再選の菅氏、党分裂の火種抱え予算成立に困難も-足元は景気対策急務

民主党代表選挙を大差で乗り切っ た菅直人首相。年末に向け予算編成や税制改革の大仕事を控えるが、 対立候補だった財政積極論者の小沢一郎前党幹事長の動き次第では党 が二分されて財政健全化路線が立ち往生、予算関連法案の早期成立も 危ぶまれる事態が予想される。足元では、円高進行や海外経済の停滞 などから「二番底」懸念も出ている景気への対応が急務だ。

「菅首相の勝利が日本の格付けにとって必ずしも良くない」-。 スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の小川隆平ディレクター (シンガポール在勤)は14日、ブルームバーグ・ニュースのインタビ ューに対し、党分裂の可能性などを指摘し、政策決定が困難になると の見方を示した。

小川氏は代表選前の今月8日、注目点として「民主党がどの程度、 一体になって政策立案し、実施することができるかだ。どの候補が勝 っても党に亀裂が入る可能性が高い」と指摘。参院で野党議員数が与 党を上回る「ねじれ国会」下で「党内の対立が大きくなれば、消費税 増税などの思い切った中長期的な政策実現が難しくなる」とし、代表 選後の国会運営が政権の足を引っ張る可能性を指摘した。

民主・国民新の連立与党の足元はぐらついている。今年5月には 社民党が連立から離脱し、衆議院の3分の2以上の多数による再議決 が難しくなった。7月の参院選大敗で、参議院では与野党が逆転。参 院で否決された法案は、衆院の優越が認められた予算案を除いて成立 が困難となる事態に陥っていた。さらに、党内での意見統一が簡単で ないとなれば、混乱に拍車がかかる。

財政政策が難所に

年末に向け本格化する2011年度予算案の編成作業も困難が予想 される。国債発行の抑制や消費税増税を掲げ、財源難から昨年の衆院 選時のマニフェスト(政権公約)の大幅に見直しを訴えた菅首相。一方、 小沢氏は子ども手当の満額支給などのマニフェスト実行を主張。経済 対策では国債増発の必要性も示唆するなど、対照的な財政方針を示し ていた。

代表選の国会議員票は、菅氏206票、小沢氏200票とほぼ拮抗(き っこう)した。菅首相が小沢氏の考えをどの程度、政策に反映させる かが今後の政権運営の焦点となる。菅首相は14日夕の代表選後の記者 会見で、挙党態勢に向けた党三役人事や内閣改造について「現時点で は全く白紙。明日、主だった人と会い、いろいろと意見を聞いた上で 考えたい」と述べるにとどめた。

フィッチ・レーティングスのアジア太平洋ソブリン債担当の責任 者、アンドルー・コルクホーン氏(香港在勤)は14日、ブルームバー グ・ニュースに対し、「政府の財政政策上の戦略が鍵になる」と指摘。 民主党内に対立が生じ、政治的不安定性が増せば、そうした説得力の ある政策が策定される可能性を小さくし、ネガティブな材料となり得 るとの見方を示した。

野党との連携も課題

与党内だけでなく、野党との連携模索も課題だ。共同通信は10 日、自民党の石原伸晃幹事長が「政策的には菅さんと近い」と述べ、 菅首相が再選された場合、財政健全化に向けた認識が一致すれば連携 の可能性があるとの認識を示したと報じた。税政策を担当する財務省 内では、参院選で民主党と同様に消費税率引き上げを掲げた自民党と の連携を望む声も強い。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは14日、ブ ルームバーグ・ニュースのインタビューで「国会対応は困難を極める と見ている。どういう形で法案を通せる形にするのか難しい課題。年 度末危機説も流れており、菅政権が行き詰まるリスクもある」と指摘。 「部分連合を組むのか、新連立を模索するのか、野党との連携が課題 となるだろう」との見方を示した。

国内景気に不透明感

輸出で持ち直しつつある国内経済だが、海外経済の変調から先行 きに不透明感が漂う。10日に発表された今年4-6月期の実質国内総 生産(GDP)2次速報は前期比年率1.5%増に上方修正されたが、 前2四半期から伸び率は鈍化、年末に向けて踊り場入りする可能性が 指摘されている。

歯止めのかからぬ円高も輸出企業には打撃だ。代表選のあった14 日の東京外国為替市場では、円相場は一時、1ドル=83円9銭まで上 昇。1995年5月以来の円高値を塗り替えた。

クレディ・スイス証券の市川眞一チーフ・マーケット・ストラテ ジストは、代表選挙で菅氏が再選されたことについて「市場内では小 沢前幹事長による財政拡大期待が強まっていただけに、目先株価が調 整色を払しょくできない可能性は否定できない」との見方を示した。

--共同取材: 氏兼敬子、広川高史、院去信太郎、池田祐美Editor: Norihiko Kosaka, Hitoshi Ozawa

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