【コラム】先進国は効果なき経済政策を直ちに改めよ-M・エラリアン

10月にワシントンで開催される国 際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会を前に、数多くの議題が用 意されつつある。その分、総会は失望を招く大きなリスクを抱える。 世界の人々の生活に徐々に悪影響を及ぼす恐れもある。

このリスクは最小限にすることが可能だ。また、そうしなければ ならない。そのためには、複雑な方向に傾きがちな議題設定を、絞り 込んだ単純なものへと早急に変える必要がある。これは議題を次の一 点に絞ることによって達成できる。

なぜ先進国の経済政策は、いら立たしいほど効果がないのか、と いう点だ。

期待をはるかに下回る結果しか残せなかった政策は枚挙にいとま がない。米国だけをみてもそうだ。未曽有の財政刺激策や非伝統的な 金融政策を長期にわたって実施しても、失業率は高止まりしている。 個人が株式を売り現金や債券を選ぶ中で、家計は高リスク投資を減ら している。大企業や銀行は膨大な現金をため込んでいる。

欧州では、劇的な政治行動をもってしてもギリシャやアイルラン ド、ポルトガル、スペインといった国々の債務返済リスクへの懸念を 鎮めることができなかった。大きな期待を集めた域内銀行に対するス トレステスト(健全性審査)や、かつては考えられなかった欧州中央 銀行(ECB)による支援、IMFなどからの例外的な資金支援があ っても、こうした国々の信用リスクは数カ月前よりも高まっている。

政策効果が乏しいことの弊害

国際的なレベルでも、状況は芳しくない。貿易と通貨における世 界的な不均衡はまたもや拡大している。IMF自体が、その統治能力 などの欠如が障害になっており、その解決にはあまりにも長い時間が かかる。

政策効果が上がらないことは極めて大きな問題だ。この状態が長 引けば長引くほど、先進国経済を持続的な高成長と雇用創出の循環に 回復させることが一段と困難になる。人材やアイデア、設備投資も減 少してしまう。

世界はまた、保護貿易主義の台頭という大きなリスクに直面して いる。各国・地域政府が、経済的に望ましいことと政治的に実行可能 なこととのバランスを取ろうとしていることが背景にある。

金融危機直後の総会

わたしは、先進国の経済政策の効果が乏しいことに焦点を絞って 討議すれば、次の重要な3点が急進展すると考えている。

第1は、先進国が直面している問題の複雑さへの理解だ。これは 需要だけでなく、構造と過剰債務に関する問題と言える。社会の最も 脆弱(ぜいじゃく)な部分を保護する一方で、政策に対する景気の感 応度を改善するための構造改革が緊急に必要だ。

第2は、その場しのぎ、断片的、反応型の政策形成からの脱却だ。 適切な政策パッケージは、世界の政策当局者が政治的な主導権を取り 戻すことに寄与する。

第3は、大部分の人が現実的と思える複数年にまたがる経済的な 展望がより明確になることだ。

当局者は国民からより強い賛同を得る必要がある。世論調査によ ると、多くの国民は今、当局者の真剣さと能力に疑問を抱いている。 IMF・世銀総会では、食い違いがはっきりとしている各国の考えを 調整することが可能だろう。議題を明確にすれば、先進国は世界経済 の見通しを改善する上で新興国に協力を求めることも容易になる。

単一の共通議題に絞り込んだときにどれほどの力が発揮されるか は、2008年10月のIMF・世銀総会、その半年後にロンドンで開か れた20カ国・地域(G20)首脳会議を思い出せば分かる。これらの会 議の議題は、世界的な金融危機にどのような緊急対応で協調するかだ けだった。

ワシントンでのIMF・世銀総会には、各国・地域の代表約190 人が集う。この総会が無為に終われば悲劇だろう。先進国経済が二番 底に陥り、デフレの罠(わな)にはまるのを待っていてはいけない。

(モハメド・エラリアン氏は米パシフィック・インベストメント・ マネジメント=PIMCO=の最高経営責任者です。このコラムの内 容は、同氏自身の見解です)

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