菅首相の鼎の軽重、ミッテラン流変質がカギ握る-武者リサーチ代表

「菅政権の『鼎(かなえ)の軽重』 は、このひょう変をものとするか否かにかかっている」――。独立系調 査会社の武者リサーチの武者陵司代表が、人の能力や力量を疑う中国・ 春秋時代の故事をなぞり、民主党代表の続投が決まった菅直人首相に与 えた注文は、社会主義的政策からの転換を図り、政権浮揚につなげたか つてのミッテラン仏大統領の姿だ。

武者氏は民主党代表選の結果を受けた14日夜の投資家向けリポー トで、菅首相再選について「鳩山政権時代の迷走、菅後継暫定政権の政 策不能化が終えんし、ようやく国民待望の長期政権が誕生する。この一 事だけで、株式市場と経済には大きなプラス」との認識を示した。さら に、マニフェスト(政権公約)順守を主張した小沢一郎前幹事長の敗北 は、「民主党の変質が急速に進む」ことを表していると言う。

同氏によると、米国との同盟関係軽視、アンチビジネス、アンチ自 由主義、アンチグローバリゼーション、成長戦略軽視、弱者救済など分 配への偏り、財源無視のばらまきと大きな政府など、「従来の民主党政 策は1955年体制当時の社会党さながらの社会主義的・理想主義的傾向 を持っており、経済と日本の競争力を大きく損なうもの」だった。

しかし、菅政権が現実的柔軟路線に転換している上、衆参両院のね じれ現象の結果、「実現する政策は従来の民主党党是とは全く逆の日米 関係重視、プロビジネス、成長重視とならざるを得ないが、それは日本 経済と市場にとって望ましい」と武者氏は指摘する。

1981年に誕生したミッテラン仏社会党政権は当初、産業国有化、 富裕者や企業層への課税強化、低所得者層への所得補てんなど反市場的 政策を次々打ち出したが、景気の失速とインフレを招いたことで自由主 義的政策に転向。減税や社会保障の削減などを進め経済回復を実現し、 さらに首相に保守系のシラク氏を起用、保革連合体制を築いた。

ブルームバーグ・データでフランスの80年代の国内総生産(GD P)成長率推移を見ると、80-84年の平均プラス1.5%に対し、後半の 85-89年はプラス3.3%と伸びが拡大した。「今日の日本は当時のフラ ンスに酷似しており、菅首相の手腕次第でミッテラン改革の成功体験を 踏襲することが可能」と、武者氏は見ている。

同氏は「目先の経済対策は緊要だが、より重要なのは新たな地政学 レジームの構築」だとレポートを総括。東アジアの安定化には、中国の 隣国である日本のプレゼンスの高まりが求められ、「日本経済の浮上が 覇権国米国にとっても緊要となってくる場面」で、そうなることが「ペ ナルティーとしての異常な円高が再現する可能性を一段と低くする」と 述べている。