になってきている」と述べ、金融政策運営につい て「必要と判断される場合には適時適切に対応していく」と述べた。

宮尾委員は下振れリスクの主な要因として「米国経済がやや長期 の低成長に陥るリスクが高まっていること」を挙げた。また、為替円 高について「輸出企業を中心に収益の圧迫要因となり、現在も厳しい 経営を余儀なくされている企業も少なくない」と指摘。「こうした状況 は株価にも影響を与えていることから、わが国経済の下振れリスクの 1つとして実体経済への影響を注視している」と述べた。

政府は15日、大規模な円売り介入を実施。これを受けて白川方明 総裁は「今後とも金融市場に潤沢な資金供給を行っていく」とする談 話を公表した。一方、21日開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC) は「必要があれば、追加的な金融緩和を行う用意がある」と表明。米 国が近く追加緩和に踏み切るとの見方が強まっている。

宮尾委員は一方で、円高の影響について「輸入企業にとってみれ ば、円高の進行は収益の押し上げ要因となる」ほか、「海外企業の買収 を通じて事業拡大などを考えている企業にとっては追い風となる」と 指摘。「そうした意味では、バランスよくみることも重要ではないか」 と述べた。

以前に比べ円高の悪影響を受けにくい

バランスの観点から1つの例として、2000年下期と10年上期を 比較。「輸出決済に使用されるドルのウエートは52.4%から48.6%に 小幅低下している一方、輸入決済は70%強でほとんど変化がない」も のの、ドル建て決済の貿易額については「ネット輸入超額が大幅に拡 大している」と指摘。背景として「輸出額の大きい米国との取引が減 少する一方、成長著しいアジアとの取引は輸出入ともに増加、中東地 域等との間では輸入取引が大幅に増加している」ことを挙げた。

宮尾委員はその上で「このようにドル建て輸入超額が拡大してい ることにより、以前と比べると円高によるマイナスの影響を受けにく い決済・貿易構造になってきている可能性がある」と語った。

景気の現状については「緩やかに回復しつつある」と指摘。円高、 株安が継続すれば「企業収益やマインド面に与える影響が小さくない 」ため、「その影響が懸念される」としながらも、「現時点では自律 的回復のメカニズムは途切れていないものと判断される」と述べた。

米国経済の低成長が現実化すれば

先行きについては「海外経済の一時的な減速と、国内の需要刺激 策の効果の減衰などから一時的に改善の動きが弱まるものの、その後 は、中国をはじめとする新興国経済の高成長を背景とした輸出の拡大、 および企業収益の改善を起点とした設備投資や個人消費の回復などを 通じて自律的な回復過程を進んでいくものと思われる」と語った。

ただ、リスクとして挙げた「米国経済の低成長」が現実化すれば 「世界経済全体の見通しが下振れし、それが輸出の減少などの形でわ が国経済にも波及してくる」と指摘。こうした動きの中ではリスク回 避志向が高まりやすくなり、「企業の設備投資や新規事業に対する意 欲、家計の消費意欲が抑制されるという、いわゆるマインドの悪化が 起こり、経済の停滞が続くという状況に陥る可能性がある」と述べた。