日本政府、6年半ぶり円売りドル買い介入-15年ぶり円高で

政府と日本銀行は15日午前、15 年ぶりの円高を受け、円売り・ドル買い介入に踏み切った。為替市場 でドル売りが進み、一時1ドル=82円88銭と1995年5月以来の円高 値を付けたことから、輸出企業を中心に企業収益を圧迫し、持ち直し つつある日本経済に深刻な打撃を与えかねないと判断した。市場介入 は2004年3月16日以来、6年半ぶり。

野田佳彦財務相は同日午前、財務省内で緊急会見し、「為替相場の 過度な変動を抑制するため、為替介入を実施した」と述べるとともに、 「わが国の経済はデフレが進行し、依然として厳しい経済情勢にある 中で、このような足元の動きは経済、金融の安定に悪影響を及ぼし、 看過できない問題だ」と、介入に踏み切った理由を説明した。介入は 日本単独で実施した。

財務相によると、午前10時35分には為替介入した。介入の規模 は明らかにしなかった。政府関係者は同日午後、「相当の規模はしてい る」との認識を示した。介入を受けた円の対ドル相場は急落し、同日 午後零時24分現在は1ドル=84円85銭を付けた。欧州時間に入って さらに円安が進み、85円台を中心に推移している。

政府・日銀は03年度には、最大となる32.9兆円規模の円売り・ ドル買い介入を実施した。1日の規模では04年1月9日の1兆6664 億円が最大。

米国などと事前にやり取り

野田財務相は「引き続き、為替市場の動向を注意しながら必要な 時には介入も含めて断固たる措置を取っていきたい」と言明。菅直人 首相には、同日午前に介入の実施を事前報告したという。また、「必要 な関係各国との緊密な連携は取っている」と述べ、為替介入実施に向 けて米国など関係各国とやり取りしたことを明らかにした。

政府関係者は15日夜、為替介入は「東京だけでやっているもので はない」と述べ、欧州市場でも断続的に介入していることを明らかに した。また、必要があれば米国市場でも介入する可能性を示唆した。

財務相は14日午前の閣議後会見でも、為替相場が一時1ドル=83 円前半と高値水準で推移していたことを受けて「必要な時には為替介 入を含む断固たる措置を取る」との姿勢を示していた。

為替市場では、前日行われた民主党代表選で、為替介入により積 極的と目されていた小沢一郎前幹事長が、現職の菅首相に敗北したこ とを受けて円高がさらに加速、同日の海外市場で一時、同82円台に突 入していた。

明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは「菅首相が再 選されたことで、市場介入の可能性がやや遠のいたとの安心感が市場 に広がりかけていた矢先の行動であり、市場には一定のサプライズを 与える効果はあった」とコメントした。

投機筋の動きを警戒

政府関係者は同日、介入のタイミングについて「民主党代表選と は関係ない」とした上で、「83-84円で高止まりしていたところに1 ドル=82円台に突入したことがきっかけだった」ことを明らかにした。 仙谷由人官房長官は15日午前の定例会見で、1ドル=82円が防衛ラ インかとの質問に対し、「財務相のところでそのようにお考えになった のではないかと思う」と語った。

財務省が警戒していたのは菅首相の為替介入への姿勢を試すかの ような投機筋の動きだった。1ドル=80円台の突破が介入に踏み出す 引き金になるとみていた市場に対し、「想定外」の水準ですきをついた 格好だ。

民主党の大久保勉参院財政金融委員会筆頭理事は15日、ブルーム バーグ・ニュースのインタビューで、菅首相の代表再選直後の円高進 行について「投機筋が仕掛けた。それに対してけん制し、しっかりと 対処した」と分析した。

日銀総裁談話

政府・日銀はこれまで、足元の円高が欧州経済の先行き不透明感 や米国景気の回復の遅れなど主に海外要因にあると指摘してきた。さ らに、米連邦準備制度理事会(FRB)による追加資産購入の観測を 背景に、「出口戦略」の後退から低金利が続くとの見方が多く、円にシ フトしていた資金の流れを日本単独の為替介入で阻止できるかどうか は不透明な情勢だ。

一方、日銀の白川方明総裁は15日午前、為替介入を受け、「為替 相場の安定的な形成に寄与することを強く期待する」との談話を発表、 「強力な金融緩和を推進する中で、今後とも金融市場に潤沢な資金供 給を行っていく」との方針を示した。「為替介入」という伝家の宝刀を 抜いた政府は、いったん介入資金を市場に放置する「非不胎化」の実 施も念頭に、日銀の次なる一手を期待している。

--共同取材 広川高史、伊藤辰雄, Editor:Norihiko Kosaka, Hitoshi Ozawa

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