ラニーニャで厳冬か、「2匹目のどじょう」期待の石油・電力

ラニーニャ現象で猛暑から厳冬か- -。観測史上で最も暑い夏をもたらした一因とされるラニーニャ現象で 冬の気温が例年より低くなる可能性が浮上している。猛暑で特需を享受 した石油、電力各社は厳冬で燃料費需要の増加という「2匹目のどじょ う」を狙えるか、早くも冬の天候に期待が高まっている。

北海道大学の山崎孝治教授(地球圏科学専攻)は「ラニーニャにな ると、冬にシベリアの寒気が入り込みやすくなる傾向がある。5月ごろ に始まったラニーニャは、今年の11月か12月にかけて強さがピークを 迎えるだろう」と予測した。

東京大学の中村尚准教授(地球惑星科学専攻)も「ラニーニャは日 本に寒い冬をもたらす傾向にある」と同意見だ。「エルニーニョやラニ ーニャといった海洋の現象が気象に与える影響は大きく、最大の要因と も言える」と話した。

ラニーニャで太平洋西部熱帯域の海面の水温が上がると、日本の南 の海上の大気の対流活動が活発になる。それによって、西高東低の冬型 の気圧配置が強まると気温が低くなる。

気象庁地球環境海洋部の吉川郁夫予報官によると、2005年秋から06 年春まで続いたラニーニャ現象では12月に日本海側を中心に記録的な 大雪となり、9地点で積雪量の最高記録を更新した。全国の平均気温も 20年ぶりの低気温となった。

今夏(6-8月)の平均気温は1898年の観測開始以来で最も高くな った。気象庁はウェブサイトで、一因として太平洋赤道域の西部で海面 水温が上昇するラニーニャ現象が発生し、北半球の中緯度地域の気温が 「非常に高くなった可能性がある」との見方を示している。偏西風が例 年より大きく蛇行し、本州付近で温かい高気圧が形成された「蛇行偏西 風」の影響を挙げる見方も多い。

猛暑で特需

観測史上で最も暑い夏は「猛暑特需」をもたらした。電気事業連合 会は10日、電力10社の7-8月の発受電電力量が過去最高(1863億9500 万キロワット時)を記録したと発表。10社が8月に火力発電所で消費し た原油の量は前年同月比2.7倍、重油の消費量は同74%増となった。

JXホールディングス傘下の国内石油元売り最大手JX日鉱日石エ ネルギーは8月の電力会社向けの重油の販売量が前年同月比47%増に なった見込みと発表した。08年7月以降、前年割れが続いていたため、 猛暑が「干天の慈雨」となった形だ。

猛暑に続き厳冬という「2匹目のどじょう」は期待できるか、石油 やガス、電力各社の皮算用が活発になりそうだ。ドイツ証券の直原知弘 アナリストは「寒波は、ガス会社の株価を後押しする要素のひとつ。さ らに、冷暖房にエアコンが利用されていることも多く、電力会社も寒波 の恩恵を受ける」と指摘。

上方修正含みの純利益

厳冬になると、収益に大きな影響が出そうだ。同氏は円高で原料調 達コストが下がっていることから東京電力などの今期(2011年3月期) の業績予想は上方修正含みだとみている。東電は7月30日に100億円だ った今期の純利益予想を650億円に増額している。ブルームバーグが試 算したアナリスト予想の中央値は1125億円で、天候要因がもくろみ通り に動けばアナリスト予想に近づく可能性も高くなる。

東電が同日に公表した予想の前提条件の原油輸入価格と為替レート の見通しは、1バレル=77ドルと1ドル=90円。これは1キロリットル =4万3583円に相当する。財務省の貿易統計によると、直近(8月1- 20日)の原油の輸入単価は同4万634円と、同社の予想水準を下回って いる。同社の試算によると、首都圏で冬期に気温が1度下がった場合、 電力需要は約14万世帯分相当の60万-70万キロワット増加するという。

直原氏は内需関連株としての電力・ガス株について、「円高で輸出 企業が打撃を受けて日経平均株価が伸び悩むなか、電力を中心にエネル ギー関連企業の株価は上昇する余地がある」との見方を示した。

三菱UFJ投信戦略運用部の石金淳シニアストラテジストは「電 力株は、株価の変動が少なく配当も良いことから、相場環境が良くない 時の避難先になっている」と指摘。そのうえで「日本株全体の市場環境 が振るわないことに加え、円高が進むリスクもあるという状況下で、ラ ニーニャの影響を踏まえて、ディフェンシブ銘柄を一定レベル組み入れ るということは当然考えられることだ」と話した。

しかし、天候の長期予測は難しく、電力・ガス各社の期待が「捕ら ぬたぬきの皮算用」になる可能性も否定できない。北大の山崎教授は 「1カ月以上先の大気の状態はカオス。1カ月程度までの予報しかでき ないのが現状」と明かす。東大の中村准教授も、ラニーニャのような海 洋現象だけでなく「成層圏や対流圏を流れる風の向きなど、多くの要素 が複雑にからみ合っている」とし、期待が空振りになる可能性に触れ た。

猛暑に振り回された内需関連各社にとっては秋の気配が強まる中で 「冬の空模様」が吉と出るか、凶と出るか、やきもき空を見上げる日々 が続きそうだ。

JX株が上昇

17日のJXホールディングスの株価は一時、前日比3.3%高となり TOPIX石油・石炭製品指数の中で最も大きな上昇率を示した。一方 で同株に影響を与えることが多い原油先物相場は軟調だった。16日のニ ューヨーク原油先物相場は大幅続落したほか、時間外取引でも1週間ぶ りの安値圏で推移した。

--取材協力:山崎朝子 Editor:Takeshi Awaji, Hitoshi Ozawa,

KenzoTaniai, Fukashi Maruta

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